2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26221106
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
工藤 洋 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (10291569)
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Project Period (FY) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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Keywords | フェノロジー / トランスクリプトーム / 遺伝子発現 / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
「生物の同調現象」として植物の応答を研究することにより、それにかかわるメカニズムの機能を自然条件下で理解することが目的である。平成26年度は、主に以下の4点をすすめた。 1:植物の同調応答を定量的に検出する「連続播種実験」を実施し、シロイヌナズナの複数系統についてRNAサンプルを取得した。これは、毎週播種した植物を野外条件で生育させ、その後の花成、開花、生育終了の同調を調べるものである。同調現象を説明するために、気象データと併せた解析と遺伝子発現からの解析をすすめている。 2:ハクサンハタザオを対象に、年間の日長と気温変化の位相差を自然(Natural)、位相一致(In-phase)、逆相(Anti-phase)に設定した、1年間にわたるグロースチャンバー実験を行った。その結果、位相差が自然条件と異なる時に、大きな適応度の低下が起こった。この結果は、日長と気温変化の自然の位相差が開花調節経路の機能に重要であることを示している。また、時系列トランスクリプトームの結果、多くの季節変化を示す遺伝子が温度に依存して変化していることを示した。 3:ハクサンハタザオの自然集団を対象とし、時系列トランスクリプトームと並行してヒストン修飾解析を実施した。活性/抑制型修飾であるH3K4me3/H3K27me3抗体を用いたクロマチン免疫沈降法によるFLC遺伝子の解析を実施した。また、網羅的解析(ChIP-seq)データが得られており、現在データ解析中である。 4:‘生育終了’同調の突然変異体スクリーニングを、野外圃場条件下で開始した。突然変異源処理後の自殖系統と野生型をのべ3,600株鉢植えにして栽培している。これらのうち、生育の終了が同調しないものを得る予定である(平成27年6月に実験終了予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同調現象は、生物の複数個体間の同時応答である。植物が決まった季節に開花するのも、個体間の交配を可能にする同調現象である。生物学の高度化に合わせて、遺伝子発現を生物の内的状態として解析する研究が必須となった。 本計画では、これまでの遺伝子発現動態の研究に基づき、①‘生育終了’の同調をもたらしてる鍵因子の同定、② 自然の複雑な状況における機能に焦点を当てた自然集団の時系列ヒストン修飾解析による機能理解、③トランスクリプトームデータのバイオマーカーとしての利用を目指している。 平成26年度には予定した通りの野外研究、圃場、グロースチャンバー実験を実施し、データが得られている。達成した事項について特筆すべき点は、①については大規模な突然変異体スクリーニングが開始されたこと、②については野外でクロマチン免疫沈降を実施する方法を開発し、FLC遺伝子について通年のヒストン修飾変化の野外データを複数年分得るとともに、ChIP-seqに成功したこと、③については野外集団およびグロースチャンバー実験からのトランスクリプトームデータが得られたこととである。また、野外集団からは継続的に長期のRNAサンプルを取得しつづけている。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画では、これまでの遺伝子発現動態の研究に基づき、①‘生育終了’の同調をもたらしてる鍵因子の同定、② 自然の複雑な状況における機能に焦点を当てた自然集団の時系列ヒストン修飾解析による機能理解、③トランスクリプトームデータのバイオマーカーとしての利用を目指している。 これらについての今後の研究方針について、項目別に説明する。①本年度野外でスクリーニングした突然変異体の2次スクリーニングをより安定したグロースチャンバー環境で実施する。さらに、遺伝子を特定して変異を導入した変異体を用いたスクリーニングにより、同調が乱れる変異体を得ることに着手する。RILのQTL解析については、平成26年度に予備的な実験を実施した。その結果により、QTL実験を大規模に実施するか、そのエフォートを突然変異体スクリーニングに回すかを判断する予定である。 ② 昼夜気温差による低温積算記憶の促進仮説を検証する。鍵遺伝子FLCのヒストン修飾を介したバーナリゼーション応答を評価する。低温中にFLCの特定の部位に抑制型ヒストン修飾が蓄積する過程と、暖かくなった後に修飾が遺伝子全体に広がる過程が知られている。これらの過程について、自然条件下での機能を考えた昼夜変温下で評価する。 ③ シロイヌナズナ・ハクサンハタザオでの環境操作実験を実施し、着目する環境要因を予測する精度、他要因の変動に対する頑健性の2点から予測モデルを評価する。予測に使う遺伝子数をどこまで減らせるかも検討する。着目する環境要因については、これまでに得られたトランスクリプトームの解析結果により判断する。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] Molecular phenology in plants2014
Author(s)
Kudoh H, Kawagoe T, Honjo NM, Sugisaka J, Sato Y, Nishio H & Nagano AJ
Organizer
THE 38th Naito CONFERENSE ON Molecule-based biological systems
Place of Presentation
CHATERAISE Gatesux Kingdom, Sapporo
Year and Date
2014-10-07 – 2014-10-10
Invited
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