2014 Fiscal Year Annual Research Report
r-過程元素組成比における第3ピーク滞留核近傍核のベータ崩壊様式研究
Project/Area Number |
26247044
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
鄭 淳讃 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 協力研究員 (00262105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 賀一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (30391733)
宮武 宇也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50190799)
石山 博恒 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (50321534)
渡邉 裕 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (50353363)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2017-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / ベルギー / 元素合成 / レーザー共鳴イオン化 / アルゴンガスセル |
Outline of Annual Research Achievements |
金、ウラン等の重元素を合成する速い中性子捕獲過程の起源となる天体環境の解明を目指し、中性子数N=126の安定閉殻の精密ベータ崩壊核分光実験を行う。そのため、多核子移行反応で生成される希少原子核を高速かつ高効率で分離、収集可能な単一原子核ビーム生成用ガスセル、寿命測定用のベータ崩壊測定用検出器の整備を行った。ガスセル内に設置したフィラメントから蒸発した中性原子の鉄(Z=26)、イリジウム(Z=77)を用いたオフライン試験と、理化学研究所の加速器から供給されたキセノンビームを用いて、ガスセルシステムの性能試験を26年度に行った。 20pnAのキセノンビームをガスセルに打ち込んでも、引出効率0.2%、ビーム純度98%を達成することができ、本研究の遂行が可能となった。ただし、レーザー共鳴イオン化した原子は、アルゴンガス中の不純物と分子イオンを形成し、単体イオンとして存在する確率が低下していることが判明した。198Pt標的を使用した加速器実験では、198Pt+:198Pt H2+:198PtH2O+:198PtAr2+=1:1:1:6の比率で分子イオンを形成しており、198Pt+は1/9しか存在しない。引出し効率の向上化を目指して、イオンを高周波でトラップして輸送するSPIGの改良を行った。SPIGにDC電場を印加しイオンを加速することで、アルゴン原子と衝突させて分子インを解離し単体イオンとしての存在比を改善することができ、ほぼ198Pt+のみを引き出すことに成功した。 136Xeビームを使ったオンライン試験で短寿命核199Ptの引出しに成功し、ベータ崩壊の寿命を測定することに成功した。27年度の7月、9月に136Xeビームで加速器実験を行い、寿命測定を進めて行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度は、本研究で予定している136Xeビーム(核子当たり10.8MeV)を198Pt標的に照射し、レーザー共鳴イオン化した198Pt+を引き出すことで、アルゴンガスセルの性能をオンライン試験で評価した。20pnAのキセノンビームをガスセルに打ち込んでも、引出効率0.2%、ビーム純度98%を達成することができ、本研究の遂行可能であることを明らかにした。短寿命核199Ptを原子核反応で生成し、レーザー共鳴イオン化して引き出した後、ベータ崩壊の寿命測定に成功した。 引出したイオンは、アルゴンガス中の不純物と分子イオンを形成しており、引出し効率の低下の原因となっていた。イオン引出し光学系のSPIGの構造を改良し、DC電場を用いることで分子を解離して、単一イオンとしての引出し効率を向上させることにオフライン試験で成功した。今後のオンライン試験でも効率向上が期待でき、寿命測定を効率良く行える。 希少反応生成物のベータ崩壊寿命を測定するために不可欠な低バックグランドのベータ線検出器を製作・試験し、性能を評価した。寿命測定を行うためには、引出させる短寿命核ビームの強度よりも検出器のバックグラウンドを下げる必要がある。これまでの検出器では0.7cpsであり、安定核に近い領域のベータ崩壊の寿命測定が可能であったが、より遠い領域の寿命測定を行えるように0.1cps以下を達成できる検出器を開発した。これにより、新たに10種類程度の核種の寿命測定が可能となる。 レーザー共鳴イオン化を効率よく行えるイオン化様式の探索を行うために、同位体分離(質量数分離)可能なオフライン試験用の装置を設計し、製作した。現在は同位体分離を行うために、装置の調整を行っている。この装置が完了した後、Pt, Os, W, Taのイオン化様式を探索する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
安定核より少し遠い領域で新たに10種のベータ崩壊寿命測定を可能とする低バックグラウンド毎秒0.1個以下の検出器を開発した。更に遠い領域に到達するために、ベータ線検出用のガス検出器を開発する予定である。これによりバックグラウンドは毎時1個まで劇的に減らすことができ、新たに20種類以上の核種の寿命測定が可能となり、本研究で対象としている滞留核近傍のベータ崩壊測定を可能とする。 原子核反応で生成された核子当たり1MeV程度の短寿命核を効率よくガス中で捕集するために、一気圧に近いアルゴンガスを使用する。そのため目的の元素のレーザー吸収幅はアルゴンガスとの衝突によりレーザーの線幅よりも10倍近く広がっており、レーザーイオン化の効率が10%以下になっている。それに合わせてレーザー波長を光変調器またはレーザー本体の共振器により広げることで、イオン化効率の向上を目指す。また現有のレーザーは25年前の物であり、当初の性能の20%程度のレーザー強度しか得られない。27年度は、色素レーザーを新たに購入し、レーザー強度の増大およびレーザー幅を広げて、イオン化効率の向上を図る予定である。 26年度に製作したイオン化様式探索装置で同位体分離を可能にし、これまで効率の良いイオン化様式が発見されていないPt, Os, W, Taのイオン化様式を探索する。 27年度の7月、9月には加速器を用いたオンライン試験が予定されており、本実験で10個程度の短寿命核の寿命を測定する予定である。
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Research Products
(5 results)