2014 Fiscal Year Annual Research Report
量子スピン系のボース・アインシュタイン凝縮とスーパーカレント
| Project/Area Number |
26247058
|
|---|
| Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
|---|
Principal Investigator |
田中 秀数 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (80188325)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 伸之 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80566737)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
| Keywords | ボース・アインシュタイン凝縮 / スピンダイマー系 / スーパーカレント / フラストレーション / トリプレットの結晶化 / 強磁場 / キタエフ模型 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
H26年度はボース・アインシュタイン凝縮（BEC）を起こす2次元的物質K2CuF4とRb2CuF4の純良単結晶育成に成功した。続いて，スーパーカレント観測用のリング状試料を作成するためのPt容器の工夫を行った。また，3次元的BECを起こすTlCuCl3のリング状試料の作成を行い，不完全ながらもリング状試料を得た。
26年度はBECを起こす新物質開拓も鋭意行った。その結果，化学式Ba2CoSi2O6Cl2で表されるダイマー化合物を発見した。これはこれ迄に報告がない新物質である。まず，Ba2CoSi2O6Cl2の結晶構造を決定し，磁化率，比熱，及び強磁場磁化測定を行った。そして，磁化曲線は磁場の方向によらずスロープがなく階段的で，飽和磁化の1/2の位置にプラトーがあることを見出した。全てのスピンダイマーが結晶学的に等価であることから，この1/2プラトーはダーマー間相互作用の完全なフラストレーションのために，スピンダイマーのトリプレット状態（トリプロン）が完全に局在し，互いに及ぼし合う斥力のために周期的に配置する結晶状態を形成するために生ずるものであることを示した。これはBECと対極をなす現象で，理論的には考えられていたが，実験で観測されるのは，直交ダーマー系とよばれる別のフラストレート系SrCu2(BO3)2を除けば初めてであり，貴重な実験例である。
更に，蜂の巣格子をもつスピン1/2のRuCl3について，顕著な量子効果が期待できることを予想し，単結晶育成と各種測定を行った。得られた実験結果とその解析を論文として発表した。この物質は基底状態がスピン液体状態になることが厳密に示されているキタエフ模型との関連で大変注目されていて，学外からの共同研究の申し入れが多数寄せられている。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BECに伴うスピンスーパーカレントの観測実験は予定より少し遅れているが，BECの対極をなすトリプレットの結晶化を示すフラストレーションが完全な物質を発見したことは大きな成果であった。また，近年注目を集めているキタエフ模型に関係する物質RuCl3の磁性に関する研究を行い，論文として発表し，注目を集めたことも大きな成果である。
|
| Strategy for Future Research Activity |
スピンスーパーカレントを観測するためにリング状試料を作ることも必要であるが，平板状結晶に金蒸着で実効的にリングを作ることがより効率的であることが予想されるので，その方法を今後試みる。
トリプレットの結晶化を示すBa2CoSi2O6Cl2において，ダイマー間相互作用が完全にフラストレートしていることとダイマーが低温でも全て等価であることを確かめるために中性子散乱実験を行う必要がある。そのためには大きな単結晶が必要になるので，その育成を行う。また，Ba2CoSi2O6Cl2の磁性原子CoをCuとNiに換えた新物質も期待できるので，その合成を試みる。今年度はその予備的な合成を行い，Ba2CuSi2O6Cl2とBa2NiSi2O6Cl2という物質が存在することを見出している。
トリプレットのBEC状態ではダイマー内の2つのスピンが有限の角度をもつので，BEC状態では強誘電性が発現する可能性もある。そのような観点から，磁場中での誘電測定を行う予定である。
|
Research Products
(19 results)
