2015 Fiscal Year Annual Research Report
レーザ走査型干渉技術を用いた円筒表面ナノレベル観察システム
Project/Area Number |
26249012
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
新田 勇 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30159082)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 機械要素 / レーザ走査干渉計 / 円筒面 / 広視野レーザ顕微鏡 / シュリンクフィッタ |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は,広視野レーザ顕微鏡を創り上げ,円筒面の全面を高精度に観察できる手法を初めて開発した.この装置は広い視野を観察することを主眼としたシュリンクフィッタ技術援用レーザ走査方式を用い,微細レーザスポット光のレーザ干渉を利用している.これにより,横方向の高い空間分解能に加えて,高さ方向の分解能もナノレベルに高めることに成功した.レーザ干渉においては,位相シフト法という複雑な手法を用いるが,最近申請者はナノレベルの高さ情報を取得する簡潔な方法を発見した.申請者のこれまでの基礎研究の総仕上げとして,通常では測定し難い円筒面などの転がり要素全面の表面形状をナノレベルで短時間に評価できる広視野レーザ走査型顕微干渉計の開発を,他に先駆けて実現することを研究目的とする. これまでに,円筒試験片を空気静圧軸受に取り付ける方法の改良や,参照板の取付手順を改良して,円筒表面の安定した干渉縞を取得する方法について検討を加えてきた.その結果,本計測手法の再現性が確認できた.画像処理(2値化,細線化,ナンバリング,干渉縞の多項式近似)による円筒面全面の形状をナノレベルで決定できるようになったが,干渉縞の暗線のみを等高線として使用するので,干渉縞の本数が少ない場合は測定精度が低下する結果となっていた.干渉縞の本数が増えるように,あえて参照板を傾けた画像を取得したが,そのようにすると干渉縞が増えすぎて画像処理に多くの時間がかかることが分かった.そこで,位相シフト法のように各画素の輝度分布から高さを計算するようにしたところ,円筒面の形状の近似度が向上することが確認できた.次年度は,位相シフト法を使用しない,一回の計測で疑似位相像が取得できる方法を適用する計画である. 以上のように,当初の計画通りの結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度,安定して円筒面全面の干渉縞を得ることができるようになった.それは,円筒試験片と空気静圧軸受けの間に手動のXYステージを組み込み,円筒試験片の偏心を低く抑えることが可能となったお陰である.ところで,ナノレベルの計測を行っているが,実験室の温度管理はそれほど厳密に行えるわけではない.そこで,現状の環境で計測時間内にどれほどの計測誤差となるかを調べた.その結果,100秒の計測時間内に1℃程度の温度変化が生じ,結果的に数十nm程度の計測誤差となることが分かった. 計測に用いた円筒試験片は,ステンレス製である.昨年度,ステンレス円筒試験片の回転中心をメカ的に静圧軸受けのそれと一致させ,計測データからソフトウェア的に試験片の偏心と傾きを補正できるようにしたが,本年度はより安定的にこの操作ができるようにソフトウェアを改良した.このような改良を含めて,干渉縞から表面形状に変換する安定したソフトウェアが開発できた.現状では,暗線の干渉縞を等高線として利用するので,その外の輝度値の部分は形状計測に利用できていない.そこで,参照板を傾けて干渉縞の数を多くしたところ,形状は問題なく計測できるが,細線化処理に当初の予想よりも多くの時間がかかることが分かった.そこで,位相シフト法のように全ての画素の輝度値をすきまに変換する方法を試した.この方法によれば,干渉縞を増やさなくても高精度に形状を決定できることが分かった.このように,開発予定のソフトウェアの開発は予定通りに進んでいる. 以上,当初の計画通りの成果は達成できている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も平成27年度と同様に下記3項目の研究を継続する. (1)干渉縞の輝度値から2面間のすきまを決定するソフトウェアの開発,(2)広視野レーザ顕微鏡による計測方法の改善,(3)参照板の特殊コートと疑似位相像の関係とそれの計測への応用方法開発. その外,これまでに参照板にクロム薄膜を成膜することで,1回の測定で疑似位相像を取得し,干渉縞の高低関係を短時間で把握できるようにする. 得られた知見やソフトウェアなどの研究成果を,分かり易い形となるようにまとめる.
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