2014 Fiscal Year Annual Research Report
表層と中層を繋ぐ北太平洋の子午面循環:その三次元構造と変動メカニズムの新たな描像
Project/Area Number |
26247076
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三寺 史夫 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20360943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 知裕 北海道大学, 低温科学研究所, 講師 (60400008)
西岡 純 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (90371533)
西垣 肇 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (70253763)
美山 透 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (80358770)
伊藤 進一 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (00371790)
和川 拓 国立研究開発法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (10601916)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 北太平洋子午面循環 / ジェット形成 / 塩分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、表層から中層へと通気する北太平洋の子午面循環の解明を目指し、未解明である表層を通した高塩水の経路を重点的に研究する。特に、北海道東方の準定常ジェットを通した黒潮水輸送過程に注目する。 (1)北太平洋表層における高塩水供給経路の解析:亜熱帯循環と亜寒帯循環をつなぐ準定常ジェットの形成メカニズムを解明したことが、今年度の最も重要な成果である。重要なのは亜寒帯側のロスビー波が海底地形上の順圧流に沿って南下し亜熱帯側まで侵入し、亜熱帯側のロスビー波の西方伝搬を阻害することであり、その両者の境界でジェットが生成することを突き止めた。 (2)観測による亜熱帯-亜寒帯循環間の移行領域への高塩水侵入経路の解明:東北区水産研究所若鷹丸に乗船し、2014年9月に漂流ブイ3基を準定常ジェット流軸付近に同時に放流した。この3基はほとんど分散しなかったことから、1基のブイでもラグランジュ的測流の代表性が高いことを示した。また、通信の不具合のため翌年に繰り越した12基を、2015年9月に放流したところ、ジェットから移行領域への遷移における海水混合過程を観測することができた。また、2014年7月にはロシア極東海洋気象研究所所属の観測船を用い、ロシア水域内における水温・塩分観測や化学トレーサーの観測を行い、若鷹丸と合わせて亜熱帯側・亜寒帯側をほぼ同時に観測を実施することができた。 (3)数値実験による高塩水供給システムと表層塩分決定メカニズムの解析:オホーツク海・北西太平洋を高解像度化(1/10°~1/30°格子)したモデルを用いて数値実験を行った。風を全領域で強めた実験を行った結果、亜熱帯から亜寒帯への塩分輸送が増加することが分かった。一方、北太平洋中層水では低塩化傾向が続いているが、風の強化による西岸を通した亜寒帯から亜熱帯への低塩水供給量増加が要因であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)北太平洋子午面循環表層の高塩水経路の解明に向けて、亜熱帯循環から亜寒帯循環へ黒潮水を輸送する準定常ジェットの形成メカニズムを、傾圧ロスビー波の特性曲線の観点から明らかにしたことが、今年度の最も重要な成果である。これにより、亜熱帯-亜寒帯間の輸送過程や変動機構の解明に向けて、理論的基盤ができた。また、気象研究所の4次元変分法を用いたトレーサー解析法を開発し、亜熱帯と亜寒帯間の交換流量の推定をはじめた。初期的結果として、両循環間のトレーサーは主に準定常ジェットを経路としていることが判明しつつある。 (2)循環間の海水交換を実測するために漂流ブイによるラグランジュ的観測を行っている。当初2014年9月に漂流ブイを15基投入の予定だったが、12基にARGOSとの通信の不具合が見つかったため翌年に繰り越し、2014年に3基、2015年に12基を若鷹丸より放流することにより、ジェットのラグランジュ的観測に成功した。衛星海面高度から推定した地衡流との対応もよいことが分かった。当該海域の高解像度の水温塩分およびトレーサー観測と合わせ、ジェットから移行領域に水塊が変遷する過程を調べる基盤ができた。また、2014年7月にはロシア極東海洋気象研究所所属の観測船を用い、ロシア水域内における水温・塩分観測や化学トレーサーの観測を予定通り実施することができた。 (3)数値実験による高塩水供給システムと表層塩分決定メカニズムの解析も実施している。今年度は、オホーツク海・北西太平洋を高解像度化(1/10°~1/30°格子)し、物理過程を無理なパラメタリゼーションなしに再現できるようなモデルを構築した。風を全領域で強めた実験を行った結果、亜熱帯から亜寒帯への塩分輸送が増加することを示した。また、西岸を通した亜寒帯から亜熱帯への低塩水供給により、北太平洋中層水の低塩化傾向を理解することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)準定常ジェットの形成理論を基盤に、亜熱帯-亜寒帯循環境界の海水交換過程の研究を進める。まず、形成理論を単純モデルを用いて深める。特に、5500mの水深において500mほどの低い地形にもかかわらず強い順圧流ができるメカニズムを考察し、亜寒帯循環側で特性曲線が大きくゆがみ亜熱帯側に侵入するプロセスを明らかにする。また、JCOPEや気象研のデータ同化システムを基盤にしたトレーサーの解析をさらに進めることで、黒潮水が亜寒帯循環・ベーリング海に侵入する際の準定常ジェットの役割りを明らかにすることが必要である。 (2)準定常ジェットの流軸に投入した12基の漂流ブイの軌跡を解析する。30mと60mそれぞれに抵抗体を付けたブイを解析することにより、ジェットに伴う流れ場の鉛直構造や、ジェットから移行領域に侵入する際の海水混合を観測する。また、流軸近傍や上流側の高解像度観測を行うことにより、親潮フロント付近の混合過程を明らかにすることが必要である。また、海洋再解析データに仮想粒子を流すことで、より多くの粒子を用いた解析を行う。 (3)気象研究所の4次元変分法を用いたトレーサー解析法を用い、亜熱帯と亜寒帯間の交換流量の推定を進める。これまでの結果で、両循環間のトレーサーは主に準定常ジェットを経路としていることが判明しつつある。中規模渦の役割など、そのプロセスの詳細について解析する。 (4)高解像度モデルを用いた、高塩水供給システムと表層塩分決定メカニズムの解析をさらに進める。
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Research Products
(38 results)
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[Journal Article] Oceanic fronts and jets around Japan: a review2015
Author(s)
Kida, S., H. Mitsudera, S. Aoki, X. Guo, S. Ito, F. Kobashi, N. Komori. A. Kubokawa, T. Miyama, R. Morie, H. Nakamura,T. Nakamura, H. Nishigaki, M. Nonaka, H. Sasaki, Y.-N. Sasaki, T. Suga, S. Sugimoto, B. T., K., Takaya, T. Tozuka, H. Tsujino, and N. Usui
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Journal Title
Journal of Oceanography
Volume: 71(5)
Pages: 469-497
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Chemical evidence for the origin of the Cold Water Belt along the northeastern coast of Hokkaido2014
Author(s)
Kuma, K., R. Sasayama, N. Hioki, Y. Morita, Y. Isoda, T. Hirawake, K. Imai, T. Aramaki, T. Nakamura, J.Nishioka, and N. Ebuchi
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Journal Title
Journal of Oceanography
Volume: 70
Pages: 377-387
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 水中グライダーによる沿岸海洋観測の可能性2015
Author(s)
伊藤進一, 有馬正和, 市川雅明, 青木茂, 安田一郎, 筧茂穂, 長谷川大介, 和川拓, 黒田寛, 清水勇吾
Organizer
沿岸海洋研究シンポジウム「沿岸海洋学における観測研究の最前線 I」
Place of Presentation
東京海洋大学(東京都品川区)
Year and Date
2015-03-21
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