2015 Fiscal Year Annual Research Report
散逸系の階層方程式によるエキシトンや電子移動系の非線形応答解析
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26248005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷村 吉隆 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20270465)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 階層方程式 / 非マルコフ効果 / 非摂動 / 多次元分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は階層方程式の数学的基礎を固めるために、座標で記述された系に対する実時間、虚時間の階層方程式を導出し、そのトランケーション・スキームについてもされあに発展させた。また非摂動、非マルコフ動力学を記述できる運動方程式がどうかを簡単に判断する規範として、ブラウン運動系に対する解析解を基礎にした4つの非マルコフ性テストを開発し、階層方程式がすべてのテストをクリアーすることを示した。 数値計算に関しては昨年GPU(グラフィック・プロセッサー・ユニット)化した階層方程式のプログラムを、4月に購入した発売されたばかりの2CPUで24Gのメモリーを搭載しているGPU上に実装し、散逸系の厳密計算としては歴史上最大となる3x4のスピングラス系の緩和のシミュレーションを行った。階層方程式の適用できるモデルも広げ、光合成系の励起子移動のモデルとしてよく用いられるホルンシュタインハミルトニアンに対する階層方程式を始めて導出し、光合成リボソーム系のモデルである1次元系について計算を行った。多次元分光に関しては、近年発展してきたテラヘルツ・ラマンおよび赤外・ラマンの分子動力学シミュレーションを行い、得られた2次元分光シグナルが、複数モードの非線形のブラウン振動子モデルに対して導いた古典的階層方程式で大変よく記述できること示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
階層方程式の数学的基礎は27年度の研究でほぼ完成した。26年度の基礎方程式に対する結果はJ.Chem.Phyのエディターズチョイス、28年度の結果はISIの注目論文にノミネートされるなど、その成果は広く認知されている。数値計算についてもGPU化が順当におこなわれ、3x4スピンに対する世界レコードの厳密数値計算が実行された。ま分子動力学を用いて得られた複雑な多次元分光シグナルも、申請者が開発し、さらに階層方程式に実装した非線形ブラウン運動モデルで、驚異的なぐらい解析できることを示すことを示すことができている。これらの結果はすべて論文として出版されている。
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Strategy for Future Research Activity |
GOU化によりエネルギー表示であらわされる系の数値計算は大幅に早くなったが、座標系に対するプログラムはまだGPU化されていない。化学は問題は電子移動やプロトン移動反応など座標系で記述される重要な問題が多いので、座標系に対する階層方程式をGPU化することを次の目標とする。このプログラムが完成したら、水分子の2次元分光など量子効果が重要になる系の解析にも用いることが可能である。 27年度の研究で階層方程式をホルンシュタインハミルトニアンに拡張したが、その拡張性を試すためにホルンシュタインハバードやBCSハミルトニアンなどへの拡張も試みたい。
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Research Products
(22 results)