2014 Fiscal Year Annual Research Report
配向した分子中から発生する高次高調波の物理過程の解明
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26247065
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
酒井 広文 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20322034)
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| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| Keywords | 原子・分子物理 / 気体分子の配列・配向制御 / 高次高調波発生 / 超閾イオン化 / 分子軌道イメージング / プラズマシャッター / 分子偏向器 / 六極集束器 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
（１）COなどの非対称分子にフェムト秒2波長レーザーパルスを照射することにより回転波束を生成し、分子に固有の遅延時間後にフェムト秒プローブパルスを照射して発生する奇数次高調波と偶数次高調波を効率的に観測するために、新たに高次高調波発生・観測装置を開発した。試料分子の回転温度をできるだけ下げて配向度の向上を図るため、Even-Lavieバルブを採用し、ノズル直下のフェムト秒パルスの集光位置を精密に調整できる機構を導入した。
（２）OCS分子に高強度フェムト秒パルスを照射してトンネルイオン化が起こる際の配向依存性を明らかにした。3原子分子であるOCS分子の場合、同じ１価のイオンでもOCS(+)→S(+)+CO (I)、CO(+)+S (II)、CS(+)+O (III)、及びO(+)+CS (IV)の様に様々な解離の仕方をする。先に開発した電子・イオン多重同時計測運動量画像分光装置を用いてコインシデンス測定を行うことにより、上記の解離チャネルを区別しつつトンネルイオン化の配向依存性を明らかにすることに初めて成功した。具体的には、チャンネル(I)、(II)、及び(III)は、高強度レーザー電場がＳ原子側を向いているとき（トンネルイオン化の描像に従えばＯ原子側から）イオン化しやすく、チャンネル(IV)は高強度レーザー電場がＯ原子側を向いているとき（トンネルイオン化の描像に従えばS原子側から）イオン化しやすいことを初めて見出した。また、このトンネルイオン化の配向依存性の度合いがレーザー強度に依存することも見出した。この発見は、非対称極性分子のトンネルイオン化の配向依存性を予言する理論モデルの構築に資する極めて重要な知見である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
（１）「配向した分子中から発生する高次高調波の物理過程の解明」の研究に必要不可欠な高次高調波発生・観測装置を予定通りに開発し、既に高調波信号を観測するとともに観測条件の最適化を進めていることから「（２）おおむね順調に進展している。」と評価できる。
（２）OCS分子に高強度フェムト秒パルスを照射してトンネルイオン化が起こる際の配向依存性について、解離チャンネルによって配向依存性が異なることは当該分野でも初めての興味深い発見である。この課題に関しては、「（１）当初以上に進展している。」と評価できる。
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| Strategy for Future Research Activity |
（１）まず、高強度フェムト秒2波長レーザーパルスをポンプ光として試料分子の回転波束を生成し、分子に固有の遅延時間後にプローブ光を照射して偶数次高調波を観測するのに必要なポンプ光パルスについて、2波長間の強度比やパルス幅などの条件を最適化する。偶数次高調波の観測は、試料分子がマクロに配向していることを示す必要条件ではあるが十分条件ではない。本研究では、速度マップ型イオン画像化装置(VMI)を用い、上記の偶数次高調波の観測に最適化されたパルスで生成された回転波束により、本当に試料分子がマクロに配向しているか否かを高強度プローブパルスの照射によりクーロン爆裂で生成されたフラグメントイオンの角度分布を直接観測することにより確認する。高調波発生実験で使用される分子試料の回転温度はより高いので、VMIでの観測から評価される配向度を上回ることはないと結論付けることができる。
（２）気体分子の配向制御技術の高度化の一環として、高い配向度の実現のために回転量子状態を選別した試料分子を用い、非共鳴2波長レーザーパルスをそのピーク強度付近で急峻に遮断することにより、遮断直後や試料分子に固有の回転周期後に完全にフィールドフリーな条件下での配向制御を実現する。本年度に実施した予備的実験により、2波長のパルス幅が異なりパルスの立ち上がりのタイミングが異なることが配向度の向上を妨げていることが明らかになった。この問題を解消するために、干渉計型の光路を導入して2波長間の立ち上がりのタイミングを合わせるとともに、2波長間の相対位相の測定結果を干渉計の一つのアームの反射ミラーの位置合わせにフィードバックすることにより、プラズマシャッター動作時の相対位相の揺らぎを補償する。
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[Presentation] Ｘ線自由電子レーザーによる配列分子の光電子回折2015
Author(s)
中嶋享、寺本高啓、赤木浩、藤川高志、間嶋拓也、峰本紳一郎、小川奏、酒井広文、富樫格、登野健介、水流翔太、和田健、矢橋牧名、柳下明
Organizer
第28回日本放射光学会年会放射光科学合同シンポジウム
Place of Presentation
立命館大学びわこ・くさつキャンパス（滋賀県草津市）
Year and Date
2015-01-11
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