2014 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯大気海洋系変動と日本の異常天候に関する数値的研究
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26247079
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 雅浩 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70344497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 崇 独立行政法人海洋研究開発機構, 気候変動リスク情報創生PT, 主任研究員 (00450776)
塩竈 秀夫 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (30391113)
今田 由紀子(金丸由紀子) 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (50582855)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 気候変動 / 異常天候 / 全球気候モデル / テレコネクション / エルニーニョ・南方振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、近年の日本および周辺アジア域における異常天候の発現メカニズム理解と、それに対する地球温暖化および熱帯域自然変動の寄与を明らかにすることを目的とした各種数値実験を行う。特に、全球的な気温上昇の停滞(ハイエイタス)と、下記の猛暑出現に着目し、大気大循環モデル(AGCM)と大気海洋結合モデル(CGCM)を組み合わせたシミュレーションを考案、実施して結果を解析する。
1年目である本年度は、AGCMによる過去の天候のアンサンブル再現実験を実施し、2013年の猛暑を対象とした要因分析を行った。その結果、温暖化に伴う低緯度の海面水温上昇が猛暑の発生確率を有意に増加させていたことが分かった。この成果は、米国気象学会の特別号において公表された。また、北半球全体で過去数十年における猛暑の頻度が増大している観測事実が、上記のシミュレーションでよく再現されていることを確認し、さらにそのアトリビューションを試みた。具体的には、海面水温や大気中二酸化炭素濃度などを変えた仮想的なアンサンブルを別途作成し、それらを組み合わせて解析することで、CO2濃度上昇による直接的な温室効果が陸上を温暖化させていることが猛暑増加に対する第一の要因であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していたPD研究員の雇用が実現しなかったため、解析を担当する人手の不足が懸念されたが、AGCMのアンサンブルを生成した分担研究者らが精力的に研究を遂行してくれたため、当初予定していた2013年猛暑事例の要因分析を行うことができた。2年目以降に主に用いる予定のCGCMについても、順調に調整および東京大学情報基盤センターのスパコンへの移植作業がすすみ、長期シミュレーションを実施する目途がついた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、2年目以降はCGCMを中心に用いたメカニズムおよび予測実験を実施する。特に、日本の夏季の天候に大きな影響を与える西部熱帯太平洋域の海面水温の変動に着目し、年々から十年の時間スケールで生じるエルニーニョのような自然の内部変動に対して、CO2やエアロゾルなどの外部強制が有意に寄与していたかどうかを調べる。また、ここ数年高いままだった西部太平洋の水温は徐々に下がり始めており、これと今後のエルニーニョの発展の関連、および天候影響を理解することが今日的な課題として追加される。これについては、CGCMを用いた季節から数年を対象とした事後予測実験を実施し、最新のデータを与えて実験的に予測を行うことが有益であると考えている。
AGCMを用いた異常天候のアトリビューションについては、まずアンサンブルを拡張することが重要である。それとは別に、これまで行ってきた、海面水温やCO2濃度といった境界条件のみを変える実験だけでなく、大気初期値を与える現業気象予報型の実験デザインを加味することで、全球的な温暖化や熱帯域気候変動が日本域の天候にどこまで影響を与えていたかをより正確に見積もる方法を検討する。
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Research Products
(22 results)