2015 Fiscal Year Annual Research Report
高精度直接観測で探る高エネルギー宇宙線の加速と伝播
Project/Area Number |
26220708
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鳥居 祥二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90167536)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 正樹 立命館大学, 理工学部, 教授 (80210136)
|
Project Period (FY) |
2014-05-30 – 2019-03-31
|
Keywords | 宇宙線 / 加速・伝播機構 / 近傍加速源 / 暗黒物質 / 国際宇宙ステーション / 国際研究者交流 / 米国、イタリア / イメージングカロリメータ |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙線の加速・伝播機構の体系的な解明と近傍加速源・暗黒物資の探索を主な目的としたCALorimeteric Electron Telescope (CALET)は、平成27年8月19日に「こうのとり5号機」に搭載されて打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟(きぼう)船外実験プラットフォームに設置された。その後、約45日のチェックアウト期間を経て、10月初旬より初期運用を開始し、2016年1月より定常運用に移行している。この間、現在までにすでに6ヶ月以上にわたって観測が継続的に実施されている。そして、今後は打ち上げ後2年間(目標:5年間)の観測により、研究目的の達成を図る計画である。 観測データは、ISSからNASAのリレー衛星(TDRSS)を経由して、米国NASA/MSFCから筑波宇宙センター(TKSC)に伝送され、ネットワークを介して早稲田大学に構築した「Waseda CALET Operations Center(WCOC)」においてほぼリアルタイムでRaw Dataとして受信している。リレー衛星の不可視時間帯等に生じるテレメトリーの切断期間の観測データは、一旦ISS上のデータ記録装置に保管される。そして、1時間単位で欠損データ補完を行った観測データ(レベルゼロ:L0)を、科学解析用データとして受信している。Raw Dataは、軌道上観測運用のモニターやガンマ線バーストの速報のために利用し、L0データを用いて科学解析用の高次レベルデータの生成を行い、米伊を含む共同研究者に配布して国際共同研究体制でデータ解析を実施している。軌道上観測運用のモニターシステムや、L0データからの高次レベルデータ作成及び科学解析データ処理のシステムは、これまでの研究実績によりすでにほぼ完全な状態で構築されており、今後の科学成果の獲得に向けて極めて順調に研究が進展している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
CALETは、当初より予想されていた1年間の遅延はあったものの、平成27年8月19日に無事打ち上げられ、その後の「きぼう」船外実験プラットフォーム(JEM-EF)#9ポートへの設置も順調に行われた。軌道上における観測開始まえのチェックアウトにおいても、地上で検証された性能がほぼ同様に維持されていることが確認され、平成27年10月初旬からの初期観測を開始した。そして、打ち上げ後90日間までの観測データにより要求されていた電子、ガンマ線、重原子核の各観測項目に関するミニマムサクセス条件を達成できていることが、宇宙科学研究所理学委員会において承認された。その結果、「現状のパフォーマンスにおいて,当初設定した科学目標を達成できる運用が可能と予想される」と判断されている。CALETプロジェクトとしては、JAXA有人宇宙技術センターにおける地上運用システムを含む定常運用移行審査を受け、平成28年1月より定常運用が承認された。 初期観測開始後の観測運用状況は極めて順調で、初期段階ですでにTeV領域電子やガンマ線バーストイベントの観測に成功し、10月19日に初期検証状況の記者説明会をJAXAと早稲田大学の合同で実施している。そして、平成28年3月末までに、10 GeV以上の宇宙線イベントを1億例以上取得し、初期的な解析により約65万例の電子イベントを観測している。さらに、当初は予測されていなかった太陽活動に起因する地球磁気圏における”電子なだれ(REP)”現象の観測に成功し、GRLに投稿して受理されている。そのほかLIGOによる重力波観測に付随するガンマ線バーストの観測結果も得ており、近々論文の投稿を予定している。進捗状況の報告としては、国際共同研究として査読付き論文(3編)、国際会議プロシーディングス(11編)、国内学会発表(22編)、国外発表(4編、内招待講演3編)の発表を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
