2015 Fiscal Year Annual Research Report
多文化共生社会の変容と新しい労働政策・宗教政策・司法政策に関する国際比較研究
Project/Area Number |
26245016
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
飯田 文雄 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70184356)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 康夫 北海道大学, その他の研究科, 教授 (20197685)
津田 由美子 関西大学, 法学部, 教授 (30247184)
西山 隆行 成蹊大学, 法学部, 教授 (30388756)
網谷 龍介 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (40251433)
浪岡 新太郎 明治学院大学, 国際学部, 准教授 (40398912)
渋谷 謙次郎 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50346277)
塩川 伸明 東京大学, その他部局等, 名誉教授 (70126077)
早川 誠 立正大学, 法学部, 教授 (80329010)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 政治学 / 多文化主義 / 政治理論 / 政治史 / 政策研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多文化共生社会論を巡って、2000年代後半以降に生じた変化を、労働政策・宗教政策・司法政策という3つの政策領域に則しつつ解明することを目指すことにある。本年度はその中でも、原理主義の台頭等を承けて、多数派と少数派の利害対立が深刻化しつつある宗教政策をとりあげ、以下の諸問題の考察を行った。 (1)第一に、本研究では、政治哲学・政治史学等の領域で行われた、近年の多文化共生社会における宗教政策の変容に関する多様な理論的先行研究を批判的・総合的に検討し、その特色や問題点について考察した。その結果、①従来の多文化共生理論では、宗教的集団に対しては、主としてその運動体としての側面や教義内容に関する説明が試みられ、その結果その行動が過度に非合理的・情緒的なものと位置づけられる傾向が強かった、②こうした宗教集団の合理主義的解釈に対する消極的な理論的伝統を踏まえつつ、宗教と多文化の関係を考察する新たな理論的枠組みとして、イギリスなどヨーロッパ諸国を中心として世俗主義研究が活性化しつつあり、その動向に注目する必要がある、等の重要な知見が判明した。 (2)更に本研究では、2000年代後半以降の北米・西欧・東欧諸地域において、多文化共生社会の宗教政策の中に生じた具体的変化の特色やその諸要因等について考察した。その結果、①これら諸国では近年、原理主義的な少数派宗教の台頭に対する多数派側の懸念が次第に拡大しつつあるが、過去に宗教対立を調停したという歴史的経験は、そうした懸念の過度の拡大を抑制することに有効である②少数派宗教の原理主義化・過激化を抑制する重要な要因として、少数派宗教内部において多様な教義解釈の可能性が存在し、より穏健で協調指向的な教義解釈の所在を主張出来ることが決定的である、等の重要な知見が判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語での研究論文・図書の公刊や学会報告が当初の予定通り相当数行われており、更に外国語での研究報告も当初の予定通り順調に進んでいるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は当初計画に従い、多文化共生社会の変容と司法政策の関係、及び多文化共生社会の政策システム全体の特色や日本の多文化化に関する諸問題等を順次考察する予定である。
|
Research Products
(29 results)