2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on attosecond quantum wavepacket dynamics
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26247068
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鍋川 康夫 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 専任研究員 (90344051)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アト秒科学 / 量子波束 / 非線形光学 / 極端紫外 / ポンプ・プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はアト秒電子波束の観測を行なう予定であったが、近年の研究動向が孤立アト秒パルスの応用に向かって来ている事を踏まえて、これまでのアト秒パルス列(APT)のビームラインの後継となる孤立アト秒パルス発生ビームラインを開発するための基礎研究を重点的に行なった。孤立アト秒パルスは基本波のレーザー光の電波周期の中でターゲット分子が1度だけイオン化・再結合の過程を行なう際に発生される。従ってこのためには電場周期1サイクル(モノサイクル)程度のパルス幅を持つ高強度の超短パルスレーザーの開発が不可欠である。この場合、レーザー増幅装置に必要なスペクトル帯域は1オクターブを超える必要がある。通常のレーザー媒質でこの様な特性をもつものはなく、光学パラメトリック増幅(OPA)が増幅手法として選ばれた。特に非線形結晶BBOはチタンサファイアレーザーの中心波長800nmではなく710nm近辺で励起するとtype Iの縮退位相整合条件に於いて1μmから2.2μmに及ぶ優に1オクターブを超える利得が得られる事を申請者は独自に見出し、これをOPAレーザーシステムとして構築することとした。チタンサファイアチャープパルス増幅(CPA)システムに於いて独自設計の多層膜波長制御フィルターを設計・開発し、パルス幅60fs、波長712nm、パルスエネルギー1.4mJ、繰返し200Hzのレーザーシステムを励起レーザーとして開発した。また、これを用いて広帯域OPAの原理実証を行った。CaF2板による白色光を種光としてOPAを行ったところアイドラー光に於いて所望の帯域の増幅を行なうことができた。さらにこれを2段目のOPAで増幅することで9μJのパルスエネルギーを得、またアイドラー光が差周波起源であることからキャリア包絡線位相(CEP)も安定化されていることが確認出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存のAPTビームラインを用いた分子・電子波束の観測及び制御の実験については、新しいビームライン用のレーザー開発に注力したため進展が見られなかった。しかしながら、これまでの「ポンプ・プローブ」に「コントロール」を付け加えるマッハ・ツェンダー型干渉計に用いる光学素子・制御装置は既に出来上がっており、これらを既存の真空槽に設置すればよいだけの状況にある。よって、次年度初頭には実験開始可能と考えている。これまでの経験から推測すると想定外の要因により最初の実験が成功裡に終わることはかなり難しいと思われるが、次年度内には何らかの成果につながる結果が得られると考えられる。 新たなモノサイクルレーザーシステムの開発は、増幅帯域幅の確認・CEP安定性の確認まで順調に行っており、進捗状況は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
既存のAPTビームラインを用いた分子・電子波束の観測及び制御の実験を進める。当初はアト秒電子波束の補足を第1目標としていたが、「コントロール」用マッハ・ツェンダー型干渉計の準備が整ったので、まずはこれを導入することを目指す。現在の「ポンプ・プローブ」はSiビームスプリッターミラーを2枚並べ、その境界付近でAPTを反射することで空間分割された2つのAPTを生成し、片方のシリコンミラーをピエゾステージで駆動することでポンプとプローブ間の遅延を制御している。このシステムが収まっている真空チェンバーに3倍波(波長約267nm)を反射、基本波を透過するビームスプリッター3枚を新たに導入し、マッハ・ツェンダー型干渉計を組む。APTのビーム広がり角は3倍波よりも遥かに小さいので、3倍波はAPTの横から空間的に蹴り出し、干渉計を通った後再びAPTのビームの横に戻される配置となる。 モノサイクルレーザーシステムについてはパルス圧縮のための分散制御と3段目のOPAによるパルス増幅を行なう。分散制御は音響光学素子(AOPDF、通称ダズラー)によって行なう予定であるが、ダズラーで制御できる波長帯域は1オクターブに届かない。そこで波長分割した上で2つのダズラーを2つの波長帯域で用い、分散補償した後に再び合波する。分散補償は3段目のOPAでの増幅時には被増幅光のパルス幅が励起パルスのパルス幅と同等になり、かつ増幅後にフッ化カルシウム板を透過させ、この時フーリエ限界となる様に設計を行なう。 なお、分散補償前のパルス幅はダズラーの透過により数psにまで伸びていると見積られるので、通常のスペクトル位相測定方法(周波数分解光学ゲート法, FROG)では時間遅延方向のサンプリング数を大幅に増やさねばならない。これを解決するために時間方向にタイコグラフィのアルゴリズムを用いた新たなFROGを導入する。
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Research Products
(18 results)