2015 Fiscal Year Annual Research Report
LHC13TeV陽子衝突での超前方粒子生成とファイマンスケーリングの研究
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26247037
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 好孝 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50272521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛受 弘彰 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10447849)
増田 公明 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (40173744)
さこ 隆志 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 講師 (90324368)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 加速器実験 / 国際協力 / 実験核物理 / 素粒子実験 / 国際研究者交流 / ラージハドロンコライダー / CERN |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年6月に、LHC13TeV陽子陽子衝突でのデータ取得を成功させた。今回のデータ取得では、ATLAS実験との連動データ取得を実施した。概ね10の29乗 cm2毎秒の衝突輝度でほぼ24時間分のデータを取得し、約4000万個のシャワー事象と約50万個の中性パイ中間子を収集できた。 また、取得済みの7TeV陽子陽子衝突データの解析を進め、エネルギースケールの系統誤差の再評価を行い、光電子増倍管の温度特性の補正等により、エネルギースケールの系統誤差をほぼ半分にする事に成功した。これらの知見は、13TeV陽子陽子衝突の解析にも適用し系統誤差の低減につながっている。 また、7TeV陽子陽子衝突での超前方中性子エネルギースペクトルの結果を出版した。その結果、従来のハドロン相互作用モデルでは再現できない高ファイマンX領域での超過があることがわかった。一方、2本のガンマ線がひとつのカロリメーターで検出されるTypeII中性パイ中間子の測定結果をまとめ、高エネルギー領域でのエネルギースペクトルを明らかにした。 本研究において明らかになった超前方スペクトルデータと各ハドロン相互作用モデルとの不一致が、特に中性子においてエネルギー依存性をもっている事がわかってきた。これを詳細に調べるために、これまで取得済みの0.9TeV、 2.76TeVでのデータ解析も進めると共に、RHIC加速器での0.5TeV陽子陽子衝突での超前方測定の計画を進め、0.5-13TeVの幅広い衝突エネルギーでのファイマンスケーリングの検証計画について検討を行った。 これらの結果を国内外の専門家と議論し、また成果を世界に発信するためにHESZ国際会議を2015年9月に開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の目標であった13TeV陽子陽子衝突データの取得を成功裏に終え、オプションであったATLASとの連動データ取得も成功させる事ができた。また、取得済みの7TeV陽子陽子衝突データの解析から、超前方中性子スペクトルの導出や、Type-II 中性パイ中間子再構成の成功など、着実に成果が上がっている。一方で、マンパワー不足の問題から13TeVデータの解析の進展に少し時間がかかっている部分がマイナス要因であるが、初期結果はすでに発表しており、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
LHC13TeV陽子陽子データの解析を進め、論文成果の発表を加速する。現在準備中の13TeV衝突でのガンマ線エネルギースペクトルの測定結果に加え、13TeV衝突での中性子データ、中性π中間子データの順に測定結果を明らかにし、7TeV衝突データ等、他の衝突エネルギーデータとの比較を行って、ファイマンスケーリングの検証を行う。 エネルギー依存性の検証の精度を高めるため、RHIC加速器での0.5TeV陽子陽子衝突データ取得の検討と準備を行う。また、原子核効果におけるエネルギー依存性の検証を行うため、2016年度に実施予定のLHCでの核子あたり10TeVの陽子~鉛衝突データ取得を行う。 これらの成果を世界に発信するために、超前方散乱に関する国際会議を日本で開催し、研究成果の発信と議論を行う。
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