2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26245069
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平田 聡 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (80396225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 真也 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (40585767)
足立 幾磨 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (80543214)
森村 成樹 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (90396226)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 実験系心理学 / 比較認知科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトはなぜ高度な知性を備えるに至ったのか。この問いに答えるため、ヒトに最も近縁な現生種であるパン属2種のチンパンジーとボノボを対象とした比較研究をおこなう。かれらの道具的知性と社会的知性の特質と相違点を明らかにすることにより、ヒトの知性の進化的基盤に迫る。チンパンジーとボノボは、近縁種でありながら、道具使用行動においても、社会性においても、特筆すべき大きな違いがあり、その理由はいまだ未解明のパズル として残されている。こうした違いが、どのような認知機能の違いに起因しているのか、そしてそれはヒトの認知機能とどのような関係にあるのかを探るのが本研究の目的である。平成26年度は、まずチンパンジーを対象にしてすでに研究代表者が確立した協力行動に関する実験課題を、新たにボノボを対象に実施した。その結果、他社と動作を協調させる認知能力においてボノボもチンパンジーと同等であることが示された。また、他者とのコミュニケーションに関してはボノボのほうが優れている可能性が示唆された。次に、アイトラッカーを用いて、自然な動画を見た場合の両種の視線の違いを検証した。その結果、チンパンジーは他者の操作する物体に注目するのに対して、ボノボは他者そのものに注目する傾向があることが分かった。ボノボのほうがより融和的であることとの関連が考えられる。また、チンパンジーとボノボの社会ダイナミズムを調べる目的で、食べ物をめぐる潜在的に競合場面を実験的に作り出し、そこでの社会交渉を観察した。交渉に関与する個体の属性に応じて異なる社会交渉が生じることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書に記載した研究計画の主要な部分に着手し、当初の目標に掲げた通り研究手法の確立をすることができた。研究計画の2本柱に掲げた実験的研究においても自然観察的研究においても、そしてチンパンジーとボノボという比較においても、研究を展開して成果が見えつつある。おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
アイトラッカーを用いた視線測定によるチンパンジーとボノボの比較において前年度に非常に興味深いデータが出てきているので、その点をひとつの焦点にして研究を進めていきたい。成果がまとまったものについては、順次論文として公表する予定である。研究計画の大きな変更が必要となる事態は生じておらず、また、研究を遂行する上での問題点もこれまでのところは存在しない。概ね当初の予定通り推進する方策である。
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Research Products
(14 results)