CALETは平成27年8月に打ち上げられて以来、チェックアウトフェーズ、初期運用フェーズをへて平成28年1月より定常運用観測に移行しており、極めて順調に軌道上観測が継続されている。軌道上の観測データは筑波宇宙センター(TKSC) 経由で早稲田大学に設置されているCALET 運用センター(WCOC) に、Raw Dataとして数秒間で伝送される。WCOCではリアルタイムなミッション運用を実施して、装置状態をモニターするとともに、装置較正の実施と高次レベルデータの作成・解析を行う。そして、近傍加速源・暗黒物質の探索などによる高エネルギー宇宙線の加速・伝播機構研究の新展開を目指して、米伊との国際共同研究として以下の方策で今後の研究推進を行う。 1)WCOCにおける24時間運用体制の継続のため、運用に専念する研究員、連携研究者、研究協力者により確実な運用体制を維持して今後数年間にわたる長期間観測の実施を達成する。 2)最小電離損失に近い陽子(およびヘリウム)の選択的トリガーにより、位置依存性・温度依存性を正確に理解した装置較正方法を確立する.そして、装置較正済みのデータをもとに科学データ解析を国際研究チーム体制で遂行し、できるだけ速やかに所期の研究成果を国際会議等で発表する。研究成果が得られたものは論文を順次作成し、国際的に著名な学術誌に投稿するとともに、それらの成果は広く社会にもマスコミやWEBを通じて広報する。 3)打ち上げ後2年間の観測により、電子、ガンマ線、原子核などの各観測項目についてJAXAで定義されているフルサクセス(TeV領域電子及び数100TeVまでの原子核観測による、A)宇宙線加速・伝播機構の定量化、B)近傍加速源及び暗黒物質のモデル制限、C)拡散ガンマ線のモデル制約、など)を達成し、さらに5年間の観測によりエクストラサクセスの実現に挑戦する。
|
Research Products
(47 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] CALET軌道上観測の初期運用報告2016
Author(s)
鳥居祥二, 浅岡陽一, 笠原克昌, 小澤俊介, 赤池陽水, Motz Holger, 田村忠久, 清水雄輝, 日比野欣也, 奥野祥二, 吉田篤正, 坂本貴紀, 高橋一郎, 中平聡志, 山岡和貴, 寺澤敏夫, 浅野勝晃, 吉田健二, 片寄祐作, 森正樹, 市村雅一, 宗像一起, 加藤千尋, 塩見昌司, 柳田昭平, 三宅晶子, 片岡龍峰, 晴山慎, 他CALETチーム
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学泉キャンパス
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
[Presentation] ISS軌道上におけるCALETの電子観測条件最適化2016
Author(s)
浅岡陽一, 鳥居祥二, 笠原克昌, 赤池陽水, 小澤俊介, 安藤祐貴, 神尾泰樹, 佐藤郁也, 竹本翔一, 田中瑞樹, 宮田諒平, 山口優幸, 大和啓一, Holger Motz, 清水雄輝, 田村忠久, 上野史郎, 冨田洋, 他CALET
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学泉キャンパス
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
[Presentation] CALET地上データ監視システム運用2016
Author(s)
山口優幸, 鳥居祥二, 浅岡陽一, 笠原克昌, 赤池陽水, 小澤俊介, 神尾泰樹, 佐藤郁也, 竹本翔一, 宮田諒平, 他CALETチーム
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学泉キャンパス
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
[Presentation] 軌道上データを用いたCALET検出器のMIP較正2016
Author(s)
小宮優馬, 鳥居祥二, 笠原克昌, 赤池陽水, 浅岡陽一, 小澤俊介, Holger Motz, 清水雄輝, 田村忠久, 他CALETチーム
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学泉キャンパス
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
[Presentation] CALET軌道上データのイベント選別アルゴリズム2016
Author(s)
竹本翔一, 鳥居祥二, 浅岡陽一, 笠原克昌, 赤池陽水, 小澤俊介, 神尾泰樹, 田中瑞樹, 宮田諒平, 山口優幸, 他CALETチーム
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学泉キャンパス
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
[Presentation] ISS軌道上におけるCALETの電荷識別性能2016
Author(s)
小澤俊介, 赤池陽水, 浅岡陽一, 植山良貴, 岡田侑子, 笠原克昌, 佐藤文佳, 田中真文, 田村忠久, 土川恵理子, 鳥居祥二, Holger Motz 他CALETチーム
