2014 Fiscal Year Annual Research Report
多機能なコヒーレントナイキストパルスの提案とそれを用いた超高速・高効率光伝送技術
Project/Area Number |
26000009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中沢 正隆 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80333889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣岡 俊彦 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (40344733)
吉田 真人 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10333890)
葛西 恵介 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (80534495)
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Project Period (FY) |
2014-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 高速光伝送 / ナイキストパルス / ディジタルコヒーレント / 周波数利用効率 / 光時分割多重 / パルス整形 / 超短光パルス / QAM |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はナイキストTDM(時分割多重)伝送の基本性能を明確にするために、(1)ノンコヒーレントナイキストパルスによる超高速・長距離伝送技術、(2)コヒーレントナイキストパルスの直交性を用いた簡便且つ高性能な多重分離技術、ならびに(3)SN比の高いナイキストパルスを発生するためのパルス光源(ナイキストレーザ)の開発に取り組んだ。 (1)に関しては、ノンコヒーレントな光ナイキストパルスを用いて伝送速度2.56 Tbit/s/chの信号を従来のガウス型パルスより狭い帯域で生成し、超高速伝送において問題となっている波長分散・偏波分散への耐力が著しく向上することを明らかにした。特に、高次の偏波分散に起因する偏波チャネル間のクロストークが大幅に低減できることを実証し、従来方式では300kmが限界であった伝送距離を525kmまで拡大することに成功した。 (2)に関しては、ナイキストパルスを伝送用信号ばかりでなく局発光にも用いることにより、TDM信号の多重分離とホモダイン検波を同時に実現する新たな手法を提案した。本手法はコヒーレントナイキストパルスが有する時間領域での直交性を利用しており、隣接パルス間の強い符号間干渉にもかかわらず、高いSN比で多重分離を実現できる特徴がある。64 QAMナイキストTDM信号の多重分離に本手法を適用した結果、従来の超高速光サンプリング法と比べ多重分離性能が4 dB近く向上することを明らかにした。さらに、本手法を利用して1.92 Tbit/s, 64 QAMコヒーレントナイキストパルスを150km伝送し、1Tbit/sを上回る伝送速度でありながらその周波数利用効率を10.6 bit/s/Hzまで引き上げることに世界で初めて成功した。 (3)に関しては、モード同期レーザの共振器内にスペクトル可変光フィルタを設け、そのスペクトル形状を制御することにより光ナイキストパルスを直接出力できる「ナイキストレーザ」を新たに提案した。本レーザを用いて、従来のようにレーザ外部で波形整形用光フィルタを用いる方法と比べS/Nが10dB高く、光信号のS/N低下を生じることなく高品質なナイキストパルスを生成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はナイキストTDM伝送システムを構成する送信部、受信部を中心とした要素技術の構築を目標とし、前者に関してはナイキストレーザ、後者に関してはナイキスト局発光パルスを用いて多重分離とコヒーレント検波を同時に実現する復調回路を実現した。特にナイキスト局発パルスを用いた多重分離技術については、我々が既に提案していた超高速光サンプリング法よりも構成が簡便であるだけでなく、復調後のSN比が4 dB近く改善されることが実証され、ナイキストTDM伝送を著しく高度化できることが明らかとなった。それらの知見に基づき、当初の計画よりも早くコヒーレントナイキストパルスの伝送実験を行い、単一チャネル1.92 Tbit/sの伝送速度で10.6 bit/s/Hzという極めて高い周波数利用効率を達成している。これは世界で初めてのデータである。 またノンコヒーレントなナイキストパルスにおいてもその狭い伝送帯域を活かし、単一チャネル2.56 Tbit/sの伝送速度で従来は難しかった500 km以上への伝送距離の拡大に成功している。初年度の時点でナイキストパルス伝送の有用性が数々の実験を通じて明らかにされており、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ナイキストパルス発生技術に関しては、今後ナイキストレーザの高出力化や周波数の安定化を中心に引き続き性能向上を図り、コヒーレントナイキストパルス光源としての完成度を高めていく。ナイキストパルス伝送に関しては、シンボルレートの高速化(ノンコヒーレントパルス : 640 Gbaud→1.28 Tbaud、コヒーレントパルス : 160 Gbaud→320 Gbaud)により伝送容量をさらに増大させ、周波数利用効率が高いというナイキストパルスの有用性を明確にしていく。 また同時に、ナイキストパルス伝送の基本性能を明らかにするために、非線形波動伝搬を中心とした伝送特性の理論解析も並行して進める。そこで得られた知見をもとに、伝送中の非線形波形歪みを補償するためのディジタル信号処理技術(非線形シュレディンガー方程式の逆伝搬解析など)をナイキストパルス用に最適化し、これをコヒーレントナイキストパルス伝送に適用することにより伝送性能の大幅な改善を図る。
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