2016 Fiscal Year Annual Research Report
日本の議院内閣制統治の構造-予算・政府立法の比較制度分析を通じて-
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26245017
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
佐々木 毅 学習院大学, 法学部, 研究員 (90009803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 淳子 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00251314)
阪野 智一 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (10162299)
成田 憲彦 駿河台大学, 法学部, 教授 (30275929)
待鳥 聡史 京都大学, 法学研究科, 教授 (40283709)
谷口 将紀 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (60251435)
安井 宏樹 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60396695)
伊藤 武 専修大学, 法学部, 教授 (70302784)
平野 浩 学習院大学, 法学部, 教授 (90222249)
野中 尚人 学習院大学, 法学部, 教授 (90264697)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 議院内閣制 / 比較制度 / 政府立法 / 議会制度 / 政党政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、平成28年度には、4回の定期的な研究集会を実施した。第1回目(4月9日)には、前年度の2月に実施したドイツとイタリアでの現地調査・ヒアリングの内容を整理し、メンバーの間で共有する作業を中心として行った。イタリアに関しては、これまで十分に明らかとなっていなかった基本的な制度に加えて、政府立法とそれをめぐる運用の実際について、またドイツに関しても、政府と与党会派との関係、会派内部の組織とその運営が政府立法にどのような形で関連しているのかを中心として意見の交換と議論の整理を進めた。 第2回目の研究会(7月9日)には、ブレギジットを決定したイギリスでの国民投票について詳細に検討し、またドイツについての調査に関して、第2回目として、予算作成プロセスについての報告をした。第3回目の研究会(9月10日)では、内閣と議員・個々の有権者レベルでの支持の異同に関する議論、日本の戦後国会における「合理化」の問題などを検討した。第4回目の研究会(2月21日)には、戦前の帝国議会がどのようなものであり、戦後の国会への影響をどうとらえるべきかを検討した。また、外部の研究者から、予算関連法案をめぐる政府・議会関係についての比較分析を提供してもらった。 さらに11月には、イタリアのフィレンツェにおいて、日本からの本研究会のメンバーとEUI(欧州大学院大学)、その他2つの有力大学の研究者から参加を得て、共同研究会を開催した。比較研究の充実、海外研究者との交流という点で大変に有意義であった。 全体として平成28年度中には、ブレギジット、米国でのトランプ大統領の当選といった重大な出来事が生じたこともあって、議会・立法制度のみならず、それを包み込むより大きな政治の文脈や政党政治・選挙への関心にも十分に関連づけつつ、研究の一層の充実と展開を図った面も大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本における議院内閣制という統治の仕組みについて、政府立法と予算という側面に特に注意を払いつつ、その全体的な制度構造と実態的な特質を分析することを目指している。ヨーロッパにおける主要な議院内閣制諸国との比較を進めつつ、近年における比較政治理論の成果を取り入れることによって、戦後日本の政治・近年の変化までを念頭に置きながら、日本の議院内閣制統治の実態とその特徴を、多面的かつ統合的に捉えることが目標である。 現在までに、基本的な理論的研究に関わる部分の共有化と、各国における基礎的なデータ・分析の作業が相当程度進められてきた。そうした作業の蓄積を踏まえて、昨年度の11月にはイタリアにおいて共同ワークショップを開催した。つまり、本格的な比較分析を開始し、同時に、今後へのより踏み込んだ研究交流をスタートさせるところまで進めてきたと言える。 また他方で、ブレギジットやアメリカでのトランプ大統領の誕生、ヨーロッパ諸国におけるポピュリズムの拡大など、民主主義という政治の大きな枠組みを揺るがしかねない事態が次々と生じてきたのに対応して、狭い意味での議会制度や立法プロセスに関わる検討に加えて、政府-与党関係や選挙・政党政治の全体的な展開についても注意深く検討を進めつつある。議院内閣制という統治システムの全体的な基盤に関しても分析を本格化しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、平成28年度までの研究を踏まえて、さらにそれを深化させることを目指す。第1の方向性は、比較分析において具体的な焦点を当てた形での研究業績の形成を目指すことである。そうしたことを前提に、国際的な学会・研究会等での発表にも取り組んで行きたい。 第2の方向性は、同じくこれまでの研究成果を踏まえて、国内で隣接の他の研究領域の専門家(例えば、法律、歴史学など)や実務家(国会関係者や官庁の職員、ジャーナリストなど)、あるいは場合によっては政治家を交えた意見交換の活動を進めていきたい。比較的人数の多い研究会の形、あるいはシンポジウム形式もありうると考える。 第3に、研究の内容については、議会制度や立法プロセスについての検討をさらに進めるのは当然として、議院内閣制の全体的な仕組み、ないしは民主主義の変容という観点を交えながら昨今の政治変動の意味を考察し、そうした枠組みとの大きな関連性についても掘り下げていくことを目指したい。
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