2015 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解プラズモン励起発光イメージングを用いたノロウイルス検出システム研究
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26246008
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤巻 真 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究グループ長 (10392656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香川 景一郎 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (30335484)
谷口 孝喜 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (40094213)
染谷 雄一 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (50283809)
守口 匡子 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (60298528)
白土 東子 (堀越東子) 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (60356243)
久保田 智巳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (90356923)
芦葉 裕樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究員 (90712216)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオセンサ / 表面プラズモン共鳴 / 蛍光増強 / CMOSイメージセンサ / 時間分解測定 / 交差反応性抗ノロウイルスファージ抗体 / 抗体の結晶化 |
Outline of Annual Research Achievements |
検出システムの開発では、選定した蛍光標識及びセンサチップ基板材料に対して、蛍光寿命(LT)測定を行い、蛍光標識による蛍光信号と基板の自家蛍光をLTの違いを用いて分離することを試みた。選定した基板材料のLTは5ns程度であり、選定した5つの蛍光標識のLTは、最も短いもので21.2ns、長いものでは131nsであり、信号分離が十分に可能であることを確認した。開発したノロウイルス検出システムにおいて、蛍光波長625nmの蛍光標識を用いて時間分解画像取得に成功した。プローブ抗体として12A11 を用いて、0.1 ng/mlのウイルス様粒子検出に成功した。 プローブ開発では、12A11に加え、プローブ抗体の候補となりうる他の5抗体について、各抗体が認識するエピトープ部位の関係をエピトープブロッキングELISA法で検討した。また、これらのエピトープ領域を同定するため、サブドメイン毎に分割したキャプシドタンパク質(VP1)の大腸菌による発現系を構築した。12A11の結晶構造解析を行うために現状一本鎖である12A11抗体を安定性の高い二本鎖のFabに組み替えた。発現系も大腸菌から酵母に変更、一本のポリペプチド鎖から宿主の内在性プロテアーゼでの消化で二本鎖のFabとして分泌される系を立ち上げた。発現させたFabの抗原との結合性を確認することができた。また、藤田保健衛生大学で得られた3種の遺伝子に対し、各抗体分子のC末端にStrepタグを付加した遺伝子を作成し、大腸菌での発現を試みた。また、宿主細胞上のウイルス吸着因子(血液型抗原)への結合阻害効果の評価を行った結果、10遺伝子型10株に対する阻害効果の評価を達成した。交差反応性の高いファージ抗体は、他の遺伝子型株の血液型抗原への結合も阻害した。一方、交差反応性の低い抗体は、他の遺伝子型株の血液型抗原への結合は阻害しないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本開発では、ノロウイルス検出システムの開発において、時間分解イメージング技術を用いた高感度なシステムの構築を目標としている。これまでに、時間分解測定法を用いることによってノイズとなる基板からの自家蛍光と、蛍光標識からの信号光とが、明確に分離可能であることを確認することができ、本手法の有効性を確認できている。また、実際の時間分解イメージの取得、ウイルス様粒子(VLP)の高感度検出の実証にも成功しており、目標に向かって順調に研究を進めることができている。 プローブ開発では、いずれもGII内交差反応性である12A11と12B10のエピトープは一部重複しているが、それらとGII.4特異的抗体12A2のエピトープは独立している可能性が高いこと、また、GI-GII間交差反応性抗体CV-1A5とGI内交差反応性抗体CV-2F5とのエピトープは重複しているが、GI.4特異的抗体CV-1A1のそれとは独立している可能性が高いことが判明した。また、サブドメイン毎に分割したVP1の大腸菌による発現にも着手し始めた。このように、抗体の性状解析において再現性のある安定した結果を得ている。これは、VLP作製系が安定して行えていることを指す。結晶構造解析では、結晶化を目指して二本鎖抗体としてのFabを精製、予定通り結晶化実験に着手することができた。現在、発現精製量のスケールアップ、特に培養情勢からの効率の良いキャプチャー方法の改善と発現コンストラクトの微調整に取り組んでいる。また、簡便に大腸菌からヒト型抗体分子を得る目的を達成することができた。今後、より多くの抗体を発現、回収できるよう検討したい。このように、プローブ開発におけるこれらのエピトープ解析、結晶構造解析を通じて、より広い交差反応性とより高いアフィニティーを持ったプローブ開発が期待できる状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究開発から、表面プラズモン共鳴を用いた電場増強による高感度生体物質検出技術、時間分解イメージング技術及び抗体開発技術の融合により、高い感度でのノロウイルス検出を実施できるベースが完成した。これらの技術を組合せ、複数の型のウイルス様粒子(VLP)の高感度検出実証実験を行っていく。 システム開発では、より高感度な検出を目指して、昨年度判明したCMOSイメージセンサのマイクロレンズの形状不良による低感度の問題を解決するために、マイクロレンズ形状の改良を行う。また、暗電流を低減するために冷却機構を組み込んだカメラを構築する。これらの対応により、微弱な蛍光であっても長時間露光により高感度に検出できるカメラシステムを実現する。また、システム側にゲート動作が可能なイメージインテンシファイアを導入して、簡易時間分解イメージング機能を付与し、装置の簡素化を図る。 検出プローブとなる抗体については、より広い交差反応性を示す高親和性抗体の開発を継続する。大腸菌のコドンに至適化した抗体遺伝子を合成し、大量発現・精製系を構築する。得られた抗体標品の反応性をVLPやカプシドタンパク質の各サブドメインに対して確認し、VLPに対する結合定数、解離定数の算出を行う。また、サブドメイン毎に分割したカプシドタンパク質を大腸菌で発現させ、精製し、エピトープ解析の抗原として用いる。さらに、scFv型の12A11抗体をより安定性の高いFab型へ変換して発現させ、精製を行う。得られた精製標品の抗原結合性の評価を行い、結晶化実験を実施し、X線結晶構造解析へ繋げる。 以上より得られた検出装置及び抗体を組合せて、実サンプル測定の実証試験を行うため、ヒト血漿に加えた複数種の低濃度VLPの検出試験を実施する。
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