2014 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンド中のNVセンターのナノ配列作製による数量子ビット量子レジスタの実現
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26246001
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
磯谷 順一 筑波大学, 名誉教授 (60011756)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷井 孝至 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339708)
小野田 忍 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究センター, サブグループリーダー (30414569)
寺地 徳之 独立行政法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニット, 主幹研究員 (50332747)
川原田 洋 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90161380)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子コンピュータ / ナノエレクトロニクス / ダイヤモンド / イオン注入 / HOM量子干渉 / CPT / 国際研究者交流 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ナノスケールのNVセンターの配列を作製して、室温動作の量子レジスタを数量子ビットに拡張することをめざす。イオン注入によるNVセンター作製の位置制御はストラグリングで制限される。FIBとなる窒素イオン源がないので、ナノスケールのNVセンター配列を、散在的に多数作製することは困難である。ところが、ブロードビームでも20 keV窒素分子イオン注入を用いると短い距離のNV-NVペアーを作製できる。一方、ナノホールを用いた窒素イオン(1 MeV)注入でも、短い距離のNV-NVペアーの作成が報告されている、我々は、2つの方法を組み合わせて、ナノホールから低エネルギーの分子イオンを多数注入する方法の開発に取り組んだ。その結果、距離および配列を構成するNVセンターの数を制御するための最適化に進めるとともに、コヒーレンス時間および電荷安定性にもすぐれた配列作製への最適化に進める段階に達することができた。 本研究では、NVセンター以外にも、量子情報デバイス応用に優れた特性をもつカラーセンターの探索を行っている。SiV-センターは、発光の70%が、線幅が狭く長波長(738nm)のZPLに集中しているので、量子通信用の単一光子源として適している。我々は結晶格子中の異なる位置のSiV-センターから放出される光子が識別できないことを示すHong-Ou-Mandel量子干渉の実験に成功した。さらに、ラムダ型遷移を用い、低温で光によって電子スピンを初期化するとともに、そのスピン格子緩和時間、コヒーレンス時間を測定し、重ね合わせ状態の生成の証拠となるCPT (coherent population trapping)を観測した。今までESRも観測されていなかったSiV-センター(S=1/2)がスピン量子ビットとして機能することを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、イオン注入によりNVセンターの配列を作製し、隣り合う電子スピン間の双極子双極子相互作用にもとづくコヒーレント結合した数量子ビットの量子レジスタの実現である。コヒーレンス時間内に多くのゲート操作を行うには、距離を短くして、強いコヒーレント結合によりゲート時間を短くすることが求められる。このような短い距離のNVセンター配列の作製技術として、位置精度の高い低エネルギー、およびナノホール配列のマスクを用いた窒素イオン注入によるNVセンター作製の開発が順調に進んだ。 量子情報デバイスに応用できる新しいカラーセンターの探索において大きな進展を達成することができた。量子中継器や量子テレポーテーションへの応用にとって重要な光子とスピンとのインターフェイスにおいてSiV-センターが極めて優れていることを見出した。異なる位置のSiV-センターからの光子のエンタングルメントに欠かせないHOM量子干渉の観測に成功し、またCPT(coherent population trapping)という重ね合わせ状態の生成に成功した。これらのPhys. Rev. Lett.に発表された2論文はいずれもViewpoint in Physicsに選ばれる [Andrew D. Greentree,“Viewpoint: Diamond and Silicon Get Entangled”, Physics, 7, 93 (2014)、Guido Burkard, “Viewpoint: Diamond Spins Shining Bright”, Physics, 7, 131 (2014))]とともに、2014年のViewpointのなかのHighlights of the Yearに“Useful Silicon Defects”として選ばれている(Physics, 7, 132 (2014))。
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Strategy for Future Research Activity |
NVセンターの単一の電子スピンは長いコヒーレンス時間(~ms)に加えて、スピンの初期化と読み出し・マイクロ波パルスによるスピン操作が可能な点で、室温動作の優れた量子ビットである。NVセンターをならべて多量子ビット化するには、単一スピンの回転操作は速い(~ns)ので、隣接するスピン間の双極子双極子相互作用による2量子ビットCNOTゲートの高速化が課題であり、短い距離の配列作製が必須である。我々は、まず、ナノホール配列を用いた低エネルギー窒素分子イオン注入において、ナノホール径・注入エネルギー・注入イオンのフルエンスを最適化する。その上で、1枚の基板あたり~10万をこえるナノホールを通した注入に、規則的なナノホール配列のメリットを活かした効率的な探索法を組み合わせることにより、3~5量子ビット量子レジスタとして特性の高い配列を探し出すことができると考えられる。この配列作製法に、12C濃縮基板の高純度化・成長表面の平坦化を含む高品位化、追成長・熱処理条件の最適化によるコヒーレンス時間の改善、さらに、表面処理による電荷の安定化を加える。 コヒーレンス時間の長い核スピンを量子ビットに用い、電子スピンを用いて初期化・読出し、2量子ビットおよび3量子ビットゲートの高速化を実現したハイブリッド型量子レジスタで3量子ビット量子エラー訂正を実証している(G. Waldherr et al., Nature 506, 204 (2014))。電子線照射およびイオン注入を用いて、このハイブリッド型量子レジスタの多量子ビット化も試みる。 SiV-センターをはじめ、NVセンター以外のダイヤモンド中のカラーセンターについても、量子情報素子への応用に適したカラーセンターを探索し、そのイオン注入による位置を制御した作製を試みる。
