2015 Fiscal Year Annual Research Report
社会ネットワークに埋め込まれた価値観構造:国際比較・パネル・スノーボール調査研究
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26245064
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
池田 謙一 同志社大学, 社会学部, 教授 (30151286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 雪 関西大学, 社会学部, 教授 (00267379)
柴内 康文 東京経済大学, コミュニケーション学部, 教授 (60319457)
稲増 一憲 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (10582041)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ソーシャル・ネットワーク / 集合現象・社会現象 / 国際比較 / アジア / 価値意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アジアンバロメータ国際比較調査(ABS)第4波の日本全国調査を実施した。本研究代表者を中心とする研究グループは東、東南アジア13カ国にわたるデータの取得と分析を続けており、今回調査も全国の代表性あるサンプルを用いて統合して比較分析できる機会となった。この調査によって、アジア内での15年にわたる変化の様相が検討できるほか、日本国内のアジア的価値観の変容に関しても貴重なデータを取得できる機会となる。研究経費が当初申請より大幅に減額となったため、当初予定の規模を縮小せざるを得ず、オムニバスの全国調査として実施した。主たる項目は次の通りであった:アジア的価値観の構造(政治や社会倫理、社会関係に関する項目群)/民主主義の意味認識。民主主義や民主化への賛否・支持。他の体制との比較優位性認知/制度への信頼 (選挙制度、議会、政党、中央官庁、地方政府、新聞、テレビ等)/政治参加 (投票、請願、献金、デモ参加経験等)、社会参加(各種団体・組織参加)。 面接調査は、調査票とともに中央調査社に委託し、層化された全国210地点から2500サンプルを系統抽出した対象者に対して2016年1月下旬に実施された。回収数は1081で回収率は43.2%であった。サンプリング困難な地点が続出し、今後の全国調査に対しても教訓を残したが、回収率は近年の水準の規模は達成した。 主たる知見:インターネットで政治や政府に関して情報をチェックする人々は4割近いが、意見表明をする人々は5%に満たず、近年の政治参加の低下と軌を一にしている。一方で日本の政治体制や民主主義への支持は強いものの、政治の運営者たる政府や政治家に対する支持は高いとは言えない。アジア的価値に関しては大きな変化はなく、個の利益よりも集団の利益を優先する一方、国益への重視は低く、また長期的な志向性の強さと対立回避傾向の強さは強靱である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記載したように、研究申請額より4割予算がカットとなったため、オムニバス調査の一環として全国面接調査を実施した。結果はかろうじて良好で「おおむね順調に進展」と判断できるが、全国面接調査で国際比較上、調査の仕様の変更が困難な研究に対して(今回はなんとか対応できたが、確実に次の類似の事態でも同様の対応が可能とは考えられない)、4割までの減額(一律そうだったようだが)は調査の意義を損ないかねないという危惧を抱く。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画は、アジアンバロメータ調査と合わせた2年度に渡る同一対象者へのパネル調査を計画し、平成28年度はソーシャル・ネットワークのスノーボール調査の実施を考えていた。しかしながら、アジアンバロメータ調査が単発のオムニバス調査とならざるを得なかったため、パネル調査は不可能である(1年次目調査で2年目を実施する許可を住基閲覧時と調査対象者から予め得なければならないが、オムニバス調査ではこれは不可能だった)。 したがって、28年度はエゴ中心ネットワークを面接調査で集中的に取得するソーシャルネットワーク調査を実施するか、特殊な対象者抽出に基づくインターネット調査を実施してスノーボール調査まで行い、ネット上での発言と紐づけるがサンプルがインターネットサンプルに限られるか、の選択を慎重に見極めた後に調査を実施する。 基本的な調査実施形態は次のように考える。いずれの場合も調査に含まれるソーシャル・ネットワーク・バッテリに関しては最大12名の重要他者・高頻度接触他者・政治的会話の相手他者を調査対象とする。面接調査の場合には、これら他者に関する詳細な項目を検討し、アジアンバロメータ調査の価値意識との連動性について検討を可能とする。つまり価値意識がネットワークに反映され、またネットワークの社会的規定性が価値意識を制約する様相を検討する。スノーボール調査をインターネット上で行う場合は、他者の調査対象者を配偶者および重要他者2名とし、この3名には直接アクセスしてインターネット調査に回答するよう要請する。またスノーボール調査の当初対象者は、スクリーニングもしくはパネルサンプルに基づき当人のインターネット上でのソーシャルアカウントと紐づけ可能なサンプルを取得し、ネット上での行動や発言と調査での回答の対応を検討し、価値観との連動を分析するとともに、スノーボール他者との社会的埋め込まれ性の分析を行う。
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Research Products
(7 results)