2015 Fiscal Year Annual Research Report
新しい津波避難支援ツールの開発に関するアクションリサーチ-巨大想定に挑む-
Project/Area Number |
26242030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢守 克也 京都大学, 防災研究所, 教授 (80231679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑山 満則 京都大学, 防災研究所, 教授 (10346059)
城下 英行 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (10581168)
金井 昌信 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (20375562)
鈴木 進吾 京都大学, 防災研究所, 助教 (30443568)
渥美 公秀 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (80260644)
宮本 匠 兵庫県立大学, 総合教育機構, 講師 (80646711)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 津波防災 / 避難行動 / 避難訓練 / シミュレーション / 災害情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我が国における喫緊の防災課題である津波避難について、新しい避難支援ツール、すなわち、①「個別訓練~避難動画カルテ」、②「個別訓練~スマホアプリ・バージョン」、③「局地総合シミュレーション」、④「防災教育ゲーム:クロスロード津波編」、以上のツールの開発と実装を通じてアプローチしたものである。平成27年度は、以下の研究を実施した。 研究①については、高知県四万十町興津地区をフィールドとして前年度に引き続き研究を行った。その結果、最新想定に基づく津波浸水シミュレーションの結果を、GPSロガーを携帯した「個別避難訓練タイムトライアル」の参加者が避難訓練において実際に移動した経路と同時に可視化した「動画カルテ」によって、防災訓練への主体的な訓練への参加が実現されることが実証された。 研究②では、研究①によって開発された手法を、スマートフォンのアプリに展開した新たな避難訓練支援ルール「逃げトレ」として再構成することを試みた。高知県四万十町や大阪府堺市における実証実験を通じて、そのプロトタイプを完成させた。 研究③については、前年に高知県黒潮町万行地区をフィールドとして実施した研究で得られた成果を、別のフィールド(静岡県焼津市)にも適用し、その汎用性について検証した。具体的には、地域の高校生の協力によって多数の世帯調査に基づく避難意向に関する膨大な情報をもとに、エージェント・シミュレーションを実施し、地区全体の避難行動を再現する手法を同地区でも適用し、指定の避難場所以外の建物等に避難することが生存率を高める可能性について示唆した。 研究④については、ツール開発の基礎となる、岩手県、宮城県における津波避難に伴うジレンマに関する基礎情報をさらなる現地調査によって補完した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、研究①については、本研究で開発した新たな避難訓練手法である「個別避難訓練」を体験した人々の数が、研究フィールドの全住民の30%程度にのぼり、当初の予想よりも高くなっていることが上げられる。さらに、この手法は、NHK全国放送(「NHKおはよう日本」)で取り上げられるなど広く社会でも注目された。加えて、研究②についても、この手法の発展版である「逃げトレ」のプロトタイプが予想よりも早く完成、その成果も、上記同様、「NHKスペシャル」で取り上げられた。 次に、研究③についても、開発した手法を静岡県焼津市に水平展開した成果が、上記の「NHKスペシャル」のメインコンテンツとなるなど、開発したシステムの普遍性・一般性が高いことが当初予想よりも早く検証された。 さらに、これらの成果に関連する学術査読論文が、すでに英文8編、和文12編刊行済である。 以上の理由から、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえて、研究①について、主に高知県四万十町興津地区をフィールドとして開発した同手法を、国内の他のフィールド(千葉県、和歌山県などを想定)や海外のフィールド(メキシコを想定)などにも適用可能な汎用性を確保するための基礎研究を開始する。あわせて、興津地区で、昼夜の別、天候のちがいなど、異なる条件下での避難行動の解析ツールとして同手法を活用するための方法を開発する。 研究②(「個別訓練~スマホアプリ・バージョン」)についても、「逃げトレ」のプロトタイプが完成したので、それをベースにテクニカルな課題についてクリアするとともに、研究①と同様、これまでのテストフィールド(高知県四万十町興津地区、大阪府堺市)のみならず、他のフィールドへの水平展開を実施して、その汎用性や動作の安定性について検証を行う。 研究③については、高知県黒潮町、静岡県焼津市における取り組みを継続する。その際、シミュレーションの成果をもとに、焼津市ですでに先行的に試みているように、実際の地区防災計画(具体的な避難計画)の改善に役立てるための手続きの開発、具体的にはシミュレーション結果の学習を中核とするワークショッププログラムの開発も試みる。 研究④(「防災教育ゲーム:クロスロード津波編」)についても、津波避難に伴うジレンマを素材としたワークショップ形式の防災教育ツールとして、これまでに開発済のプロトタイプを用いて、上記①~③の手法を補完して、全体として総合的な津波防災教育プログラムを構成するようシステム化する。
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Research Products
(9 results)