2016 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidating the neural mechanism to generate the partial awareness by large-scaled neuron network analysis and circuit manipulation techniques in non-human primates
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26221003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊佐 正 京都大学, 医学研究科, 教授 (20212805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 憲太 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 准教授 (70315662)
吉田 正俊 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (30370133)
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Project Period (FY) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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Keywords | 神経回路 / 意識 / 霊長類 / 皮質脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ECoG電極による前頭前野領域の活動記録:前頭前野領域を含む大規模回路の動態を確認するために、マカクサルの前頭前野の広範囲の領域を覆うように48チャネルのECoG電極を留置、眼球サッケード課題遂行中の活動を長期間安定的に記録・解析するシステムを構築した。その結果、前頭眼野を含む広範な領域において、サッケード時にβ帯域および高γ帯域の信号変化が顕著に観察された。一方で、背外側前頭前野においてはそれと異なり、サッケード終了後の持続的活動が観察された。 2)盲視ザルのLIP野のスパイク活動様式:2頭の盲視ザルによる視覚誘導性サッケード遂行中のLIPのニューロンスパイク活動を微小タングステン電極で記録した。V1損傷側のLIPニューロンは、対側視野(障害視野)への視覚提示後、約120msから活動が上昇し、視覚応答を示した。この活動上昇は、サッケード終了まで持続した。 3)メタ認知(Yes-No)課題における行動結果の信号検出理論を用いた解析:2頭の盲視ザルのメタ認知(Yes-No)課題の成績を信号検出理論を用い、バイアスによる影響を省いた刺激提示に対する感度の測定を行ったところ、V1損傷後も障害視野に提示された視覚刺激に対する感度は著しく低下しているが、ゼロではないことが明らかになった。このことは、盲視ザルが、意識的気づきが障害されている「部分的意識」状態にあることを示している 4)大規模脳活動データの次元圧縮法による主要回路抽出手法の確立:両側の運動前野、一次運動野、一次体性感覚野にそれぞれ15チャネルのECoG電極を装着し、それらの電極での神経活動と相互の間のGranger causalityの大規模データに次元を圧縮する手法を適用、損傷反対側運動前野から一時運動野、反対側運動前野から同側運動前野という2つの経路が主要な回路として抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクト開始当初は、サルへの全脳型ECoG電極の埋め込み手術に失敗したため、電極数を減らさなくてはいけなくなったことと、研究室の引っ越しをすることになったため、研究の進展に遅延が起きることが懸念された。実際に引越しの前後に実験の停止をしなくてはいけなかったが、引越し後の研究室の立ち上げは、一部の実験(ウィルスベクターの注入、MRIの撮影)は書類関係の手続きですぐにできなかった部分はあるが、通常の行動実験自体は早期に再開できた。 前半の期間を通じて (1)PETデータの詳細な解析と神経活動記録、可逆的不活性化、ウィルスベクター2重感染による特定回路信号伝達可逆的遮断法を組み合わせて、盲視にかかわる神経回路の全容を明らかにできたこと、(2)前頭葉を覆うECoG電極の埋め込み手術と記録技術の確立、(3)多チャネル電極間のGranger causalityという、多次元データに対する次元圧縮手法による主要回路の抽出手法の開発、(4)Yes-No課題の行動データに対して信号検出理論を適用して視覚意識の障害を定量化する研究パラダイムの確立、を成し遂げることができた。あとはこれらを組み合わせて盲視ザルに適用するのみである。
現在ECoG電極を埋め込んだサル1頭にYes-Noメタ認知課題を訓練中で間もなく健常時のデータ取得が開始される。その後V1損傷を行い、2か月の回復期間を待ってデータ取得が開始される。もう1頭も訓練中であり、平成29年度終わりから平成30年度初めにはメタ認知課題遂行時の脳活動データを取り終える予定で、データ解析を並行して行い、さらに、可逆的機能阻害やウィルスベクターによる経路選択的機能阻害実験に移行する。そして論文作成・発表に至る予定である。従って、一時の遅れはあったが、現状においては、目標に向けて順調に研究が進展しており、予定どおりの成果が見込まれると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時にはECoG電極は、脳全体への百数十チャネルの埋め込みを計画していた。実際に脳全体への電極埋め込み手術を行ったが、術後、脳浮腫が顕著で、実験の継続が不可能になった。そこで、技術改良はステップを踏んでおこなうこととし、当面は電極数を減らして、視覚的意識の形成に重要な役割を果たすと考えられる前頭前野領域のみ(48チャネル)に絞ることにした。他の領域からの脳活動記録は、頭頂葉のLIPからは単一ニューロン活動の記録を行い、その活動パターンを明らかにした。また、脳深部(上丘、視床枕、線状体)の活動は、多点電極による記録を準備している。一方で、両側の一次運動野、感覚野、運動前野に慢性留置した合計30チャネルのECoG電極により、Granger causalityなどの手法で広範な領域同士の信号の流れを推定するパラダイムの構築に成功したので、今後はYes-No課題遂行時の前頭前野を含む広範な前頭葉領域においてECoG電極で記録される神経活動の領域間相互作用の時間的変化を明らかにしたい。また、ECoG電極および脳深部活動の多点電極による広範囲の領域活動記録を、可逆的機能阻害やウィルスベクターによる経路選択的機能阻と組み合わせることにより、領域間の情報信号のやり取りと視覚運動変換およびメタ認知との因果関係の解明を目指す。
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Research Products
(23 results)