2017 Fiscal Year Annual Research Report
Connectomics Analysis of the Neural Networks that Regulate the Behavior of Drosophila
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26221002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 啓 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (00311192)
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Project Period (FY) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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Keywords | 神経情報処理 / コネクトミクス / モデル動物 / イメージング / ショウジョウバエ / 発現誘導系統 / 行動制御神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳機能を理解する上で重要であるにもかかわらずこれまで知見が乏しかった、連合系と行動制御系を結ぶ神経回路について、神経の可視化や機能操作が容易なショウジョウバエをモデルにして網羅的に同定解析するコネクトミクス研究を行う。今年度はその第四年次として、候補脳領域にある神経の網羅的同定作業をさらに進めた。連合中枢と連絡する神経の体系的同定のために、脳上部に位置し連合中枢との情報入出力や行動制御中枢への情報出力を行う部位である SMP, SLP, SIP, CRE, CL 領域、また行動制御中枢に連絡する神経の体系的同定のために、脳後部に位置し行動制御神経に最も近い位置にある SPS, IB, ATL 領域、およびこれらに情報を送る重要な部位である LAL 領域について探索を行った。この結果、これまでの研究と合わせて合計約800種類の神経を発見し、そのうち約500種類については、発現パターンが一部の細胞だけで重複するような2種類の発現誘導系統を組み合わせて、重複する細胞でのみ特異的に遺伝子発現を誘導できる「Split GAL4」系統の樹立に成功した。 また、体性感覚神経は行動制御のフィードバックに重要な役割を果たすにもかかわらず、これまでその構造や機能は解明されていなかった。末梢感覚器から脳に直接投射する神経や、胸腹部神経節から伸びる体性感覚介在神経が、脳のどこに、どのように投射するかの研究を完成させ、これらの神経が歩行時や飛翔時に示す活動パターンのイメージング解析と、これらの神経の機能を特異的に阻害した場合に起きる歩行行動異常の解析と合わせて、論文として発表した。 さらに、低次視覚中枢からの視覚投射神経の一部が波長特異的な光への接近/忌避行動に関与していることから、これらの神経の活動が行動制御にどのように働くのかを明らかにするため、代表的な神経種について眼に特定の波長の光を照射した際の神経活動パターンのイメージング解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した以上の多数の神経を同定することに成功し、その6割以上について特異的な神経イメージングや神経機能操作が可能なSplit GAL4 系統を樹立することができた。これらの系統は今後私たちの研究だけでなく、他の多くの研究者の研究にも極めて有効なリソースになると期待される。 また、昆虫の体性感覚情報が末梢の感覚器から脳に送られる経路の全貌を、ついに明らかにすることができた。解明された神経回路の構造は哺乳類のそれと本質的に一致していた。すでに他の全ての感覚情報経路で昆虫と哺乳類の間に高い類似性が見いだされていることと合わせて、昆虫と哺乳類の進化の枝が分岐する以前に居たはずの前カンブリア紀の生物には、すでに現在の生物につながる各感覚種の情報処理経路を持つ複雑な脳が存在していたことが示唆された。この結果は著名学術誌に掲載され、新聞やテレビでも報道された。
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Strategy for Future Research Activity |
行動制御中枢および連合中枢と連絡する神経の体系的同定:脳上部に位置し連合中枢との情報入出力や行動制御中枢への情報出力を行う部位である SMP, SLP, SIP, CRE, CL 領域、脳後部に位置し行動制御神経に最も近い位置にある SPS, IB, ATL 領域、およびこれらに情報を送る重要な部位である LAL 領域について、昨年度までに同定した神経群の構造を詳細に解析し、研究を完成させる。また、これらの神経で光感受性チャネル遺伝子を発現させて神経機能を操作し、行動変化を解析する。 体性感覚情報については、胸腹部神経節から伸びる体性感覚介在神経のうち未同定のものを探索して、脳の中で体性感覚情報を受け取る中枢の全貌を明らかにする。また、これら体性感覚中枢に樹状突起を持つ脳内の高次処理神経を探索し、それらの情報が脳のどこに伝えられ、どのように行動制御に影響するかを解析する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Topological and modality-specific representation of somatosensory information in the fly brain.2017
Author(s)
Tsubouchi, A., Yano, T., Yokoyama, T.K., Murtin, C., Otsuna, H., and Ito, K.
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Journal Title
Science
Volume: 358
Pages: 615-623
DOI
Peer Reviewed
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