2015 Fiscal Year Annual Research Report
気球搭載型エマルションガンマ線望遠鏡による宇宙線加速天体の精密観測
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26247039
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
青木 茂樹 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80211689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 敏行 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50345849)
長縄 直崇 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 研究員 (60402434)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙線 / X線γ線天文学 / 原子核乾板 / エマルション / 宇宙線加速源 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年5月に、JAXA宇宙科学研究所大気球実験室が立ち上げるオーストラリア気球実験の最初の実験として気球観測を行った。 タイムスタンパー部である多段シフターは2011年の気球実験の約30倍の大面積化を図り、望遠鏡の口径面積を0.38m2に拡大することに成功した。また、低温低圧の気球フライト環境でも高速動作(500μm/秒)を可能とする改良に成功し、パルサーの位相分解を可能とする数ミリ秒の時間分解能を実現する見通しを得た。 コンバーター部、タイムスタンプ部、カロリーメーター部はそれぞれに真空パックすることにより観測期間中のフィルム相互の位置関係を堅持し剛性向上をはかるとともに、フェーディング抑制のための低湿度状態の保持、遮光・防水も確実に行えることになった。他方で、この真空パックの効果を約5hPaとなる水平浮遊高度でも保持するため、与圧容器を導入した。観測器上方に位置する与圧容器の物質による一次宇宙ガンマ線の吸収や宇宙線相互作用による二次ガンマ線の発生を極力抑えるため、ATIC気球実験での薄シェル付風船式圧力容器を参考にして、観測器上方の物質量を約0.1g/cm2に抑えつつ外気との差圧300hPaを維持できるような与圧容器を開発・製作した。 観測直前のフィルム前処理と真空パック、さらに回収後のフィルムの現像処理をオーストラリア国内で行うために、シドニー大学グループからスペースおよび光熱・水道および排水処理に関する協力を得て、日本から運んだ資材でこれらの処理を行う施設を立ち上げた。 以上のような準備に基づき、5月12日にVelaパルサーが視野を横切る時間帯約6時間をほぼカバーする11時間30分の観測が実現でき、迅速な回収にも成功し、現像処理も予定通りに行うことができた。名古屋大学の超高速全自動飛跡読取装置による飛跡読取も予定通り12月末にほぼ完了し、現在解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で不可欠な気球実験および観測器の回収に成功し、さらにオーストラリアでのフィルムの現像も予定通り完了した。シドニー大学での前処理を行ってから気球打ち上げ基地までの輸送および観測器回収基地から現像処理を行うシドニー大学までの輸送に関しては、低温に保持してすみやかに行う必要があったために、日本からオーストラリアへの輸送を担当した業者を通じて冷蔵トラックでの輸送を手配してあったが、日本国内のような輸送ネットワークは確立されておらず、オーストラリア国内での輸送の見通しが一時的に立たなくなった。これに対して、現地の協力機関の紹介により、保冷剤を補給しながら通常のトラックでの輸送をチャーターすることができ、スケジュールを遅らせることなくオーストラリア国内での輸送を完遂した。 名古屋大学の超高速全自動飛跡読取装置による飛跡読取については、約500枚のフィルムの全面を顕微鏡でスキャンするために、1枚あたり9ないし12回にわたってセッティングを変えながらスキャンを行う必要があったが、神戸大学をはじめとして研究グループのメンバーが交代で名古屋大学に出張することによって、予定通り12月末にほぼ完了させることができた。 現在、フィルム間のアライメントの精密化および飛跡の再構成条件の最適化を行いつつガンマ線事象の抽出アルゴリズムを磨き上げている。解析結果を大きく左右する個々のフィルムの飛跡検出効率が、フィルム間のバラつき無く均一で狙い通りの性能を発揮していることが確認できている。並行してタイムスタンパ部の解析、姿勢モニター部のスターカメラの解析も進んでおり、Velaパルサーを十分な有意度で観測できる見通しが得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、2015年に実施したオーストラリア気球実験のデータからVelaパルサーのイメージングを行い、ガンマ線望遠鏡として旧来の観測機器に較べて桁違いに高い解像度が得られることを実証するデータを示す。 今後の本格的な科学観測の開始には、大面積化・長時間化によるガンマ線観測量の増大が不可欠である。このためにさらに大面積で軽量化をはかった望遠鏡の開発・製作を推進する。このうちフィルムの読取に関しては、口径面積10m2のコンバーター部100枚分の総面積に対して、現行システムでも1~2年程度の期間で完了できる見通しが得られており、さらなる高速化を目指した開発も始まりつつある。 総重量の増大を抑えての大面積化に不可欠な軽量化のため、多段シフター機構部について現在の金属板ステージを廃して、遮光パックした大判のフィルムを両側のローラーで引っ張って動かす機構を採用する。このローラー方式によりコンバーター最下流とシフター最上段、およびシフターの各段間のギャップを無くすことで、フィルム間のつなぎ精度を上げて、時間分解能の向上と長時間化への対応を図る。現在約1m2の口径面積のプロトタイプを製作してテストを始めており、このプロトタイプでのテスト結果および2015年の気球実験の経験から得られた大面積化にむけての改善課題に基づき実機の設計に着手する。
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[Journal Article] Development of new-type nuclear emulsion for a balloon-borne emulsion gamma-ray telescope experiment2015
Author(s)
K. Ozaki, S. Aoki, K. Kamada, T. Kosaka, F. Mizutani, E. Shibayama, S. Takahashi, Y. Tateishi, S. Tawa, K. Yamada H. Kawahara, N. Otsuka, H. Rokujo
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Journal Title
Journal of Instrumentation
Volume: 10
Pages: P12018, 0-10
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Remarks] http://neweb.h.kobe-u.ac.jp/labo/aoki/naiyou.html
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[Remarks] https://www.h.kobe-u.ac.jp/ja/node/3497
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[Remarks] http://flab.phys.nagoya-u.ac.jp/2011/appli/graine/