2014 Fiscal Year Annual Research Report
LHC13TeV陽子衝突での超前方粒子生成とファイマンスケーリングの研究
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26247037
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 好孝 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50272521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛受 弘彰 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10447849)
増田 公明 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (40173744)
さこ 隆志 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 講師 (90324368)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 素粒子実験 / 実験核物理 / 加速器実験 / 国際研究者交流 / LHC / CERN / RHIC |
Outline of Annual Research Achievements |
LHC13TeV陽子陽子衝突でのデータ取得を目指し、検出器の高耐放射線化を中心とした改造を行うなどの実験を準備をおこなった。放射線に弱いプラスチックシンチレーター層を薄板GSO結晶シンチレーターに、シンチレーティングファイバーを使った位置検出層を、1mm角極細GSO結晶を並べたGSOホドスコープにそれぞれ交換した。この新しい検出器の較正と基本性能の評価のために、放医研HIMACでの重イオンビームとCERN・SPS加速器での高エネルギー電子・陽子ビームによるテスト実験を行った。その結果、エネルギー分解能、位置分解能共に、従来の検出器と同等もしくはそれを上回る性能を確認した。 また、エネルギー測定精度を向上するために、GSOシンチレーター層を読み出す光電子増倍管の温度特性と検出器内での温度分布を詳しく測定し、温度変化による検出器のエネルギー測定精度の向上を行った。これらの較正のために、光量安定度に優れた半導体レーザーを導入し、各光電子増倍管の増幅度を1%の精度で評価するシステムを開発し、温度特性の評価に用いると共に、較正実験及び陽子陽子衝突中の安定度をモニターする仕組みを整えた。 LHCで取得済みのデータ解析を進め、7TeV陽子陽子衝突での超前方中性子測定と高エネルギー領域に拡張した中性パイ中間子測定の解析をすすめた。また核子あたり5TeV陽子ー鉛原子核衝突から中性パイ中間子測定による超前方粒子生成による原子核効果の結果を論文発表し、宇宙線のハドロン相互作用モデルは概ね実験データを再現していることがわかった。 またLHCよりも低衝突エネルギーの条件で同様の横運動量範囲を測定できるRHIC加速器での超前方測定について検討し、実験計画を立案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線耐性に優れたGSO結晶シンチレーターを用いたエネルギー測定層、および位置検出層の開発と実装を成功させ、ビームテストにより測定性能に問題がない事を確認した。これにより13TeV陽子陽子衝突での予想放射線被ばく量に対して検出器の性能劣化の心配がない準備を行う事ができた。また、光電子増倍管の温度特性がエネルギー測定精度の悪化と要因となっていた事をつきとめ、較正方法を確立する事ができた。以上の事から目標とする13TeV陽子陽子測定の準備は予定どおり完了する事ができた。 また、取得済みデータの解析も順調に進み、初めて原子核効果の測定の結果が出版された他、超前方中性子測定、高エネルギー中性パイ中間子測定などについても出版準備を進める事ができた。 以上の事から計画は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は13TeV陽子陽子衝突データの解析を進め、検出器の特性を正しく理解し入念な較正作業を行って, 最大限の測定精度を引き出した上で解析を行っていく。これまでのような超前方エネルギースペクトル測定のみならず、ATLAS中央検出器との連携解析などにより、超高エネルギー宇宙線のハドロン相互反応の解明により包括的なアプローチを行っていく。また、RHIC加速器での測定計画立案や空気シャワーシミュレーションへのフィードバックなど、LHCでの研究成果をより発展的なものとする活動を行っていく。
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