2015 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンド中のNVセンターのナノ配列作製による数量子ビット量子レジスタの実現
Project/Area Number |
26246001
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
磯谷 順一 筑波大学, 名誉教授 (60011756)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷井 孝至 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339708)
小野田 忍 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (30414569)
寺地 徳之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (50332747)
川原田 洋 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90161380)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ダイヤモンド / NVセンター / 量子レジスタ / 量子コンピューティング / イオン注入 / EBリソグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンド中の単一のNVセンターの単一電子スピンは、優れた特性(光で初期化・読出し、マイクロ波パルスによるスピン操作、長いコヒーレンス時間)を室温で発揮する固体量子ビットである。本研究の目的は、隣接するNVセンター同士が強くコヒーレント結合したNVセンター配列を12C濃縮・高純度結晶中に作製し、室温動作の量子レジスタを数量子ビットに拡張することである。 EBリソグラフイーで作製した規則的に並んだナノホールを持つレジスト・マスクを通した窒素分子イオン(15N2+、20keV)注入、熱処理(1000℃)によって、距離~13 nmのNVセンター配列を作製する技術を開発した。NVセンター配列は共焦点顕微鏡で読み取れるアドレスをもつ、規則的に並んだ蛍光スポット格子の個々のスポットとして観測される。注入ドーズとナノホール径を変えることにより、スポット当たりのNVセンター数のポアッソン分布の平均値(0.97~20)を制御できた。ODMR周波数の違いによって個々の電子スピンを識別できる2個、3個、4個の単一のNVセンター配列作製が確かめられた。 基板となるCVDダイヤモンド単結晶の高結晶化を進めたとともに、NVセンターの量子情報処理への応用において新規な手法の開発にも取り組んだ。まず、Eバンドのマイクロ波と3 Tの磁場を用いることにより、高磁場では単一NVセンターの14N核スピンのスピン格子緩和時間を一桁長くできることを示すとともに、RFパルスによる単一核スピンのスピン操作(ラビ振動)を行った。また、超伝導量子ビットとハイブリッド系をなすNVセンター・アンサンブル・メモリにおいて蓄積・読出しの効率の1桁以上の改善を示した。NVセンターの電子スピンのスピン・ロッキングを用いるHartmann-Hahn法を13C核スピン制御に用い、核スピン集団の効率的な高偏極化が得られることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レジスト・マスクのナノホールを通して、複数の窒素分子イオンを注入し、熱処理することによって作製された、NVセンター配列は共焦点顕微鏡の分解能では単一の蛍光スポットとなる。ナノホール径と注入エネルギーとから、NVセンター間の平均距離は~13 nmと見積もられる。レジスト・マスクに規則的な並びのナノホール配置を作製することにより、規則的に並んだスポットがひとつの試料に多数(~20万)作製される。H27年度までに、(1) NVセンター配列を構成するNVセンターの数(ナノホール当たり生成するNVセンターの数)はポアッソン分布に従うが、平均値(0.97~20)は注入ドーズ、ナノホール径により制御できること、(2)NVセンター配列からなるスポットが規則的な格子として並んでいることに加えて、共焦点顕微鏡で読み取れるアドレス(注入エネルギーとナノホール径の識別子になる)により、再度の熱処理や追成長後にも同じスポットの測定に容易に戻ることができること、(3)打ち込んだ窒素イオンからNVセンターへの変換効率は10%であること、(4)個々の電子スピンをODMR周波数の違いとして識別できる2個、3個、4個の単一のNVセンターからなる配列の作製が確かめられたことなど、「短いゲート操作時間をもたらす短い距離をもち、十分な数のNVセンターからなる配列」を作製することは達成された。 これらの配列が量子レジスタとして機能するには、コヒーレンス時間/ゲート操作時間の比を十分に高くする必要があり、H28年度はコヒーレンス時間の改善に取り組むことになる。 NVセンターの量子情報処理への応用のための新しい手法の開発においても進展が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
NVセンター配列を用いる量子レジスタ実現のキーポイントはコヒーレンス時間/ゲート操作時間の比を高くすることにある。ゲート操作時間を短くするには、隣り合うNVセンター同士が強い双極子双極子相互作用を持つ配列が欠かせない。ナノホールを通したイオン注入により、短い距離(平均~13nm)をもち、構成するNVセンターの数を2個から20個の広い範囲で制御することに成功している。ところが、コヒーレンス時間においては、12C濃縮結晶中に高エネルギー・イオン注入で深い位置(4 um)に作製した単一NVセンターのコヒーレンス時間(2 ms)や20 keV分子イオンのブロードビーム注入によって作製したNV-NVペアーのコヒーレンス時間(0.65 ms)にはるかに及ばない。 コヒーレンス時間を改善するために、炭素イオン共注入による収率の改善(余分な欠陥や注入窒素のうちNVセンターにならない割合を減らす)や追成長(~15 nmの深さに作製したNV配列を深くする)を試みる。また、~20万を超えるナノホールからなるレジスト・マスクを用い、規則的なスポット格子位置にNV配列を、アドレス付きで作製している。この多数のスポットのなかから、高性能の量子レジスタとして機能するNVセンター配列を高効率で探し出せる方法(測定の自動化、STEDを用いる探索)を導入する。STEDは光による個々の量子ビットの読出しにも用いる。 ナノホール注入により規則的な格子状に並んだNVセンター配列を作製しているが、規則的な格子状に並んだ浅い単一のNVセンターの作製も試みる。 H26年度に光子とスピンとのインターフェイスにおいて優れているSiVセンターの重ね合わせ状態を実証した。SiVセンターのイオン注入による作製の収率改善とともに、新規の単一光子源の探索も行う。
|
Research Products
(26 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Single spin optically detected magnetic resonance with 60-90 GHz (E-band) microwave resonators2015
Author(s)
Nabeel Aslam, Matthias Pfender, Rainer Stoehr, Philipp Neumann, Marc Scheffler, Hitoshi Sumiya, Hiroshi Abe, Shinobu Onoda, Takeshi Ohshima, Junichi Isoya, and Joerg Wrachtrup
-
Journal Title
Rev. Sci. Instrum.
