2014 Fiscal Year Annual Research Report
植生景観構造を考慮した東ユーラシア永久凍土変化の広域評価
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26242026
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
飯島 慈裕 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (80392934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 仁 関東学院大学, 経済学部, 講師 (00709628)
朴 昊澤 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (10647663)
太田 岳史 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20152142)
檜山 哲哉 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 教授 (30283451)
石川 守 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (50373452)
小谷 亜由美 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (80447242)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 永久凍土 / 森林科学 / 水文 / GIS / 地図化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は年度計画に従い、4つの研究グループ連携で下記の課題を開始した。また、これまでの研究実績と構想について国内外での成果発表や意見交換を積極的に行い、研究立上げとして初年度は順調に進捗した。 1. 植生-土壌パラメータデータの収集・整備(植生-凍土G 、広域モデルG連携):研究対象地域での未訳の関連研究文献で、特に重要な研究資料となる、Soloviev(1959)を英文翻訳し、当時の観測データおよび地形区分や植生区分、土壌の熱伝導率等の物理パラメータ等の情報の整理を開始した。 2. 現地観測による熱・水・炭素解析(植生-凍土G 、水文-凍土G、空間分布G連携):7~10月の現地調査によって、モンゴル、ヤクーツク、ティクシにおいて、植生調査ならびに活動層分布と土壌の物理パラメータの取得を行った。平成26年度までの観測データを収集し、ヤクーツクでは植生構造の変遷と凍土(活動層)変動との関係の解析を開始した。また、東シベリアとモンゴルに展開されている凍土地温・土壌水分分布観測網の観測データの収集を順調に行い、各地域での凍土温度変動の解析も開始した。 3. 衛星データの収集・解析手法の検討(空間分布G、水文-凍土G連携):ALOS のAVNIR2とPALSARデータから、レナ川中流地域における植生変化、水域変化、湛水域変化の抽出と地図化を行った。また、凍土融解によるサーモカルスト(地形沈降)湖の統計的特徴について、LANDSAT8で水域分布と段丘面ごとによる地形解析を開始した。 4. 陸面モデルの改良(広域モデルG担当・全グループ連携):陸面モデル(CHANGE)の現時点でのパフォーマンスを確認し、河川氷発達・流出と河川水貯熱の過程を新たに取り込んだモデル実験を開始した。また、長期気象データに基づくシミュレーション結果から、凍土温度・活動層厚変化に果たす積雪の重要性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採択後速やかに研究会議をもち、研究分担者全員で研究方針の確認を行った後、各グループの相互連携研究を開始できた。モンゴルとロシア・東シベリアの集中観測点、分布観測網の観測データを順調に取得でき、植生-凍土、水文-凍土、凍土広域分布の解析が初年度から遅滞なく開始できた。ヤクーツク・エレギー・ティクシでは、植生調査と活動層厚分布調査を実施し、植生構造の変遷が凍土温度と地形変化に与える影響を解析するための基本データが得られた。また、シベリアとモンゴルの広域地温分布観測から、凍土温度鉛直構造やその変化状態の解析を開始できた。 GIS解析では、ALOSとLANDSAT8を用いたレナ川中流域のデータ解析によって、湿潤気候による凍土・地形変化を伴う森林荒廃地域の抽出に着手し、その有効性を確認できた。また、凍土荒廃に伴う水域(サーモカルスト湖)拡大の地域的特徴を抽出し、段丘面ごとに小規模な湖沼の面積寄与が無視できないことを明らかにした。 凍土安定性評価に関わる陸面モデルでは、20世紀からの気象データを入力データとする広域シミュレーションによって、凍土温度と活動層厚の年々変動に果たす積雪の重要性を示すとともに、近年では北極温暖化に伴う低気圧活動の活発化によって夏季降水の影響が強くなることも示唆される初期結果が得られた。また、河川流出モデルと結合して、河川氷や河川水貯熱量などの凍土・水文プロセスも改良が進められた。 北東ユーラシアにおける凍土・陸面過程変動研究の現在までの研究動向のとりまとめとして、研究代表者を編者とし、本研究分担者が執筆担当した気象研究ノートを出版できた。また、査読付国際誌への論文公表も初年度から進み、ASSW、EUCOP、PAGE21、AGU、PEEXなど欧米の国際会議において、本研究課題に関する初期成果や研究構想、構造の紹介を積極的に行うなど、国内外への成果の発信も数多く行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の現地観測、衛星データ、陸面モデルによる解析結果を踏まえ、今後は以下の研究を推進する予定である。また、成果公表として、本研究構造を示した国際誌へのレビュー論文作成を進める。 