2015 Fiscal Year Annual Research Report
宮内庁書陵部所蔵道蔵を中心とする明版道蔵の調査と研究
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26244002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横手 裕 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10240201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 麻里子 弘前大学, 人文学部, 教授 (30431430)
志野 好伸 明治大学, 文学部, 専任准教授 (50345237)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 道教 / 道蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)前年度に購入した宮内庁本道蔵の紙焼き複写、およびそれをスキャナーで読み込んだPDF画像等を使い、現在通行している北京白雲観本道蔵の影印本とどのような違いがあるか、詳細な対照作業を開始した。具体的には、巻頭部(あるいは巻末)の印記の有無、各丁の版式の相違をはじめ、句読点の存在、補写の有無、書き込み等の有無についてのチェックを行った。ただ、道蔵は膨大な分量があるため、今年度は来年度以降の本格的調査のための準備的な作業が主となった。 (2)日本国内に散在する正統道蔵の個別の文献の調査を行った。今年度は大谷大学図書館等の所在を確認した。 (3)中国大陸、フランスなど海外に所蔵される正統道蔵の現物を実見し、宮内庁本と比較を行った。中国の道蔵については、研究代表者の横手が9月に山東省へ赴き、泰安市博物館に所蔵される明代の万暦年間印刷の道蔵を実見し、写真撮影も行った。さらに青島市博物館の道蔵についても、同様に万暦年間印刷本の実見調査を行った。フランスの道蔵については、前年度同様に研究分担者の志野氏が主に夏休み期間を利用して渡仏し、目録作成を念頭に置いた実地調査を行った。 (4)研究分担者の渡辺麻里子は、日本に存在する永楽北蔵などの明版仏蔵(官版)の調査を行い、明代の道蔵・仏蔵の現物の比較、および両者の作成や再版等の活動について考察を進めた。 (5)28年1月に、本科研費補助金研究の調査開始以降中国(北京・泰安・上海)で収集した道蔵の画像を報告書にまとめ、『道蔵図録Ⅰ』として刊行した。これらの道蔵の画像がまとまった分量で公開されるのは、世界初である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宮内庁本道蔵の調査については、当初予定より準備に若干時間がかかったが、既に書誌的調査に着手できており、特に問題はない。 海外の道蔵調査も順調である。特に山東省の道蔵調査は、山東大学の協力が得られたこともあって予想以上に大きな成果を挙げることができた。フランスの道蔵については、政情不安もあったが、現地の事情に通暁した研究分担者の志野氏が安定的かつ着実に進めている。 日本の仏蔵調査も、研究分担者の渡辺氏が京都の寺社で新たに嘉興蔵の所在を確認するなどで、意義深い進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
宮内庁書陵部所蔵の道蔵の調査については、作業にあたる人員を当初予定より増やし、なおかつ膨大な紙焼き複写を容易に扱えるようにPDF化したファイルを各自に貸与するなどで、作業の効率化を図る。 中国大陸の道蔵調査については、昨年度交流のあった四川大学の関係者が調査に歓迎の意向を示しているので、28年度は四川方面の道蔵の実見調査を中心に考えることとした。また、案外注目されていないアメリカのシカゴ大学が所蔵する道蔵も、実見に赴く。 30年度には、宮内庁書陵部本道蔵の詳細な目録と、世界に残る道蔵についての総合的な論文集を刊行する予定なので、28年度、29年度ともそれに向けた着実かつ効率的な作業と調査を進めていく。
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Research Products
(8 results)