2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26247043
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
橋本 省二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (90280510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深谷 英則 大阪大学, 理学研究科, 助教 (70435676)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 格子ゲージ理論 / B中間子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、格子ゲージ理論の大規模シミュレーションにより、DおよびB中間子の崩壊定数および形状因子を5%以内の高精度で決定し、SuperKEKB実験などによる素粒子標準模型の精密検証、さらには標準模型を超える現象探索に寄与することを目的としている。そのために、格子上でカイラル対称性を保つ理論定式化を用いた大規模シミュレーションを複数の格子間隔で実行し、連続極限への外挿を行うことで、各種の系統誤差を制御した計算を実現する。前年度までの研究により、必要な格子真空のデータは生成済みであり、それらを用いた物理量計算を本格的に行っている。格子真空のデータは重いクォークに対する離散化誤差を抑えるために通常よりも小さな格子間隔 (a ~ 0.080 fm から 0.045 fm)をもち、もっとも軽いクォーク質量に相当するデータは 230 MeV のパイ中間子質量に相当する。 平成28年度には、崩壊定数の計算においてDからB中間子へのクォーク質量の外挿をどのように制御するかに関わる研究、D中間子のセミレプトニック崩壊形状因子の計算に加えて、QCDの短距離相関関数を直接実験と比較検証する手法に関わる研究、量子色力学の真空を特徴付けるカイラル凝縮の決定など研究を行った。 D中間子の崩壊定数の計算では 1% 程度の誤差での計算が可能となったが、これをさらに重いクォーク質量に外挿する際には系統誤差が増大することがわかっている。重いクォークの有効理論を援用することでこれをどれだけ抑えることができるかを詳細に検討した。 また、本研究の発展的応用として、B中間子のインクルーシブ崩壊振幅を計算する手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
基礎となる格子データの生成を完了し、重いクォークを含む物理量の計算を進めつつあり、研究はおおむね計画通りに進展している。また、インクルーシブ崩壊の計算は、当初はアイデア自体が存在していなかったもので、本研究計画を基盤として分野を発展させる新しい展開につながると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
重いクォークに付随する系統誤差を考慮した物理量の外挿などの問題も残っており、今後の研究で解決していきたい。また、セミレプトニック崩壊の計算をD中間子からB中間子へ拡大して実行する計画である。
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Research Products
(11 results)