2014 Fiscal Year Annual Research Report
超音波による微小気泡の凝集体形成を利用した生体内細胞デリバリー技術の創成
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26242053
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
桝田 晃司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60283420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 一雄 帝京大学, 薬学部, 教授 (30130040)
鈴木 亮 帝京大学, 薬学部, 准教授 (90384784)
千葉 敏雄 独立行政法人国立成育医療研究センター, 医療機器開発室, 室長 (20171944)
絵野沢 伸 独立行政法人国立成育医療研究センター, 先端医療開発室, 室長 (40232962)
山下 紘正 独立行政法人国立成育医療研究センター, 医療機器開発室, 研究員 (00470005)
安井 久一 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (30277842)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 治療細胞 / 音響放射力 / 微小気泡 / マイクロバブル / バブルリポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、治療のために特別に調製した細胞を患者に注入する造血幹細胞移植や免疫細胞療法などの細胞移植治療が行われている。特定の部位を標的とする場合はカテーテルを用いる手段もあるが、通常は血流に任せる以外に送達手段が無く、副作用の心配もある。そのため、我々がこれまでに行ってきた音響放射力を利用した微小気泡およびその凝集体の動態制御のための技術を応用することにより、生体内で細胞を送達できる可能性が有る。本研究は、細胞の周囲に微小気泡を付着させた凝集体を形成することにより、超音波の音響放射力を利用して細胞を血流中で運搬するための技術を開発することを目的とする。 本研究では、マウス由来のColon-26細胞と、それに特異的に付着するトランスフェリンを表面に付着させた微小気泡(バブルリポソーム)を用いた。微小気泡の細胞への接着を促進するため、懸濁液中に均一に超音波を照射するための円筒形チャンバを製作した。微小気泡と細胞をそれぞれ別々の波長で励起発光するように染色し、細胞表面に接着した微小気泡の量を計測したところ、チャンバ内で音圧100kPa-ppの正弦波、照射時間を30 秒とした場合に、細胞の接着量が最も高くなることが分かった。またこの条件で作成された、微小気泡付き細胞を水中に浮遊させ、駆動用超音波として中心周波数5MHzで音圧300kPa-ppの正弦波の平面波を照射したところ、細胞の分布に変化をもたらすことに成功した。一方、微小気泡を接着させていない細胞に関しては、同様の実験での音波照射下でも細胞の位置は変化しなかった。本実験より、微小気泡を細胞に接着させることにより、音響放射力が細胞の動態に影響することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、目的通りに細胞に微小気泡を付着させることと、音響照射力によってその細胞を動かすことに成功したため、おおむね順調に進展していると考えている。微小気泡および細胞の濃度については、生体応用を考慮した場合の現実的な値を設定でき、また照射超音波については生体応用に適している1MHzの連続波を用いて成功している。懸濁液を取り出して微小気泡と細胞の分布を蛍光観測し、微小気泡の付着の度合いや細胞の制御能を評価することについても当初の予定通りである。 ただ、現状での実験条件について、使用している細胞は一種類のみであり、しかも直接治療に応用できないため、今後は動物実験を見据えた治療細胞の選定と、細胞に特異的に接着する微小気泡の調整が必要となる。本手法の発展により、同治療における投与効率の欠点を克服し、薬物との連携を様々に設定できる新しい治療法の可能性が拓ける。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は (a) 免疫細胞を含んだマイクロバブル凝集体の形成、(b) 局所的音響放射力形成による人工血管内のバブル凝集体の誘導、(c) 超音波照射後の細胞に付着した微小気泡の評価、の3段階に分かれている。超音波照射によるマイクロバブルの凝集現象は、これまでの先行研究の通り既知であるので、まず(a)により目的とする細胞を凝集体に含ませる手法を確立する。次に得られた細胞-バブル凝集体を、(b)複雑な形状の人工血管を用いて、照射超音波の音響放射力によって目的の経路に誘導制御する手法を確立する。ここで様々な超音波音場をデザインできる2次元超音波アレイとその駆動装置については、過去の研究助成によって現有している。またマイクロバブルが破壊することがあると、細胞の制御能が弱まることが考えられる。よって(c)で示した細胞に付着した微小気泡量とその変化を評価することによって、一連の超音波照射系の最適化を行うことが、本研究全体の成果に直結すると考えられる。共同研究者のうち、細胞治療に造詣の深い絵野沢先生、また微小気泡の製造を依頼している丸山先生、鈴木先生に指導を仰ぎ、研究を進める予定である。
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