2017 Fiscal Year Annual Research Report
The birth of modern trends on commutative algebra and convex polytopes with statistical and computational strategies
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26220701
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日比 孝之 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (80181113)
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Project Period (FY) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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Keywords | 可換代数 / 凸多面体 / グレブナー基底 / 計算代数統計 / A超幾何方程式系 / トーリック環 / トーリックイデアル / 有限分配束 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際会議 The Prospects for Commutative Algebra を、平成29年7月10日から14日、ホテル日航大阪で開催し、David Eisenbud, Juergen Herzog, Dale Cutkosky, 後藤四郎ら、可換環論の大御所とともに、Daniel Erman, Brooke Ulleryら、新進気鋭の若手研究者を招聘し、20件の招待講演を実施した。参加者総数は 103(内、国外参加者は、海外11ヶ国から49名)と盛会であった。 以下、研究面における顕著な成果を列挙する。 (凸多面体)格子凸多面体のδ列に着目し、体積が4以下の格子凸多面体を分類することに成功した。格子凸多面体の分類理論の完成への挑戦は、凸多面体論の現代的潮流の根幹である。それゆえ、研究代表者らの研究成果は、本基盤研究(S)が掲げる、現代的潮流の誕生を著しく促すものである。他方、順序凸多面体に関する従来の研究を踏襲し、グレブナー基底のテクニックを経由し、順序凸多面体と安定集合多面体から、整分割性を持つ反射的凸多面体を量産する斬新な方法を提唱した。 (可換代数)単項式イデアルの正則度と h 多項式の次数の関係に着目し、正の整数 r と s が任意に与えられたとき、正則度が r と、h 多項式の次数が s となる単項式イデアルを構成することに成功した。更に、黎明期にある、有限単純グラフの edge ring の正則度の計算を遂行し、特に、3-linear resolution を持つ edge ring は hypersurface に限ることを証明した。他方、additive number theory における組合せ論の結果である Freiman の定理を、可換代数の枠組で解釈し、Freiman イデアルの概念を提唱し、その諸性質を探究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際研究集会「グレブナー基底の50年」(平成27年度)が成功裏に終わったこと、及び、京都大学数理解析研究所のプロジェクト研究「グレブナー基底の展望」(平成28年度)に欧米諸国のグレブナー基底の権威者が参集したことは、我が国におけるグレブナー基底に関する研究水準が欧米諸国を著しく凌ぐことの証であり、両者とも、我が国における盤石な組織的研究の展開を欧米諸国に披露する絶好の機会となった。更に、国際会議「The Prospects for Commutative Algebra」(平成29年度)も、当初予期を遥かに越える盛会であり、招待講演の研究成果の発表は卓越しており、可換代数の国際会議としては際立った成功を収めることができ、欧米諸国の研究者からも称賛を受けた。これを契機とし、我が国における可換代数の世代交代が促進されるとともに、欧米諸国との共同研究も、一層、活性化される。 凸多面体と可換代数の研究面でも、格子凸多面体の分類理論への挑戦を開始したことなどから、格子凸多面体の研究の斬新な潮流を誘い、他方、単項式イデアルの極小自由分解の卓越した結果も得られており、今後の展開への布陣となる。計算代数統計の研究では、Box--Behnken 計画と呼ばれる3水準の一部実施計画に関する研究成果を、薬学などの応用分野に使う準備も整えられつつある。 以上の結果、本基盤研究(S)の現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している。」と判断される。 なお、平成29年度科学研究費助成事業(基盤研究(S))の研究進捗評価における本基盤研究(S)の評価は「A」(当初目標に向けて順調に研究が進展しており、期待どおりの成果が見込まれる)であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の展開の戦略となる研究課題を列挙する。 (1)有限分配束 L = J(P) に付随するトーリック環(通称、Hibi ring)の Cohen--Macaulay 型の最大値を計算する。具体的には、P の元の個数 d を固定するとき、Hibi ring の Cohen--Macaulay 型の最大値を d の式で表示する。 (2)長方形から単純なポリオミノを除去することから得られる非単純なポリオミノのポリオミノイデアルが素イデアルとなることを証明する。その際、そのポリオミノイデアルがトーリックイデアルとなることを示すことが鍵であるから、まず、その 非単純なポリオミノに付随する自然なトーリック環の候補を探し、グレブナー基底の非アルゴリズム的な代数計算を経由し、そのトーリック環のトーリックイデアルがポリオミノイデアルと一致することを示す。 (3)反射的凸多面体の面の理論を展開する。一般論から、任意の格子凸多面体が或る反射的凸多面体の面となることが既知である。しかしながら、反射的凸多面体の極大面となる格子凸多面体を分類する理論の研究は、未開拓であり、それゆえ、魅惑的な未解決問題である。その未解決問題に挑戦する礎を築く。 (4)順序凸多面体、鎖凸多面体、理想グラフの安定集合多面体などは中心的対称な反射的凸多面体の極大面である。その結果を踏まえ、中心的対称な反射的凸多面体の分類問題を探究する。 (5)更に、若手研究者育成の一環とし、平成30年7月23日から8 月10日までの3週間、欧米諸国から 32 人のポスドクを大阪大学大学院情報科学研究科に招聘し、凸多面体のサマースクールを開催する。
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