2016 Fiscal Year Annual Research Report
非可食系原料からの新規バイオマスプラスチックの創製と構造制御による高機能化
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26248044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 忠久 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30281661)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオベースプラスチック / 生分解性プラスチック / 微生物産生ポリエステル / 高分子多糖類 / グルカル酸 / 繊維 / フィルム / 酵素分解性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、プラスチック生産における石油依存および可食系原料の利用から脱却し、真の持続的な物質循環型社会を構築するために、非可食系バイオマス(ヘミセルロース、多糖類、農産廃棄物抽出成分など)から新規なバイオマスプラスチックを創製することを目的とする。特に、化学構造を制御することにより、機械的性質や熱的性質などの様々な物性が制御された高性能プラスチックの開発を行う。さらに、得られた各々のプラスチックに適した新規な成形加工・複合材料化技術を開発することにより、高強度・高弾性率繊維、高耐熱性フィルム、光学特性フィルムなどの部材化を行う。また、化学構造を制御することによりバイオマスプラスチックに環境分解性や生体内吸収性を付与できることから、農林水産用あるいは医療材料としての評価もあわせて行う。本研究では、新たなバイオマス化学産業創出に向けての基礎及び応用研究を総合的に推進する。 本年度は、ポリ乳酸ステレオコンプレックスの結晶化速度の改善を目指して、キシランエステル誘導体とのブレンドを行い、半結晶化時間に及ぼす配合比率と熱処理の及ぼす影響において解明した。微生物産生ポリエステルに関しては、高強度化に重要な寄与を及ぼすβ構造の形成機構を大型放射光の時分割X線回折法により解明した。また、新規な微生物産生バイオポリエステルの珍しい共結晶化挙動をX線回折と熱測定により明らかにした。グルコースから発酵合成により生合成されるバイオベースモノマーの基幹物質の一つであるグルカル酸を用いて、溶液重合法により高分子量なバイオベースポリアミドの合成に成功した。さらに、多糖類の一つであるカードランからは、2種類のゲル(ヒドロゲルとオルガノゲル)の合成に成功した。また、位置選択的セルロースエステル誘導体の酵素分解の結果から、6位に導入されたエステル基が酵素分解の阻害に大きな寄与を及ぼしていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
微生物産生ポリエステル、高分子多糖類、グルカル酸などのバイオベースモノマー機関物質のいずれからも、これまでの石油合成ポリマーとは異なる優れた性能を有する熱可塑性プラスチックの合成に成功している。また、繊維、フィルム、射出成型品への加工についても多くの試行錯誤を繰り返し、少しずつではあるが形になってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)最終年度は、繊維、フィルム、射出成型品への加工性に関する研究を中心とし、熱分解性、熱溶融粘度、成型加工性などを検討するとともに、成型品の破壊強度、耐衝撃性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、難燃性などの実部材としての必要物性について検討を行う。 (2)引き続き、化学合成法を用いて、グルカル酸からの新規ポリマーの合成を行う。 (3)カフェ酸やフェルラ酸などの芳香族を用い、縮合重合などの手法を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)などより耐熱性に優れた新規な含芳香族バイオポリエステルの創製を行う。 (4)多糖類は一般に反応性の異なる2つまたは3つの水酸基を有している。これらの水酸基に異なる官能基を位置選択的に導入する、あるいは、導入する官能基の量を制御するなど、化学構造を精密に制御することにより、生化学的及び物理的性質、環境分解性、生体内吸収性を制御する基盤技術を確立する。
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Research Products
(14 results)