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[Journal Article] All-optical initialization, readout, and coherence preparation of single silicon-vacancy spins in diamond2014
Author(s)
Lachlan J. Rogers, Kay D. Jahnke, Mathias H. Metsch, Alp Sipahigil, Jan M. Binder, Tokuyuki Teraji, Hitoshi Sumiya, Junichi Isoya, Mikhail D. Lukin, Philipp Hemmer, and Fedor Jelezko
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Journal Title
Phys. Rev. Lett.
Volume: 113
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Multiple intrinsically identical single-photon emitters in the solid state2014
Author(s)
L. J. Rogers, K. D. Jahnke, L. Marseglia, C. Muller, B. Naydenov, H. Schauffert, C. Kranz, T. Teraji, J. Isoya, L. P. McGuinness, and F. Jelezko
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Journal Title
Nature Commun.
Volume: 557
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Array of bright silicon-vacancy centers in diamond fabricated by low-energy focused ion beam implantation2014
Author(s)
Syuto Tamura, Godai Koike, Akira Komatsubara, Tokuyuki Teraji, Shinobu Onoda, Liam P. McGuinness, Lachlan Rogers, Boris Naydenov, E. Wu, Liu Yan, Fedor Jelezko, Takeshi Ohshima, Junichi Isoya, Takahiro Shinada, and Takashi Tanii
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Journal Title
Appl. Phys. Express.
Volume: 7
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Isotopic identification of engineered nitrogen-vacancy spin qubits in ultrapure diamond2014
Author(s)
T. Yamamoto, S. Onoda, T. Ohshima, T. Teraji, K. Watanabe, S. Koizumi, T. Umeda, L. P. McGuinness, C. Muller, B. Naydenov, F. Dolde, H. Fedder, J. Honert, M. L. Markham, D. J. Twitchen, J. Wrachtrup, F. Jelezko, and J. Isoya
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Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 90
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] (111)基板上への化学気相成長時に形成されるNVセンターの配向度と極性2014
Author(s)
寺地徳之、J. Michl, S. Zaiser, I. Jakobi, G. Waldherr, F. Dolde, P. Neumann, M. D. Dopherty, N. B Manson, 磯谷順一, J. Wrachtrup
Organizer
第28回ダイヤモンドシンポジウム
Place of Presentation
東京電機大学東京千住キャンパス(東京都)
Year and Date
2014-11-19 – 2014-11-21
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[Presentation] SiV-センター:単一光子源から量子ビットへ2014
Author(s)
磯谷順一, 寺地徳之, K. D. Jahnke, L. J. Rogers, L. Marseglia, C. Muller, B. Naydenov, H. Schauffert, C. Kranz, L. P. McGuinness, F. Jelezko, A. Sipahigil, A.S. Zibrov, and M.D. Lukin
Organizer
第28回ダイヤモンドシンポジウム
Place of Presentation
東京電機大学東京千住キャンパス(東京都)
Year and Date
2014-11-19 – 2014-11-21
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[Presentation] ダイヤモンドへの低エネルギーSiイオン注入におけるSi-Vセンタ生成収率の評価2014
Author(s)
田村崇人, 小池悟大, 谷井孝至, 寺地徳之, 小野田忍, 大島武, Fedor Jelezko, E Wu, 品田賢宏, 磯谷順一, Liam P. Mcguinness, Lachlan Rogers, Christoph Muller, Boris Naydenov, Liu Yan
Organizer
第75回応用物理学会秋季学術講演会
Place of Presentation
北海道大学札幌キャンパス(北海道)
Year and Date
2014-09-17 – 2014-09-20
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