2014 Fiscal Year Annual Research Report
キラル有機物質が示す革新的複雑系化学現象の発見と機構解明および一般化の推進
Project/Area Number |
26248024
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田村 類 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (60207256)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 立久 京都大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80175702)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 複雑系化学現象 / 優先富化現象 / キラル対称性の破れ / 磁気液晶効果 / スピン対称性の破れ / メタルフリー磁性マテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究成果を、各テーマ別に述べる。
(A) 優先富化現象を示すラセミ体の医薬品二成分共結晶の探索とその機構解明 1件の発見があった。これまでアミノ酸のイソロイシンは優先富化現象を示すが、そのキラル分割効率はきわめて低かった。そこで、ラセミ体のロイシンとアキラル有機ジカルボン酸の共結晶を種々合成し検討したところ、ロイシンとシュウ酸の1:1共結晶が、これまでに研究代表者が明らかにしてきた優先富化が発現するための五つの必要条件を満足したため、水とエタノールの混合溶媒から、高過飽和度を用いる非平衡結晶化条件下で再結晶したところ、優先富化現象の効率が改善し、その再現性が100%であることを見出した。また、そのメカニズムがこれまでのアミノ酸の優先富化現象とは若干異なることを明らかにした。 (B) キラル有機ラジカル化合物を起点とするメタルフリーな磁性ソフトマテリアルの合成と機能および磁気液晶効果発現の機構解明 2件の発見があった。第一に、モノラジカル液晶性化合物について電子スピン共鳴スペクトルの線形解析とDFT軌道計算法を用いて、液晶相中で発現する「正の磁気液晶効果」が分子間でのスピン中心の直接的相互作用よりもむしろ分子間スピン分極が働くことが原因であることを示した。第二に、中性の液体ニトロキシドラジカル化合物をシエルとして用い、ルミノール水溶液を内包させたコア・シエル型エマルション液滴を水中で調製し、この液滴が磁石に引き寄せられて水中を移動することを確認した。ついで、この液滴に過酸化水素水を作用させてもルミノール反応が起こらないことから、抗酸化性の磁性キャリアーとして使えることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より予想されたことであるが、平成26年度の研究計画は盛り沢山であったため、すでに化合物の合成や調製が達成されて予定通りの成果が得られたものと、目的化合物の合成や調製が進行中のものとがある。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画でまだ達成されていないものについては、目的化合物の合成や調製が達成された場合のインパクトはきわめて大きいため、時間がかかるが27年度も鋭意検討を継続する。
|