2014 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者における社会的不利の重層化の機序とその制御要因の解明
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26245062
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
杉澤 秀博 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (60201571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 謙 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (40405999)
杉原 陽子 鎌倉女子大学, 家政学部, 准教授 (80311405)
柳沢 志津子 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(歯学系), 講師 (10350927)
新名 正弥 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター, 助手 (70312288)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会階層 / 年齢効果 / 時期効果 / コホート効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.「国民生活基礎調査」のデータを活用して、高齢者を対象に、所得階層による健康度自己評価の格差の存在と、その格差が年齢、時期、生年コホートによって異なるか否かを分析した。分析の結果、所得階層によって健康度自己評価に有意な格差があること、その格差は高齢になるほど有意に減少するものの、時期とコホートによる有意差がないことが明らかとなった。 2.「日本版総合的社会調査」のデータを活用し、高齢者を対象に、学歴による健康度自己評価の格差の存在と、その格差が年齢、時期、生年コホートによって異なるか否かを分析した。分析の結果、学歴によって健康度自己評価に有意な格差があること、しかし、その格差は年齢、時期、コホートによって有意差がないことが明らかになった。 3.「透析患者全国調査」を活用し、所得階層による合併症への罹患の格差の存在と、その格差が年齢、時期、コホートによって異なるか否かを分析した。分析の結果、合併症罹患には所得格差があること、その格差が年齢と時期によって有意に異なることが明らかになった。 4.「透析患者全国調査」を活用し、高齢透析患者の社会的不利が透析導入の年齢によって異なるか否かを分析した。分析の結果、30歳未満で透析を導入した人では、それ以降に導入した人と比較して身体的・社会的・経済的不利が深刻であることが明らかとなった。 5.高齢者における社会的不利の重層化の機序とその制御要因の解明のための研究方法論と調査票の作成に向けて、①ライフコース上の社会階層、ライフイベントの測定指標、②社会階層と健康・保健行動との間の媒介要因、③社会階層による健康格差の制御要因と解明のための研究方法論、を中心に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の第1の研究課題は、「国民生活基礎調査」「日本版総合的社会調査」「透析患者全国調査」という既存のデータベースの二次分析を通じて、高齢者における社会階層による健康格差の存在と、この格差が年齢、時期、生年コホートによって異なるか否かを分析することにあった。分析方法論などについて検討すべき課題があり、平成27年度も分析を継続する必要はあるものの、この課題はおおむね達成された。 第2の研究課題は、27年度に実施予定の「高齢者における社会的不利の重層化の機序とその制御要因の解明のための調査」の準備であった。既存研究を精査し、①ライフコース上の社会階層、ライフイベントの軌跡、②社会階層と健康・保健行動の間の媒介要因、③社会階層による制御要因、に関する課題の明確化と調査項目の構成を決定した。しかし、対象地域、具体的な調査項目の決定、社会階層による健康格差の制御要因を分析するための方法論の確定までは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に行った既存のデータベースの二次分析を継続し、分析方法論に関する課題の解決を図った上で、雑誌論文に投稿する。 平成27年度の中心的な課題は、当初の研究計画の通り、「高齢者における社会的不利の重層化の機序とその制御要因の解明のための量的調査」の実施にある。平成26年度の文献研究を踏まえ、調査票を完成させ、さらに対象地域の決定後、実査を行う。 さらに、平成27年度では、平成28年度に実施予定の「雇用延長施策の強化と中高年者の社会的不利の増大を解明するための量的調査」の準備を行う。この調査では、この20年くらいの雇用延長政策などの影響を評価するため、平成11年に実施した調査の繰り返しの横断調査を行う。そのため、平成11年調査の調査項目を精査し、継続項目と新規項目を決定する。
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