2014 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解プラズモン励起発光イメージングを用いたノロウイルス検出システム研究
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26246008
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤巻 真 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究グループ長 (10392656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香川 景一郎 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (30335484)
谷口 孝喜 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (40094213)
染谷 雄一 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (50283809)
守口 匡子 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (60298528)
白土 東子(堀越東子) 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (60356243)
久保田 智巳 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (90356923)
芦葉 裕樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究員 (90712216)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオセンサ / 表面プラズモン共鳴 / 蛍光増強 / CMOSイメージセンサ / 時間分解測定 / 交差反応性抗ノロウイルスファージ抗体 / 抗体の結晶化 |
Outline of Annual Research Achievements |
システム開発では、蛍光標識として量子ドットを選択し、今回の検出目的に最適と考えられる波長特性を有する量子ドットを選定した。選定した量子ドットは紫外光励起で強く発光するため、紫外領域での表面プラズモン励起条件を確定し、検出システム全体の設計を行うと共に、光源の選択も行った。予定を前倒しして、センサチップ試作にも着手できた。また、時間分解測定用イメージセンサの諸元を決定するための基礎データとなる、分光感度を自動計測するシステムを構築した。また、画素サイズが縦5.6um×横11.2umのイメージセンサで時間分解能を計測し、立ち上がり・立ち下がり時間が1ns以下であることを確認し、本研究に適用可能であることを確認した。 プローブ開発では、抗ノロウイルスファージ抗体の中で、キャプチャー抗体として最も適していると考えられる交差反応性クローン12A11の大量発現・大量精製を行い、システム開発に供した。同時に、センサ抗体候補として、抗ノロウイルスウサギ抗血清中のIgG抗体を分離・精製することも行った。また、12A11のウイルス認識機構を原子レベルで解明する結晶構造解析を行うために必要な高純度の精製サンプル調製のため、12A11のFabドメイン(抗原結合ドメイン)の大腸菌による大量発現系の構築を行い、培養上清中に可溶性としてFabを発現している株を樹立することに成功した。さらに、ファージ抗体のエピトープを同定するためにチバ株およびナリタ株のVP1タンパク質を幾つかのドメインに細分化し、それぞれをSUMO融合タンパク質として発現させる大腸菌の系を作成した。また、ファージ抗体の性状解析として、宿主細胞上のウイルス吸着因子(血液型抗原)への結合阻害効果を評価した結果、ファージ抗体が、チバ株、ナリタ株だけでなく、他のノロウイルス株の血液型抗原への結合も阻害することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
システム開発においては、予定していた蛍光標識の選定、光源の選定、表面プラズモン共鳴励起層の材料選定を予定通りに進めることができた。さらには、V溝を形成する材料に合わせたV溝形状の設計も終え、予定を前倒しして、本開発システム用のセンサチップの試作に着手した。センサチップの1次試作も既に完了している。蛍光信号の時間分解測定を行うCMOSイメージセンサの開発においては、画素サイズに対する検討を終え、さらには、時間分解測定において重要な、立ち上がり・立ち下がり時間の検討も行うことができた。実際のウイルス検出時の蛍光色素からの蛍光強度がどれくらいになるかの見積りに不確定要素があり、露光時間及び画素数の決定は、次年度に持ち越すことになった。 プローブ開発においては、抗原側の発現は概ね良好であり、今後の検討に速やかに移行できる。抗体の性状解析で再現性のある安定した結果を得ており、これは、抗体作製系、ウイルス様中空粒子(VLP)作製系が安定して行えていることを指す。また、システム開発の検出試験に用いる各種抗体及びVLPを、要望に応じて提供できている。エピトープマッピングに必要な抗原発現の為の材料も整いつつあり、また、ファージ抗体と同じタイプの抗体の、ヒト生体内での誘導の有無を検証する実験系を確立したこともあり、概ね順調に進展している。 結晶構造解析においては、現在のところ、生産されたFabの抗原への結合活性や特異性解析には至っていない。その理由として精製用のFLAGタグが上手く機能せず、精製標品を得られていないことがある。しかしながら、可溶性画分として回収されているので、タンパク質のフォールディング自体には問題ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
システム開発では、選定した光源を備えたV溝プラズモンセンサ装置を試作し、試作済みのセンサチップを用いてノロウイルスの検出試験を行う。蛍光標識の蛍光寿命と試作したセンサチップ材料の自家蛍光の蛍光寿命の評価を行い、信号光と自家蛍光を最も効率よく分離できる時間分解測定における「窓」の設定を行うとともに、得られた条件をCMOSセンサ開発にフィードバックする。CMOSイメージセンサ開発では、要求される時間分解能、検出感度、画素数、フレームレートを満たすように、画素構造および増幅回路の設計を行う。CMOS高時間分解能を実現するために、単位画素の受光面積は1~2μm角程度に制限される。より大きい画素サイズが要求される場合、単位画素をサブ画素として複数並列に接続することで大面積化を実現する。検出感度とフレームレートはトレードオフの関係にあるため、一度に信号を読み出す画素数を増やすことで、これらを両立する回路アーキテクチャを設計する。また、時間分解CMOSイメージセンサを搭載したV溝プラズモンセンサにて、蛍光寿命によって自家蛍光と信号光の分離が可能なことを実証する。 プローブ開発では、市販のSPRセンサによる表面吸着測定系を立ち上げ、抗体のVLPに対する結合定数、解離定数の算出を試みる。さらには、抗体のウイルス認識の分子間相互作用を立体構造解析により評価する。精製系の確立後に結晶化を経てエピトープペプチドとの共結晶構造の決定を目指す。立体構造解析ができた場合には、エピトープ解析の情報を組み合わせて構造情報から結合予測モデルを構築、エネルギー計算を行いてモデルの検証と結合エネルギーを見積もる。得られた情報を基に、特異性向上や株間差異の少ない抗体になるようなアミノ酸置換をデザインすることを試みる。また、分担研究者の要望に随時速やかに応えられる様、各ファージ抗体の大量発現・大量精製を継続的に行う。
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Research Products
(4 results)