Volume: 86
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Storage and retrieval of microwave fields at the single-photon level in a spin ensemble2015
Author(s)
C. Grezes, B. Julsgaard, Y. Kubo, W. L. Ma, M. Stern, A. Bienfait, K. Nakamura, J. Isoya, S. Onoda, T. Ohshima, V. Jacques, D. Vion, D. Esteve, R. B. Liu, K. Moelmer, and P. Bertet
-
Journal Title
Phys. Rev. A
Volume: 92
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Optically induced dynamic nuclear spin polarization in diamond2015
Author(s)
Jochen Scheuer, Ilai Schwartz, Qiong Chen, David Schulze-Suenninghausen, Patrick Carl, Peter Hoefer, Alexander Retzker, Hitoshi Sumiya, Junichi Isoya, Burkhard Luy, Martin B. Plenio, Boris Naydenov and Fedor Jelezko
-
Journal Title
New J. Phys.
Volume: 18
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Homoepitaxial diamond film growth: High purity, high crystalline quality, isotopic enrichment, and single color center formation2015
Author(s)
Tokuyuki Teraji, Takashi Yamamoto, Kenji Watanabe, Yasuo Koide, Junichi Isoya, Shinobu Onoda, Takeshi Ohshima, Lachlan J. Rogers, Fedor Jelezko, Philipp Neumann, Joerg Wrachtrup, and Satoshi Koizumi
-
Journal Title
Phys. Status Solidi A
Volume: 212
Pages: 2365-2384
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
[Presentation] 量子ビームを活用したダイヤモンド中のカラーセンター形成技術の現状2016
Author(s)
小野田 忍, 春山 盛善, 寺地 徳之, 磯谷 順一,小池 悟大, 東又 格, 稲葉優文, 山野 楓, 加藤 かなみ,Christoph Mueller, Liam McGuinness, Priyadharshini Balasubramanian, Boris Naydenov, Fedor Jelezko, 佐藤 真一郎, 大島 武, 加田 渉 花泉 修, 谷井 孝至, 川原田 洋
Organizer
物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学(宮城県仙台市)
Year and Date
2016-03-21
Invited
-
-
[Presentation] ダイヤモンドのNVセンターを用いる超高感度NMR2016
Author(s)
磯谷順一, 角谷 均, Jochen Scheuer, Ilai Schwartz, Qiong Chen, David Schulze-Suenninghausen, Patrick Carl, Peter Hoefer, Alexander Retzker, Burkhard Luy, Martin B. Plenio, Boris Naydenov, Fedor Jelezko
Organizer
第63回応用物理学会春季学術講演会
Place of Presentation
東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
-
-
[Presentation] 表面終端による浅いNVセンターの電荷状態2016
Author(s)
加藤 かなみ, 山野 颯, 蔭浦 泰資, 瀬下 裕志, 稲葉 優文, 東又 格, 小池 悟大, 谷井 孝至, 磯谷 順一, 寺地 徳之, 小野田 忍, 春山 盛善, 加田 渉, 花泉 修, 川原田 洋
Organizer
第63回応用物理学会春季学術講演会
Place of Presentation
東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
-
[Presentation] 表面終端と空乏層による 浅いNVセンターの電荷状態2015
Author(s)
加藤かなみ,山野颯,蔭浦泰資,柴田 将暢, 稲葉優文, 小池悟大, 谷井孝至, 磯谷順一, 小野田 忍, 寺地徳之, 川原田 洋
Organizer
第29回ダイヤモンドシンポジウム
Place of Presentation
東京理科大学葛飾キャンパス(東京都葛飾区)
Year and Date
2015-11-17 – 2015-11-19
-
[Presentation] keVからGeVのイオン注入を用いて形成したNVセンターの特性評価2015
Author(s)
小野田 忍,春山盛善,寺地徳之,磯谷順一,C. Mueller, L. McGuinness, P. Balasubramanian, B. Naydenov, F. Jelezko,小池悟大,東又格,稲葉優文,大島 武,加田 渉,花泉 修,谷井孝至,川原田 洋
Organizer
第29回ダイヤモンドシンポジウム
Place of Presentation
東京理科大学葛飾キャンパス(東京都葛飾区)
Year and Date
2015-11-17 – 2015-11-19
-
-
-
-
-
[Presentation] Fabrication of nitrogen-vacancy center array by electron-beam lithography and ion implantation2015
Author(s)
Godai Koike, Itaru Higashimata, Takuma Okada, Tokuyuki Teraji, Shinobu Onoda, Masafumi Inaba, Priyadharshini Balasubramanian, Boris Naydenov, Fedor Jelezko, Takeshi Ohshima, Takahiro Shinada, Hiroshi Kawarada, Junichi Isoya, Takashi Tanii
Organizer
Diamond Quantum Sensing Workshop
Place of Presentation
Kagawa International Conference Hall(香川県高松市)
Year and Date
2015-08-05 – 2015-08-07
Int'l Joint Research
-
-