2016 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者における社会的不利の重層化の機序とその制御要因の解明
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26245062
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
杉澤 秀博 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (60201571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 謙 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (40405999)
杉澤 陽子 (杉原陽子) 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (80311405)
柳沢 志津子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 講師 (10350927)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会階層 / 健康 / 高齢者 / ライフコース / メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
1)高齢者における社会的不利の重層化の機序とその制御要因の解明のために、量的・質的調査とその解析を行った。量的な調査では、社会階層分布が大きく異なる東京都内A区とB区に在住の65歳以上の住民各1,000人を対象とし、739人から回答を得た。質的調査では、階層が低く、かつ保健行動を実施していない人、階層が低いが保健行動を実施している人を対象に行った。量的調査の分析の結果、①運動習慣の学歴による格差は、運動に対する社会的支援と運動に関する自己効力感によって説明できること、②高齢期の喫煙習慣と運動習慣がライフコース上身近な人がこれらの習慣を持っているか否かによって影響を受けることが明らかになった。 2)雇用延長施策の強化と中高年の社会的不利の増大を解明するための調査を実施した。55~64歳の男性2,500人に対する調査の結果、919人から回答を得た。現在、量的データを分析中である。 3)昨年までと同様に「国民生活基礎調査」のデータの分析を継続して行い、所得による健康格差に対する年齢、コホート、時期の影響を分析した。高齢者(65歳以上)においては、所得階層による日常生活動作の障がいの格差が存在すること、その格差は高齢になるほど減少するとともに、時期による差も存在することが明らかとなった。 4) 「長寿社会における中高年者の暮らし方の調査」(東京都健康長寿医療センター・ミシガン大学の共同研究)のデータを活用し、ライフコース上の経済的困窮が高齢期の健康(有病数、日常生活動作、認知症状、うつ症状、健康度評価)に与える効果を、潜在期間モデル、経路モデル、社会移動モデル、蓄積モデルの4モデルに基づき分析した。分析の結果、いずれの健康指標に対しても経路モデルが妥当であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、以下3課題の実施を計画した。第1の課題は、平成27年度に実施予定であった「高齢者における社会的不利の重層化の機序とその制御要因の解明のための量的・質的調査」を実施するとともに、データ解析を行うことであった。平成27年度実施予定の調査を延期した理由は、対象者のより幅広い階層分布を確保するため、対象地区を1地域から2地域に増やす必要があったからである。量的な調査を終了するとともに質的調査も行うことができた。加えて、量的なデータを分析することで、当初予定していた研究課題に関する知見も得ることができた。以上により、平成28年度はおおむね順調に進展したと考える。第2の課題は、「雇用延長施策の強化と中高年の社会的不利の増大を解明するための調査」を実施することであった。高年齢者雇用安定法が施行される以前の平成11年に実施した全国55~64歳の男性を対象とした調査データとの比較可能性を考慮し、この調査とほぼ共通する項目を用いて全国55~64歳の男性2,500人に対する調査を実施した。この課題もおおむね順調に進展した。第3の課題は、初年度から継続している「国民生活基礎調査」「日本版総合的社会調査」「透析患者全国調査」という既存のデータベースの二次分析を行うことであった。2本の論文を欧文誌に投稿し、おおむね順調に進展した。以上の3課題に加えて、既存のデータベースである「長寿社会における中高年者の暮らし方の調査」(東京都健康長寿医療センター・ミシガン大学の共同研究)を活用し、本研究プロジェクトの課題であったライフコース上の社会階層が高齢期の健康に与える影響を分析し、新しい知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、平成28年度に実施した「雇用延長施策の強化と中高年者の社会的不利の増大を解明するための量的調査」を利用して、雇用延長施策を肯定あるいは否定的に評価している人各10名、計20名を対象に質的調査を行い、分析する。調査方法は半構造化面接である。同時に、量的調査を継続して分析し、雇用延長施策の強化が中高年者の社会的不利の増大に影響しているか否かについての知見を提供する。 第2には、「高齢者における社会的不利の重層化の機序とその制御要因の解明のための量的・質的調査」を継続して分析し、欧文誌に投稿する。 第3には、既存データの二次分析の継続である。「国民生活基礎調査」「長寿社会における中高年者の暮らし方の調査」を活用した二次データ分析の結果を欧文誌に投稿中である。査読結果をもとに修正し、掲載できるようにする。さらに、「日本版総合的社会調査」「透析患者全国調査」も引き続き分析し、欧文誌に投稿する。
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Research Products
(15 results)