2015 Fiscal Year Annual Research Report
浸漬型ナノすきま潤滑の理論体系確立のための包括的計測法
Project/Area Number |
26249013
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福澤 健二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60324448)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 伸太郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50377826)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | トライボロジー / ナノトライボロジー / マイクロマシン / 境界潤滑 |
Outline of Annual Research Achievements |
すきまを精密に規定した力計測とすきま観測の同時計測のための新規なマイクロ摺動プローブの構築とエリプソメトリーの原理に基づいたすきま観測法の確立を試みている.研究項目(1),(2),および(3)について,以下のように進めた. (1)水平力計測法:前年度までに,マイクロマシン型プローブの構造形成と動作確認に成功し,プローブ構造,特に鉛直剛性に関する課題が明らかになった.研究の効率化のためにプローブ構造としてはばね部を角柱形としたプローブとした.これにあわせて,プローブ変位検出方法としてはレーザドップラー法を用いたが,力感度に向上の余地があることを明らかにした.また,ガラス球溶融型摺動面については基板との熱膨張の差が課題となることを見出した.適したガラス材料を選定し,この材料においても加熱溶融することで平滑表面が形成できることを明らかにし,摺動プローブ構築を進めた. (2)鉛直力計測法:すべり長計測の検討と並行して,(1)で構築した摺動プローブによる鉛直力測定を可能とするために,水晶振動子センサと組み合わせた測定系を構築した.課題となっていたすきま変動については,水晶振動子センサを支持する構造に摺動プローブを取り付け,支持構造を加振する方法が有効であることを見出した. (3)すきま観測法:エリプソメトリーの原理に基づいた観測系の改良を進めた.すきま分布の定量化法として消光型エリプソメトリーに基づいた方法とエリプソメトリー信号とすきまの関係をあらかじめ測定し,エリプソメトリー信号を較正する方法を試みた.原理確認を優先し,観測のより容易な曲率半径の大きな摺動プローブを用いた.まず,プローブを摺動させず静的なすきまの計測を試み,その後摺動すきまの観測へと展開した.いずれの方法も原理的にすきま分布の定量化が可能であることを明らかにした.そして,測定精度に向上の余地があることも見出した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標としていた,研究項目(1)水平力計測法,(2)鉛直力計測法,および(3)すきま観測法について,おおむね,ねらいを達成することができたとともに,当初想定していなかった課題を明らかにすることができた. 各研究項目についての詳細は以下のとおりである. (1)水平力計測法:マイクロマシン技術を用いて形成したばね構造部に,加熱溶融法を用いて形成した平滑なガラス摺動面を組み合わせ,当初ねらいとしていたプローブ構造の構築が可能であることを明らかにした.また,変位検出方法について性能向上の必要があることを明らかにした. (2)鉛直力計測法:(1)で構築したプローブと水晶振動子センサを組み合わせ,プローブ加振法として水晶振動子センサの支持構造を加振する方法を用いることで,課題であったすきま変動を抑制し,水平力と鉛直力の同時計測が可能であることを明らかにした. (3)すきま観測法:エリプソメトリーの原理に基づいた光学的方法を用いて,摺動時の微小すきま分布の定量化が可能であることを明らかにした.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに,当初構想していた原理に基づいて水平力計測法,鉛直力計測法,およびすきま観測法を構築し,原理確認を進めることができた.これとともに,課題も明らかにすることができた.これらを踏まえて,各研究項目(水平力計測法,鉛直力計測法およびすきま観測法)について,以下のように研究を進める. (1)水平力計測法:摺動プローブのばね部を角柱形とし,表面を溶融させたガラス球を摺動面としたプローブが有効であることを示した.また,これまでの変位検出法について力感度的に向上の余地があることを明らかにした.前年度までに構築したプローブを用いて,変位検出法を改良することにより水平力計測の高精度化を図る.また,これに合わせてプローブ構造についても検討し,力感度の向上を念頭にプローブおよび検出方法の改良を図る. (2)鉛直力計測法:研究の効率化のため水平力と鉛直力の同時計測系構築を優先する.これまでに摺動プローブと水晶振動子センサの組み合わせで同時計測が原理的に可能であることが確認できた.そこで,上の(1)で進める摺動プローブと水平力検出系を水晶振動子センサに組み合わせることで,同時計測系を構築する.水平力と鉛直力の同時計測を念頭に,(1)と並行して研究を進め,研究の進展に合わせて計測法の改良を検討する. (3)すきま観測法:これまで原理確認に成功したエリプソメトリーの原理に基づいた微小すきまの分布計測法について,すきまの定量化法を検討し測定精度の向上を図る.薄膜の膜厚測定などに用いられているエリプソメトリーによる方法を検討し,その適用についても検討する.そして,(1)および(2)の力計測法の研究の進展とすきま計測法の研究の進展を考慮し,力計測系とすきま観測系の統合化の可否を検討する.
|
Remarks |
http://ayame.fukuzawa.nuem.nagoya-u.ac.jp/
|