2016 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ複合構造体の生成と超広帯域周波数分散特性による診断
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26246035
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
酒井 道 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (30362445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新戸 浩幸 福岡大学, 工学部, 教授 (80324656)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プラズマ / メタマテリアル / マイクロ波 / テラヘルツ/赤外材料・素子 / 微粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、mmからμmスケールでの粒子とその複合体を設計・作製し、電磁波に対して高機能性を持つ荷電粒子集団「メタプラズマ」としての集合体診断においてkHz帯から赤外光域にわたって周波数スペクトル取得を行っている。最終的にはマルチスケール性をもち超広帯域周波数分散スペクトルを示すメタプラズマの実現を目指している。 今年度は、マイクロ波帯での検討に関しては、周波数分散性に関わり、高効率な2倍高調波生成とプラズマ生成との詳細な関連を明らかにした。すなわち、伝搬してきたマイクロ波が、メタマテリアル(2重分割リング共振器)部においていったんエネルギー的に蓄えられて、高プラズマ密度状態・負誘電率状態・高エネルギー状態の実現に至ったことが明らかとなった。つまり、本研究におけるメタマテリアルの役割として、透磁率を負とするだけでなく、伝搬電磁波のエネルギー・コンデンサーの役割を果たしていることがわかり、固体メタマテリアル研究に対しての差別化が成り、かつ進歩性を持った機構が存在することが指摘できた。 また、数μmオーダーの粒子に対しての帯電処理およびその集団周波数スペクトル測定を継続している。真空中での電子ビーム照射による電荷付与に加え、今年度は摩擦帯電現象による正負の電荷付与に成功し、合わせて表面電位が取得可能な顕微システムにより、ここの微粒子の正電荷・負電荷量付与の診断サンプル数を大幅に増加させ、微視的かつ統計的なデータ取得に成功した。結果として、用いているフッ素樹脂コートの微粒子は負電荷を帯びやすいものの、対照となる正電荷も同様に付与されることが確認できた。また、数Hz~数MHzの交流電場下における帯電粒子懸濁液の挙動について、理論モデルの構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画に掲げていた、項目はすべて達成しており、さらに新規の成果を得ることができた。周波数帯としては、本研究で提唱するプラズマ複合構造体「メタプラズマ」について、すでにkHz帯およびマイクロ波帯の周波数スペクトルの取得に成功し、周波数分散性の解析とその応用性に着目した研究を加速している。さらに、高エネルギー性を備えるメタマテリアル、という新たな着眼を得るに至り、より大きなテーマへと展開している。 特に、昨年度までの検討で、マイクロ波帯のプラズマ複合構造体の特性として、非常に高効率な2倍高調波生成が生じるモデル提案に成功し、その機構には周波数依存はなく、広く広帯域の電磁波に適用可能であることがわかっていたが、今年度はそれがプラズマ生成現象と関連して、マイクロ波からプラズマ状態・そして高調波生成という一連のエネルギー変換過程で説明できることを明らかにした。今後は、この現象の高周波化において、技術的に困難なミリ波やテラヘルツ波の逓倍デバイスという応用分野をにらんで、広帯域周波数分散素子としてのポテンシャルを実証するとともに、当初の計画以上に「高エネルギーメタマテリアル」という新たな概念の提唱を行っていく。 また、微粒子への電荷付与による「メタプラズマ」化に関しては、今年度は正電荷と負電荷の同時付与にも成功したことで、正電荷粒子・負電荷粒子の混成体として、新たな「メタプラズマ」状態の実現にさらに一歩近づいたと言える。微粒子上のエレクトレット性(半永久的な電荷付与現象)の微視的な診断の成功は、本研究が世界に先駆けた成果と言える。 以上の成果を統合して、「メタプラズマ」というプラズマ複合構造体を実現し、「高エネルギーメタマテリアル」という新たな概念提案に至り、これまでのプラズマ理工学の大幅な拡張性を提案する検討を続けており、最終年度の成果の集大成を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更は無く、交付申請書に記載の内容を遂行するとともに、より発展的な研究展開を行う。 特に、検討内容として、プラズマ複合構造体による高調波生成と総合的なメタマテリアル特性の解明を行う。高調波生成現象は、課題題目の超広帯域周波数分散特性の重要性を示す格好の応用ターゲットであり、かつプラズマを用いたメタマテリアル現象「メタプラズマ」が他の固体メタマテリアルとの異なり特異な高エネルギー性を持つことの重要性の指摘にもつながる。 また、正負の帯電微粒子の生成が実験的に可能となったため、大きな目標として、「メタプラズマ」の固体・液体・気体類似状態の実現へ向けた検討を行う。そして、微粒子上への表面修飾の手法確立を行い、特に自己組織化現象による表面修飾過程について、そのメタマテリアル特性発現の機構解明を行う。 これらの成果は、招待論文2報、著書執筆2件により取りまとめ予定(先方よりの依頼に承諾済み)であり、通常の論文・学会発表とあわせて成果の社会発信にも取り組む。
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Research Products
(7 results)