2015 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ行動制御神経回路のコネクトミクス解析
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26221002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 啓 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (00311192)
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Project Period (FY) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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Keywords | 神経情報処理 / コネクトミクス / モデル動物 / イメージング / ショウジョウバエ / 発現誘導系統 / 行動制御神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳機能を理解する上で重要であるにもかかわらずこれまで知見が乏しかった、連合系と行動制御系を結ぶ神経回路について、神経の可視化や機能操作が容易なショウジョウバエをモデルにして網羅的に同定解析するコネクトミクス研究を行う。今年度はその第二年次として、行動制御系神経の研究に必要な研究環境整備を完成させ、本格的研究を開始した。まず、昨年度導入した蛍光顕微鏡にレーザーユニットを追加して、高解像度の共焦点撮影を可能にした。また、ライブイメージング解析システムを改良し、歩行・飛翔運動中の脳内の神経の活動記録を実現したのとともに、これまで不可能だった単一波長光での視覚刺激装置を開発導入し、色依存的な行動の制御における神経応答の解析を可能にした。 さらに、脳から頸部神経束を通って胸腹部神経節に下行する行動制御神経をコントロールする神経、すなわちこれらの神経の樹状突起部に神経投射を持つような神経の探索を本格的に開始した。我々が作成・保有する系統のスクリーニングを完了し、米国HHMIジャネリア研究所で新たに作られた発現誘導系統コレクションのスクリーニングを開始した。並行して、クローナルユニットの解析によって脳の高次領域間のつながりを体系的に分類する方法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高解像度な顕微鏡標本撮影環境を整えるとともに、多様な感覚刺激と運動パターンに対するライブイメージングの観察系と刺戟系を完成させた。また、膨大な発現誘導系統のスクリーニングを本格的に開始し、数十の新しい神経タイプをすでに同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
行動制御神経が樹状突起を広げる行動制御中枢領域の中で、特に脳後部に位置し行動制御神経に最も近い位置にあるSPS, IB, ATL領域に着目し、これらの領域に存在する神経の体系的同定を行う。また、これらの神経で温度または光感受性チャネル遺伝子を発現させて神経機能を操作し、行動変化を解析する実験系を立ち上げる。 また、行動制御中枢に近接する領域に、胸腹部神経節から上行する体性感覚神経が数多く投射していることが明らかになった。体性感覚神経は行動制御のフィードバックに重要な役割を果たすにもかかわらず、これまでその構造や機能は解明されていなかった。そこで末梢感覚器から直接脳に投射する神経や胸腹部神経節から伸びる体性感覚介在神経の投射末端領域に樹状突起を持つ高次処理神経を体系的に探索し、それらの情報が脳のどこに伝えられ、どのように行動制御に影響するかを解析する。 同じく行動制御中枢に隣接する領域には視覚高次処理も投射しており、これらの神経の一部を阻害すると波長特異的な接近/忌避行動の異常が生じることが我々の最近の研究で明らかになった。これらの神経の活動が行動制御にどのように働くのかを明らかにするため、新たに確立した波長特異的視覚神経刺戟装置を用いて高次処理神経の波長依存的な活動をイメージング解析する。
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Research Products
(2 results)