2015 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系ナノワイヤー金属錯体における新奇非線形現象の創出
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26248015
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 正廣 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60167707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高石 慎也 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10396418)
井口 弘章 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30709100)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低次元電子系 / 非線形現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、本研究課題において、擬一次元ハロゲン架橋金属錯体を中心とした低次元電子系物質において、新奇な非線形現象を創出するという目的で研究を行っている。その中で申請者は従来はPd(II)-Pd(IV)の混合原子価状態をとると考えられてきたPd錯体でPd(III)の平均原子価状態をとる物質の開発に成功した。また、この錯体が比較的幅広い温度領域で相分離現象を示すことを明らかにした。この錯体の混合原子価相における価数配列を3D-ΔPDF法という手法を用いて明らかにした。 平均原子価状態をとると知られている[Ni(SS-bn)2Br]Br2 (SS-bn = 2S,3S-diaminobutane)において、電気二重層トランジスタ(EDLT)を用いたキャリアドーピングに成功し、低温で約一桁程度の電気伝導度の上昇を観測することに成功した。 また、Au(I)-Au(III)混合原子価錯体においてもメチルアンモニウムイオンを有する新規ペロブスカイト型金属錯体の開発に成功し、この錯体中のメチルアンモニウムイオンの運動状態が温度によって変化することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに得た成果としては、1.混合原子価―平均原子価相転移を示す新規臭素架橋パラジウム錯体の開発、2.室温で平均原子価状態を示す新規臭素架橋パラジウム錯体の開発、3.電気二重層トランジスタ(EDLT)を利用したNi錯体へのキャリア注入、4.新規Au(I)-Au(III)混合原子価ペロブスカイト型金属錯体の開発などがあげられる。 これらの錯体のデバイス化に向けて、物質開発のみならず、薄膜化なども同時に進めており、新奇非線形現象の創出に向けて着実に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、これまでの研究をさらに進め、①新物質の開発、②電気二重層トランジスタを利用したキャリアドーピング、③低次元電子系特有の物性(熱電特性など)の開拓を行っていく予定である。 ①に関しては、これまでに一例も報告例がないPt錯体での平均原子価状態を実現したい。これまでの研究でPd錯体でも面内配位子を適切に選択すれば、比較的容易にPd(III)の平均原子価状態を実現できることがわかってきており、同様の配位子をPt錯体に適用することでPt錯体で平均原子価状態を実現できる可能性は十分にあると考えられる。また、Au錯体では、メチルアンモニウムイオンを用いたAu錯体の合成に成功したが、アルキルアンモニウムイオンは多岐にわたるため、これらの導入を網羅的に試みていく予定である。 ②に関しては、名古屋大学の竹延教授と共同で研究を推進していく予定であり、同教授の同意をすでに得ている。 ③に関しても、名古屋大学の竹延教授のグループで装置の開発が進んでおり、共同研究を行うことで同意している。
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Research Products
(21 results)