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学泉キャンパス
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] CALETによるISS軌道上観測2015
Author(s)
鳥居祥二, 浅岡陽一, 笠原克昌, 村上浩之, 小澤俊介, 赤池陽水, Motz Holger, 田村忠久, 清水雄輝, 吉田篤正, 坂本貴紀, 高橋一郎, 上野史郎, 冨田洋, 中平聡志, 山岡和貴, 寺澤敏夫, 吉田健二, 片寄祐作, 森正樹, 他CALETチーム
Organizer
日本物理学会2015年秋季大会
Place of Presentation
大阪市立大学杉本キャンパス
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-28
-
[Presentation] Waseda CALET Operations Center (WCOC) におけるミッション運用2015
Author(s)
浅岡陽一, 鳥居祥二, 笠原克昌, 赤池陽水, 小澤俊介, 神尾泰樹, 竹本翔一, 山口優幸, 大和啓一, Holger Motz, 清水雄輝, 田村忠久, 上野史郎, 冨田洋, 他CALETチーム
Organizer
本物理学会2015年秋季大会
Place of Presentation
大阪市立大学杉本キャンパス
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-28
-
[Presentation] CALET観測模擬データを用いた軌道上観測条件の最適化2015
Author(s)
大和啓一, 鳥居祥二, 浅岡陽一, 笠原克昌, 赤池陽水, 小澤俊介, 神尾泰樹, 竹本翔一, 山口優幸, Holger Motz, 清水雄輝, 田村忠久, 上野史郎, 冨田洋, 他CALETチーム
Organizer
本物理学会2015年秋季大会
Place of Presentation
大阪市立大学杉本キャンパス
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-28
-
[Presentation] 分散処理によるCALET解析システムの高度化2015
Author(s)
奥野祥二, 田村忠久, 清水雄輝, 日比野欣也, 鳥居祥二, 浅岡陽一, 小澤俊介, 赤池陽水, 他CALETチーム
Organizer
本物理学会2015年秋季大会
Place of Presentation
大阪市立大学杉本キャンパス
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-28
-
-
[Presentation] CERN-SPSにおける重イオンビーム実験に用いたCALET熱構造モデルの較正試験2015
Author(s)
田中真文, 鳥居祥二, 笠原克昌, 浅岡陽一, 小澤俊介, 赤池陽水, 岡田侑子, 土川恵理子, Holger MotzB, 田村忠久C, 他CALETチーム
Organizer
本物理学会2015年秋季大会
Place of Presentation
大阪市立大学杉本キャンパス
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-28
-
[Presentation] CERN-SPS重イオンビーム実験によるCALET のエネルギー測定性能2015
Author(s)
土川恵理子, 鳥居祥二, 浅岡陽一, 笠原克昌, Holger Motz, 小澤俊介, 赤池陽水, 岡田侑子, 田中真文, 田村忠久, 清水雄輝,他CALETチーム
Organizer
本物理学会2015年秋季大会
Place of Presentation
大阪市立大学杉本キャンパス
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-28
-
[Presentation] CERN-SPS重イオンビーム試験によるCALET-CHDの電荷分解能2015
Author(s)
岡田侑子, 鳥居祥二, 浅岡陽一, 笠原克昌, 小澤俊介, 赤池陽水, 田中真文, 土川恵理子, Holger Motz, 田村忠久, 他CALETチーム
Organizer
本物理学会2015年秋季大会
Place of Presentation
大阪市立大学杉本キャンパス
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-28
-
[Presentation] CALET on the ISS:2015
Author(s)
P.S.Marrocchesi for the CALET Collaboration
Organizer
XIV International Conference on Topics in Astroparticle and Underground Physics
Place of Presentation
Torino, Italy
Year and Date
2015-09-07 – 2015-09-11
Int'l Joint Research / Invited
-
-
-
-
-