2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26247060
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前野 悦輝 京都大学, 理学研究科, 教授 (80181600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺崎 一郎 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30227508)
中村 文彦 久留米工業大学, 工学部, 教授 (40231477)
鈴木 孝至 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (00192617)
岡 隆史 東京大学, 工学系研究科, 講師 (50421847)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非平衡状態 / 強相関電子系 / ルテニウム酸化物 / モット転移 / 非線形伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. モット絶縁体Ca2RuO4の電場誘起金属化に関して: ① 新たに導入した示差走査熱量計を用いて、モット絶縁体Ca2RuO4比熱・潜熱の測定を行い、参照物質の金属Sr2RuO4と比較した。その結果、Ca2RuO4の比熱は,357Kのモット転移温度で潜熱に伴う異常とともに,絶縁相の広い温度範囲357-200 Kに渡り何らかの内部自由度に起因するエントロピー増大を観測した。この原因をさぐるため,現在超音波による弾性常数測定を進めている。 ② 10ミクロンの位置分解能を持つ赤外反射分光から、Ca2RuO4の局所的な電子状態のイメージングに成功した。その結果、モット絶縁ギャップが不均質に分布していることを明らかにし、成果を論文発表した。現実の物質での非平衡モット転移の機構を考えるうえで重要な知見となる。 ③ 京都大学でも本研究に適したCa2RuO4およびCa2-xSrxRuO4の単結晶が育成できるようになり、ソウル国立大学との共同研究で、低温でのポンプ・プローブ分光実験が進んでいる。④ 非平衡状態での強相関電子系での絶縁破壊の理論を展開した。 2.電流で安定化したCa2RuO4の低温金属相に関して、電流維持金属相の物性測定に適した測定装置が組み上がった。 3.Ca2RuO4以外の物質での非平衡現象に関して: ① RuO2二層系Ca3Ru2O7の低温金属状態は、僅か0.5%程度のTi不純物で電子構造自体が大きく変化してモット絶縁化することを電気抵抗測定と光電子分光から明らかにしてきたが、本研究目的に適した対象物質として取り組みを進めている。② ハニカム格子のルテニウム酸化物Li2RuO3のダイマー液体・固体転移の電流依存性を調べるため、試料の純良化と単結晶化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. モット絶縁体Ca2RuO4の電場誘起金属化に関して: ① 電場誘起金属化を起こす現象の機構解明に向けて、非線形伝導効果の定量化と、メンバー各研究室での半定量的再現性に成功した。 ② モット絶縁相について、正確な等温条件のもとでエネルギーギャップが電流に対して減少することを明らかにした。 ③ 比熱測定から絶縁相でも電子占拠に関する軌道自由度が大いに残っていることが明らかになり、この自由度が電場誘起金属化に重要な役割を果たしている可能性をさらに吟味する重要性が増した。④ 京都大学でも本研究に適したCa2RuO4およびCa2-xSrxRuO4の単結晶が育成できるようになった。 2.電流で安定化したCa2RuO4の低温金属相に関して: ① 低温で強磁性転移が起こるデータを得ているが、結晶が粉砕するために再現性が容易ではない。② 電流維持金属相の物性測定に適した測定装置が組み上がった。 3.Ca2RuO4以外の物質での非平衡現象に関して: ① Ca3Ru2O7の低温金属状態は、僅か0.5%程度の不純物で電子構造が大きく変化してモット絶縁化することを明らかにした。② ハニカム格子のルテニウム酸化物Li2RuO3のダイマー液体・固体転移の電流依存性を調べるため、試料の純良化と単結晶化を進めている。 4.非平衡状態での強相関電子系での絶縁破壊の理論が深まり、特に光で励起した定常状態の理解が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
0.プロジェクトメンバー間の情報交換と研究協力体制を強化するため、H27年度早期に研究会を開催する。 1. モット絶縁体Ca2RuO4の電場誘起金属化に関して: ① 機構解明には結晶格子との結合、特に軌道自由度の役割の再吟味が重要である。比熱から明らかになったエントロピー増大の原因をさぐるため,超音波による弾性常数測定、および光電子分光による軌道占拠の温度依存性を共同研究も含めて推進する。② これらの測定に必要となるCa2RuO4およびCa2-xSrxRuO4の単結晶が育成を進める。特に後者は金属・絶縁体転移温度を室温以下に制御できるので、電子状態の温度変化の全容を把握するのに適している。③ 非平衡状態での強相関電子系での絶縁破壊の理論を深め、Ca2RuO4の場合の格子との結合の重要性を浮き彫りにする。また光励起状態のダイナミックスについても強相関効果を取り入れた理論の構築を目指す。 2.電流で安定化したCa2RuO4の低温金属相に関して、電流維持金属相を安定化させ、磁気転移の存在を確立する。 3.Ca2RuO4以外の物質での非平衡現象に関して: ①二層系Ca3Ru2O7に僅かな不純物を入れてモット絶縁化した系で、電場誘起金属化や電流効果を調べる。② ハニカム格子のルテニウム酸化物Li2RuO3のダイマー液体・固体転移の電流依存性を明らかにする。 明らかにする。
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