2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26247070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 求 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (00706814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
見学 美根子 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (10303801)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 形状と運動 / 細胞遊走 / 生命現象の物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、精密に機能化された新しい細胞膜モデル(Supported Membranes)を用いて、移動し、形態変化する顆粒細胞ニューロンの(A)接着の箇所と接着強度、(B)ニューロン内における細胞骨格のダイナミクス、そして(C)形状と動きの時空間パターンを解析する。2014年度は接着分子であるラミニンのフラグメントを担持した細胞膜モデルを構築し、神経顆粒細胞の接着と運動の制御が出来る系を確立した。 実験装置面では、形状ゆらぎをラベルフリーで追跡する反射干渉顕微鏡(Reflection Interference Contrast Microscopy, RICM)の光学系を改善し、従来の装置と較べてはるかに高いコントラストで反射干渉パターンを得ることに成功したほか、「レーザーパルスで誘起される圧力波を用いた細胞接着機能の定量化装置」の光学系およびサンプル台を本研究のために改善した。特にモーター制御型のXYステージを導入することにより測定のスループットを約10倍程度(毎時20~30回の計測頻度を毎時200以上に)向上させた。これは一般的に広く用いられる原子間力顕微鏡(1日2~3回)に較べると約2000倍のスループットに対応し、細胞接着強度の時間発展を高い時間分解能で追跡することが可能となった。 細胞実験の実空間モデルの最適化と技術面の改良と並行して、解析面でも大きな進歩があった。ハイデルベルク大学・大学病院内科(血液学・腫瘍学)のA. Ho教授の協力のもと、造血幹細胞の形状ゆらぎによるエネルギー散逸にサイトカイン(CXCL12)が与える影響を、生細胞のタイムラプス画像のパワースペクトラム解析から計算することに初めて成功した(Burk,.. Tanaka, Ho, Sci. Rep. (2015))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの顆粒細胞を用いた接着と遊走の実験を新しいin vitro系で確立することは、我々にとっても分担研究者である見学美根子教授のグループにとっても新しい挑戦であり、当初計画していたよりも条件の絞込みに時間がかかった。両グループの若手研究者の緊密な連携により、顆粒細胞の再凝集体から放射状に広がる細胞遊走現象を再現性よく制御することに成功した。 一方で実験装置の改善という観点からは、自ら開発した細胞接着機能の定量化装置の光学系およびサンプル台を本研究のために改善し、一般的に広く用いられる原子間力顕微鏡(1日2~3回)に較べると約2000倍のスループットで細胞接着強度の時間発展を高い時間分解能で追跡することを可能にした。 また細胞の揺らぎとエネルギー散逸に関する解析については、ハイデルベルク大学・大学病院内科のA. Ho教授との共同研究を通じて、ヒト造血幹細胞や急性骨髄性白血病芽球のゆらぎの振幅をフーリエに変換すること(パワースペクトル解析)で目に見えないケモカインCXCL12の影響を定量的に示すことに初めて成功した(Burk,.. Tanaka, Ho, Sci. Rep. (2015))。
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Strategy for Future Research Activity |
系の確立の過程で「単一細胞(微視的観測)から細胞集団(疎視化した運動の解析)へ」という当初の計画を若干変更して、前年度は最集合体から放射状に広がる集団的な遊走運動に注目してきたが、今年度は細胞密度を減らした条件で単一細胞の接着や形状ゆらぎにも重点を置いていく。反射干渉顕微鏡による接着面積の解析に続いて、圧力波を利用した新技術を駆使して細胞接着の強さ(接着した細胞をはがすのに必要な圧力)をラミニンE8の表面密度の関数として測定する。一方で運動の解析においては、顆粒細胞の再集合体からの個々の細胞の遊走運動の追跡をさらに展開して、遊走運動の持続長や変形のモードと運動方向の交差相関、といった次元まで深めた解析を行う。 また、見学グループの専門である分子生物学的なツール(例・蛍光タグで修飾したチューブリン・Lifeactによるアクチンの生体細胞での染色)と全反射蛍光顕微鏡を組み合わせて、接着面近傍でのアクチン・微小管の自己秩序形成とダイナミクスを追跡する。ここでは持続長の異なるアクチンと微小管の相分離が細胞内小空間でどう起こるかを固定した細胞で調べる「静的」なアプローチと、細胞骨格蛋白の細胞内のフローを可視化して追跡する「動的」なアプローチの両方をとる。
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Research Products
(11 results)