2014 Fiscal Year Annual Research Report
アラブ社会における多元的貧困の歴史的・構造的解明:エジプトとヨルダンを中心に
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26243001
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加藤 博 一橋大学, 名誉教授 (10134636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 えり奈 上智大学, 外国語学部, 教授 (20436744)
深尾 京司 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30173305)
津村 宏臣 同志社大学, 文化情報学部, 准教授 (40376934)
佐藤 寛 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 研究企画部, 上席主任研究員 (50403613)
北澤 義之 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (90257767)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 西アジア・中央アジア / 貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、社会の脆弱性が集約的に現れる多元的な現象である貧困を取り上げ、「アラブの春」の展開の中で露呈したアラブ社会の脆弱性を、歴史的、構造的に明らかにすることである。そのための具体的な作業は、アラブ社会の住民の社会経済生活や彼らの意識構造に関する基礎的なデータ・情報を蓄積し、それに基づいて実証的かつ学際的に分析することである。本研究の初年度である平成26年度には、研究実施計画に従って、次の5つの作業を行った。(1)エジプトの貧困構造の歴史的変化を行政の最小単位である町・村のレベルで分析するために、エジプト中央統計局とヨルダン統計局の協力を得て、エジプトとヨルダン、とりわけエジプトの人口・労働・就業・失業に関する時系列データを収集した。(2)貧困の歴史的変化を家計・個人のレベルで把握するためには、世帯パネルデータの構築が不可欠である。そこで、エジプトについては、これまでに調査した3つの村において、ヨルダンについては、北西部の山岳地帯の村において、追跡世帯調査を実施し、できる限りのデータのパネル化を行った。(3)2013年7月に起きた軍事クーデター後のエジプト市民の政治意識を分析するため、前回の科研費による2012年に続く4回目の政治意識調査を行った。その際、2012年調査の対象となった個人に対する調査となるように努めた。(4)収集した統計データを使った空間分析を行うために、エジプトとヨルダンにおいて、地図を中心とした地理情報を収集し、その一部をデジタル化した。(5)エジプトとヨルダンの調査村において、有力者が所蔵している地方文書の所在を確認し、その一部を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で指摘した6つの作業のうち、統計局と村のインフォーマントの助力によって、(1)エジプトとヨルダン、とりわけエジプトの人口・労働・就業・失業に関する時系列データの収集と(2)できる限りのデータのパネル化では、ヨルダンの村落調査が一つにとどまった以外は、当初の予想以上の成果を上げることができた。(3)政治意識調査もまた順調に作業が進んだが、前回の科研費による2012年調査の対象となった個人への追跡は20パーセント弱にとどまった。(4)と(5)の地理情報と地方文書の収集については、(4)地理情報の収集は順調に進展したが、(5)文書資料の収集は所在の確認はなされたが、その収集は一部にとどまった。なお、研究対象としてイエメンも想定していたが、政情はますます混迷化し、現地での調査、資料収集は不可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の重点を、徐々にデータ・情報の収集から分析に推移させて行きたい。本研究の初年度である平成26年度はもっぱら作業を、データ・情報の収集にあて、その分析はいまだ準備段階にある。平成27年度以降、データ・情報の補足収集に努めながらも、内外の研究者と協力関係に立ちつつ、分析を本格化させ、我が国に社会科学的なアラブ地域研究を根付かせたい。
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