2014 Fiscal Year Annual Research Report
宗教テクスト遺産の探査と綜合的研究―人文学アーカイヴス・ネットワークの構築
Project/Area Number |
26220401
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿部 泰郎 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (60193009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 伸道 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (70135276)
塩村 耕 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (80178855)
池内 敏 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90240861)
佐々木 重洋 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (00293275)
伊藤 大輔 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (00282541)
岡田 荘司 國學院大學, 神道文化学部, 教授 (60146735)
落合 俊典 国際仏教学大学院大学, 仏教学研究科, 教授 (10123431)
末木 文美士 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (90114511)
松尾 恒一 国立歴史民俗博物館, 研究部, 教授 (50286671)
上島 享 京都大学, 文学研究科, 准教授 (60285244)
近本 謙介 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (90278870)
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Project Period (FY) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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Keywords | 宗教テクスト学 / 人文学アーカイヴスネットワーク / 宗教遺産学 / 寺院経蔵 / 聖教 / 日本文学 / 日本史 / 美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
○日本における宗教が生みだした文化遺産のアーカイヴス化を、テクスト学の方法論により推進し、その成果を新たな理論化に還元し、情報の共有を通じて社会に貢献する本プロジェクトは、前身科研基盤(A)の終了前年度申請が採択された為、より大規模な調査研究計画を再構成し、「人文学アーカイヴス・ネットワーク」構築を実現させるための態勢を作ることと同時に、対象各文庫等のアーカイヴス化を本格的に開始した。 ○大須文庫は、基礎データとしての黒板目録の十合分の入力を完成、調査による一合分のデジタルデータファイルのサンプル版を作成した。『中世禅籍叢刊』は『禅宗清規集』と『無住集』を公刊、『道元集』は初校に至った。○猿投神社は、豊田市史編さん室と連携し、漢籍等主要な典籍のデジタル撮影が完了し画像データベースの基礎が成り、『猿投神社の典籍』原稿を執筆した。 ○富士市博物館旧東泉院聖教は、報告書『六所家資料 聖教』を刊行、目録を完成公開した。○花祭文献は、小林地区の田野口・大屋地のデジタル撮影を了え、保存措置を完了してデジタルアーカイヴスの礎を築いた。○他に七寺・蓬左文庫・徳川美術館・岩瀬文庫等愛知県内の代表的アーカイヴスとその典籍について、分担者と共同して従来の科研による調査研究の成果を全て総合し、代表者の監修による『愛知県史 別編 文化財4典籍』を刊行された。 ○学界活動では、国際研究集会「東アジアの宗教儀礼」を名大で開催し、海外の国際学会では、EAJSリュブリャナ大会とAASシカゴ大会に本科研により準備・組織したパネルを開催し、研究成果を発信した。 ○本科研を基盤として、今年度に設立した名古屋大学文学研究科附属人類文化遺産テクスト学研究センターの活動を本格的に展開し、セミナー・シンポジウム等を計12回開催、研究成果を学界および社会に発信すると共に、その内容を論文化し、『HERETEX』誌刊行の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
○本年度に設立された名古屋大学文学研究科附属人類文化遺産テクスト学研究センターの許で、本科研の各プロジェクトを効率的に遂行したことにより、当面の対象となる宗教テクスト遺産の探査とそのアーカイヴス化は全体として大きく進展した。その綜合的研究としては、『愛知県史 典籍』に県内の主要な文庫等の宗教テクストを新発見資料も含め網羅的に紹介し、成果をその全体像と共に社会に還元することができたことは、今後の遺産化とアーカイヴス化に大きな進展をもたらすだろう。 ○学術的成果として『中世禅籍叢刊』では既に『無住集』等三冊を公刊し、中世仏教の認識に根本的な変革をもたらしつつある。国際学会ではEAJSとAASでそれぞれプロジェクトの各テーマでパネル報告を開催し高い評価を得た。その資料集と一般読者のための『室町時代の少女革命』は大きな反響を呼んでいる。 ○各文庫や資料群のアーカイヴス化は、それぞれ地元自治体や研究機関との連携により基盤となる目録の電子データ化やデジタル撮影が予定以上に進捗しており、今後のデジタルアーカイヴス構築とそれによる社会での共有化に向けて、着実に人文学アーカイヴス・ネットワークの礎を築いている。 ○人文学アーカイヴス・ネットワーク構築の為に愛知県立大学による「愛知文化遺産としての普門寺史料」の公開セミナーを行い、中部地域におけるアーカイヴス・ネットワークの端緒を作った。 ○人間文化研究機構の連携展示・共同研究のテーマ設定と担当各機関の役割分担について、本科研を主体として次年度より本格的に開始する態勢を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
○本科研の最大の調査およびアーカイヴス化の対象である大須文庫については、黒板目録による全点の識語データ化と登録を最優先課題とする。その為の人的資源確保とサーバー導入等によるシステム化を整える。また、特定の優先すべき分野の宗教テクストについて各合毎のデータ化をデジタル画像を含めて推進する。『中世禅籍叢刊』の『達磨宗』刊行を最大の成果目標とし、以降の刊行の為に基盤を作る。 ○猿投神社の聖教についても画像化を行い、市史特別篇の刊行に合わせて、完全なデジタル・アーカイヴス化を遂行する。○東泉院聖教についても、目録により保存整理を行い、将来の博物館によるデジタル・アーカイヴス化に貢献する。 ○花祭では花祭開館の大入資料と豊根村の分について、デジタル・アーカイヴスの為の基礎データを採訪する。また、既にデータを備えた小林の分について、アーカイヴスシステムの試行版を文化庁の補助事業に協力して製作する。 ○研究成果の発信として、人類文化遺産テクスト学研究センターを拠点に、海外での国際研究集会、ワークショップ、講演会、セミナーと学内での公開セミナー、講演会を開催、ニューズレターの発刊およびセンター紀要として『HERITEX』を創刊すると共に、今後の継続公刊を目指す。特に、ストラスブール大学とハイデルベルク大学で名大主催の研究集会を開催する。 ○学内センターのアーカイヴス部門において、「人文学アーカイヴス・ネットワーク」構築の為に、県内では愛知県立大学および名古屋市博物館、蓬左文庫、岩瀬文庫と展示を含むアーカイヴス化の各種調査企画を実行する。特に蓬左文庫の朝鮮本展覧会に図録作成と国際シンポジウムで協力し、将来のアーカイヴス化を促進する。 ○人間文化研究機構による連携展示「列島の祈り-舞う・説く・飾る」を歴博を幹事として今年度より本格始動する基盤を、本科研で提示する。
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Remarks |
リュブリャナEAJS大会パネル報告資料集70頁、リュブリャナ大学・筑波大学フォーラムパネル報告資料集40頁、ハーバード大学「宗教遺産学の構築」研究報告資料集60頁をそれぞれ刊行、配布した。
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Research Products
(49 results)