2017 Fiscal Year Annual Research Report
Realization and Application of Large-scale Quantum Entangled States Using Photonic Quantum Circuits
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26220712
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 繁樹 京都大学, 工学研究科, 教授 (80321959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 士吉 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (00359100)
Hofmann Holger・F 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (90379909)
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Project Period (FY) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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Keywords | 光子 / 光量子回路 / 光導波路 / 単一光子源 / ナノフォトニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
量子情報技術とは、量子力学の基本的な性質を、情報通信や情報処理に応用する試みである。光子は、光ファイバ等で長距離伝送が可能であるなど、有力な情報担体である。本研究では、目標として10光子をもつれ合わせることの可能な光量子回路を実現、大規模な多光子量子干渉や多光子量子もつれ状態の量子計測への応用等も試みる。 平成29年度も引き続き、単一光子源の開発、光量子回路の構築と評価などを担当する京都大学の竹内グループ、集積光導波路を設計・製作を担当する九州大学の横山グループ、理論を担当する広島大学のホフマングループの3グループが密接に連携して研究を進めた。 その結果、デスクトップ光量子回路に関しては、伝令付き単一光子列を複数の経路にルーティングするシリアルパラレル変換システムを実現した。得られた変換効率0.533は、伝令信号がない場合の光子列に対する限界値 0.5を超える、また従来法である半透鏡を用いた変換効率の0.25の2倍以上の値である。また、光学素子中での光損失が無いと仮定した際の変換効率は、0.996に達した。この結果はOptics Expressに掲載され、Editor’s pickに選出された。 オンチップ光量子回路に関しては、SiONリング共振器を用いた光子対生成を確認した。またSiに比べて二光子吸収が低く高効率の波長変換が期待できるa-Si細線導波路を用いて、高効率4光波混合発生も確認するなどの成果を得た。また、ナノ光ファイバを用いた単一光子源に関しては、ナノファイバブラッグ共振器のQ値を大幅に向上(1000以上)に成功した。 理論においても、複数の単一光子源とビームスプリッタで実現可能な多光子多モードにおける量子もつれ状態の解析を実施した。その結果、大規模な非局所的効果が得られる特長的な光子分布が実現できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究グループは、京都大学の竹内グループ、九州大学の横山グループ、広島大学のホフマングループの3グループが密接に連携しつつ、①デスクトップ光量子回路、②オンチップ光量子回路、③ナノ光ファイバハイブリッド光子源、④理論・解析の4つの項目について研究を進めている。平成29年度も、当初の予定以上の様々な成果が得られ、研究は計画以上に進展している。 まず項目①に関して、伝令付き単一光子列を複数の経路にルーティングするシリアルパラレル変換システムを実現した。得られた変換効率0.533は、従来法である半透鏡を用いた変換効率の0.25の2倍以上の値である(Opt. Exp. 2017)。また、ホフマンGの提案する多光子多モードの量子もつれ状態をフーリエ変換量子回路によって効率的に検証する新手法について、その検証実験光学系の実装方法を発案、構築した。 項目②オンチップ光量子回路に関しては、デバイスの群速度分散評価や作成方法評価、結合効率向上の研究を、竹内G・横山Gで非常に密な連携のもと進めた。また横山Gでは本年度、SiNに加えてa(アモルファス)-Si細線導波路等による4光波混合発生の効率化について検討を開始した。評価の結果、Siと同程度の非線形光学特性を得ることができた。この他、香港城市大学との共同研究により、SiONリング共振器を用いた光子対生成を竹内Gにおいて実現した。 項目③に関しては、ヘリウムイオンを用いた収束イオンビームを用いる事で、構造の作成精度を高め、Q値を1000以上に向上することに成功した。また、原子間力顕微鏡を用いたマニピュレーション装置を新たに立ち上げた。 項目④に関しては、ホフマンGは多光子多モードもつれ状態の検証実験に関する精密な理論の構築を達成した。これは本プロジェクトの目標の一つである、多光子多モード状態の物理的な理解と直接関係する重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後についても、3グループが密接に連携しつつ、引き続き①デスクトップ光量子回路、②オンチップ光量子回路、③ナノ光ファイバハイブリッド光子源、④理論・解析の4つの項目について研究を進める。 項目①デスクトップ光量子回路に関しては、フーリエ変換を利用した多光子量子もつれの検証実験に取り組むとともに、シリアルパラレル変換のより効率化の研究を、FPGA、光子計数装置等を追加で導入し推進する予定である。 項目②オンチップ光量子回路に関しては、引き続きオンチップ光回路用のSiN導波路リング共振器やSi細線導波路の特性比較を進めるとともに、高非線形感受率、かつ低二光子吸収のa-Si導波路も用いて、4光波混合発生チップの最適化と高変換効率を達成する。 項目③ナノ光ファイバハイブリッド光子源に関しては、平成29年度に実現した、ヘリウムイオン集束イオンビーム装置による高Q値ナノファイバブラッグ共振器と、単一発光体の結合実験に、原子間力顕微鏡を用いたマニピュレーション装置を用いて取り組む予定である。 項目④の理論・解析に関しては、単一光子源からの入力によって生成された状態の多光子統計の研究を継続、マルチモードの問題とそのモード間の多数の可能な干渉パターンに特に焦点を当てる。 特に、多モード干渉計の問題と、光振幅の離散フーリエ変換によって記述されるすべてのモード間の等しい干渉の一般的特性を研究する。
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