1. 植生-凍土G:ヤクーツクとエレギーで森林蒸散流の同時比較観測のための観測システムをセットアップし、活動層厚・土壌水分変化との対応を明らかにする(向こう2-3年度継続予定)。ヤクーツクでは2006年、2009年の観測結果との比較から、植生と凍土環境の変遷の影響評価も行う。 2. 水文-凍土G:レナ川および支流河川、サーモカルスト湖、活動層土壌水などの水サンプルの取得を進める。2000年代以降の水安定同位体等の指標の取りまとめも進め、表層の凍土融解や土壌水分変動が水文過程にどう応答するかの観測と解析を進める。 3. 空間分布G:ALOSとLANDSAT8による凍土荒廃・森林荒廃・水域変化域の検出の手法評価と広域解析を進める。ALOS-2の観測データが入手できてくるので、向こう2-3年度でデータ取得を進め、後方散乱係数解析やInSAR解析によって、植生・水域・地形変遷の評価を進める。 4. 広域モデルG:これまでの文献資料や、観測データに基づく、植生・土壌・凍土の諸パラメータ化をすすめ、気候感度実験や地域性の評価を進める。サーモカルストや水域拡大の過程について、モデル改良の検討を進める。
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Research Products
(57 results)
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[Journal Article] Response of surface air temperature to small-scale land clearing across latitudes2014
Author(s)
Zhang, M., X. Lee, G. Yu, S. Han, S. Wang, J. Yan, Y. Zhang, Y. Li, T. Ohta, T. Hirano, J. Kim, N. Yoshifuji, and A. Wang
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Journal Title
Environmental Research Letters
Volume: 9
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Differentiating moss from higher plants is critical in studying the carbon cycle of the boreal Biome2014
Author(s)
Yuan, W., S. Liu, W. Dong, S. Liang, S Zhao, J Chen, W. Xu, X. Li, A. Barr, T.A. Black, W. Yan, A.L. Goulden, L. Kulmala, A. Lindroth, H.A. Margolis, Y. Matsuura, E. Moors, M. van der Molen, T. Ohta, K. Pilegaard, A. Varlagin, and T. Vesala
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Journal Title
Nature Communication
Volume: 5
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Latent heat exchange in the boreal and arctic biomes2014
Author(s)
Kasurinen, V., K Alfredsen, P Kolari, I Mammarella, P Alekseychik, J Rinne, T Vesala, P Bernier, J Boike, M Langer, L. Belellimarchesini, K. van Hussteden, H. Dolman, T. Sachs, T. Ohta, A. Varlagin, A. Rocha, A. Arain, W. Oechel, M. Lund, A Grelle, A Lindroth, A Black, M Aurele, T Laurila, A Lohila, and F Berninger
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Journal Title
Global Change Biology
Volume: 20
Pages: 3439-3456
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Preliminaly results of GRENE-TEA Model Intercomparison Project (GTMIP) stage 12014
Author(s)
Saito, K., S. Miyazaki, J. Mori,T. Yamazaki, T. Ise, H. Arakida, T. Hajima, M.Hosaka, Y. Iijima, A. Ito, Y. Matsuura, M. Niwano, T. Nitta, R. Oishi, T. Ohta, H. Park, T. Sasai, A. Sato, H. Sato, T. Sueyoshi, R. Suzuki, K. Tanaka, S. Yamaguchi, and K. Yoshimura
Organizer
第5回極域科学シンポジウム
Place of Presentation
国立極地研究所、東京都立川市
Year and Date
2014-12-02 – 2014-12-05
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