2015 Fiscal Year Annual Research Report
固視微動および立位姿勢動揺とその神経症候に基づく姿勢保持の神経制御理論の再構築
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26242041
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野村 泰伸 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50283734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐古田 三郎 独立行政法人国立病院機構刀根山病院(臨床研究部), その他部局等, 病院長 (00178625)
望月 秀樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90230044)
小林 康 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (60311198)
清野 健 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40434071)
鈴木 康之 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (30631874)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2017-03-31
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Keywords | 間欠制御 / 姿勢制御 / 姿勢動揺 / 固視微動 / 非ガウス性 / 拡散解析 / 臨界現象 / ゆらぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,固視微動、静止立位及び二足歩行中の姿勢動揺、およびパーキンソン病患者におけるこれらの姿勢保持機能の変容を定量化することで、姿勢保持とその障害の神経メカニズムを明らかにすることを目指している。特に、これらの姿勢保持が、必ずしも従来考えられてきた持続的フィードバック制御によって達成される漸近安定状態ではなく、能動的なフィードバック制御が間欠的に停止されるような間欠制御によって達成される有界安定状態(システムの不安定平衡解あるいは不安定な周期振動解の周辺を変動する状態)であるとの仮説を立て、その妥当性の検証を目指している。2年度目である平成27年度は、以下の成果を得た: (1) 固視微動:固視微動計測を複数の健常被験者に対して実施した。得られたデータ(水平方向の固視微動)をマイクロサッケード成分とドリフト(含トレモア)成分に分解し、それぞれを確率過程としてみなし拡散運動解析を行った。その結果、どちらの変動も正あるいは負の時間的相関を持ち、右あるいは左のどちらか一方に持続的に拡散し続ける確率過程で特徴付けられること、および個々の被験者において両者は統計的に優位に反対方向に拡散する(一方が右に拡散する場合もう一方は左に拡散する)ことを明らかにした。 (2) 立位姿勢動揺および歩行リズムの変動:静止立位姿勢動揺(あるいは手先スティックバランス運動時のスティックの変動)および二足歩行運動の揺らぎ解析、およびこれらの間欠制御モデルの動態解析を実施した。これらの運動揺らぎはベキ乗則に従う非ガウス性の揺らぎを示すが、間欠制御モデルの動態と実験的に得られた運動揺らぎを比較することで、こうした運動揺らぎは、運動の安定性に関する臨界性、すなわち間欠制御器の制御パラメータがパラメータ空間において安定領域と不安定領域の境界付近にチューニングされるような条件下で生成されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固視微動に関しては、研究の計画段階で想定した通り、それが2種類の不安定な運動が混合することで全体として視線が固視点近傍の有界領域に留められている可能性を示すことができている。これは眼球位置を一定位置に保持するための神経制御も間欠制御モデルの特徴を有していることを意味する。パーキンソン病患者の視線計測が予定より少し遅れている。 立位姿勢および歩行運動の揺らぎに関しては、制御の間欠性のみならず、安定に関する臨界性がベキ乗則や非ガウス性の運動揺らぎの生成メカニズムに関与していることが明らかになりつつあり、これは当初の予想を超える興味深い成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の2年間の成果として、眼球、身体姿勢、定常歩行、手先スティックバランスといった、機械力学的効果器の姿勢とある一定位置に保持する、あるいは歩行のように同じ運動を周期的に繰り返す周期運動の保持する目的を達成する際に、脳は間欠的フィードバック制御を用いているとする仮説の妥当性を示す結果が蓄積されてきた。また、これらんぼ運動に付随する間欠的運動揺らぎの生成に、制御(アクチュエータを活性化させる能動的アクション)の間欠に加え、間欠制御で姿勢が保持されているシステムの安定性に関わる臨界現象である可能性が強まってきた。本研究の最終年度では、このことをより詳細、定量的に検討する予定である。また、このような臨界性を伴う揺らぎがパーキンソン病患者においては消失(変質)する可能性が高いため、その検証を進める予定である。さらに、近年、運動中の脳活動を計測可能なモバイル脳波計が利用可能になっており、定常歩行や立位姿勢中の脳活動が高いSN比で計測する事例が報告されるようになってきた。そこで、最終年度には、二足歩行や立位姿勢中の脳活動を計測し、そこから間欠制御の特性を抽出することを試みる予定である。
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