2017 Fiscal Year Annual Research Report
Deepening and Developing New Aspects of Flash Chemistry
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26220804
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 潤一 京都大学, 工学研究科, 教授 (30127170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 章弘 京都大学, 工学研究科, 助教 (30584263)
殿村 修 京都大学, 工学研究科, 助教 (70402956)
永木 愛一郎 京都大学, 工学研究科, 講師 (80452275)
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Project Period (FY) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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Keywords | ファインケミカル / フローマイクロリアクター / フラッシュケミストリー / ハイスループット合成 / 有機活性種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フラッシュケミストリーの深化と体系化をめざし、その目的のために、各種有機活性種について生成と分解の速度論解析を行い、得られた速度や活性化エネルギー等の定量的データに基づいた合理的反応設計により新反応開発へと展開するとともに、有用な高次機能化合物の実践的合成を実施する。今年度は以下の研究実績を得た。 オルト位にアシルオキシアルキル基をもつアリールリチウム種のフリースタイプの[1,3]-、[1,4]-、[1,5]-、[1,6]-アニオン性転位反応の制御についてさらに検討を行い、転位の速さがアルキル鎖長に、すなわち、中間体の環の大きさに大きく依存するという結果を得た。 速度論解析を行うためには、滞留時間と温度を種々変えて反応を行う必要がある。これまではリアクター長さを変えて滞留時間を変化させるとともに温度の異なるバスを多数用いて反応を行ってきたが、多大な時間と労力を要するため解析ができる反応の数が極めて限られていた。そこで追加交付により低流量で高速混合が可能なプレート型のリアクターを設計・作製し、流量を変化させて滞留時間を変えるとともに温度制御装置で温度を変える方式を導入した。基本的な反応について検討を行った、装置的に問題ないことを確認した。 また、これまではアリールリチウム種について系統的に検討を行ってきたが、アルキリチウムも強力な求核剤として有機合成に、また開始剤としてアニオン重合に用いられている。そこで、官能基を有するアルキルリチウムを還元的リチオ化により発生させ、それを後から加えた求電子剤との反応に利用できることを検討し、フラッシュケミストリーの概念がアルキルリチウム種についても適用できることを確認した。さらに、官能基を有するアルキルリチウムを開始剤としてアニオン重合を行ったのち、成長末端を求電子剤と反応させることによりテレケリックポリマーを合成することもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不安定有機アニオン種の反応については、順調に研究が進捗している。今まで系統的に検討を行ってきたアリールリチウム種に加えて、アルキルリチウム種に対してもフラッシュケミストリーの概念が適用できたことは大きな成果といえる。これにより、不安定アニオン種のフラッシュケミストリーの領域が大きく拡大できる。 流量を変化させて滞留時間を変えるとともに温度制御装置で温度を変え反応を行い、反応速度を求める方式を確立できたことも反応速度解析を加速するうえで重要な成果といえる。 カチオン種のフラッシュケミストリーについては、フロー型電解反応で有機カチオン種を発生させる検討を行った。フロー型電解セルを新しく設計・作成でき、これを使った予備的な検討も行うことができ、この方法を用いたカチオン種の反応を検討の見通しがたった。まだ、非常に不安定でまだ世界中で誰も観測したことのないグリコシルカチオンの観測については、種々検討を開始しているが、まだ十分な進捗があるとは言えないがさらに挑戦をつづけていく計画である。 以上のように、有機アニオン種のフラッシュケミストリーなど予想を超えて進捗している部分もあり、全体としては順調な進捗状況だといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、フラッシュケミストリーの体系化について重点的に研究を行う。あわせて、速度論的解析等で得られた速度や活性化エネルギー等の定量的データに基づいた合理的反応設計により有機金属反応、固体触媒反応、高分子合成反応、光反応、電解反応へと展開するとともに、有用な高次機能性化合物の実践javascript:onSave();的合成へと成熟させる。以下の項目について重点的に研究を行う 1.活性種の体系化と反応設計法の体系化:これまでに得られたフローマイクロリアクターを用いて行った各種有機活性種(有機アニオン種、有機カチオン種、ベンザインなど)について、生成と分解の研究結果をもとに各種有機活性種の寿命および反応性の体系化を行う。 2.不安定有機アニオン種を用いた新反応開発と有機合成への展開:これまでに実績をあげてきた短寿命有機リチウム種等の有機金属化合物を利用する有機合成をさらに深化させ、高速で起こるアニオン性転移反応の抑制などフラスコではできない化学の実現と体系化をめざす。3.フラッシュケミストリーの固定化触媒反応への展開:高分子モノリス等に触媒を固定化したフロー型反応器を用いた鈴木―宮浦カップリング触媒反応に展開する。4.フラッシュケミストリーの高分子合成への展開との新規材料開発:他の方法では合成困難なブロックコポリマー等高分子材の開発を行う。また、フロー系での力学的なエネルギーを利用した高分子化合物のメカのケミストリーにも挑戦する。さらに、このような反応によって初めて合成可能な新規物質・新規材料の開発にも挑戦する。5.フラッシュケミストリーの光や電気を用いた有機レドックス反応への展開:フラッシュケミストリーの概念を古典的な熱エネルギーだけでなく、光や電気を用いた反応にも展開する。電気や光を用いて短寿命活性種を発生させ、それらを分解する前に目的の反応に利用する。
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Research Products
(11 results)