2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ・レーザ計測と粗視化モデルの相互補完解析法による界面フルイディクスの深化
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26249022
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菱田 公一 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40156592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 洋平 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00344127)
泰岡 顕治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40306874)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱流動相互補完解析法 / 自発ラマン散乱 / エバネッセント波自発ラマンイメージング / 分子動力学シミュレーション / 粗視化モデル / 振動スペクトル / 界面熱流動ダイナミクス / 界面フルイディクス |
Outline of Annual Research Achievements |
界面熱流動に関する理論の再構築を目的として,エバネッセント波自発ラマン散乱イメージング法と,複数の分子の集合体を一つの粒子として扱う粗視化モデルによる相互補完解析法の開発を4ヶ年に渡り行う.今年度の研究成果を下記に述べる. ①前年度に開発した二波長エバネッセント波自発ラマン散乱イメージング法を用いて,マイクロチャネル内の水・重水から成る混合場,ならびに電解質溶液・重水から成る混合場に適用し,濃度分布の非侵襲イメージングを行った.電解質溶液を混入した際,親水性の石英ガラスに陽イオンが吸着することにより,電気二重層が形成されるため,レイノルズ数の違いによる濃度分布の変化が見られなかったことから,固体・液体界面極近傍における水分子挙動とイオン挙動には,明確な差異があることが実験的に明らかとなった. ②振動スペクトルを粗視化モデルへ反映するのを考慮して,温度変化による分子挙動への影響をラマンスペクトルを用いて定量的に把握するため,電解質溶液を用いて,温度および濃度変化に伴うラマン散乱光強度変化を捉え,温度・ラマン散乱光強度および濃度・ラマン散乱光強度に関する相関関係を実験的に明らかにし,両者とも線形関係を有していることが判った. ③振動スペクトルを考慮した粗視化モデルを構築するために,分子内振動を含む分子動力学計算を行った.糖分子を例として取り上げ,いくつかの糖分子についてその周りの水分子の振動スペクトルを第一原理分子動力学シミュレーションを用いて解析した.さらに,アンモニア/水の系についても同様の計算を行い,振動エネルギーについての解析を第一原理分子動力学シミュレーションにより解析した.また,古典分子動力学シミュレーションを用いて,振動を考慮したモデルにより,振動エネルギーが回転運動,並進運動の運動エネルギーに移動することが解析できる方法を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エバネッセント波照射によるナノスケール熱流動計測および粗視化モデルによる分子動力学シミュレーションによる熱流動相互補完解析法の確立を目標として,二波長エバネッセント波自発ラマン散乱イメージング法による界面極近傍の分子およびイオンの濃度分布計測,ならびに粗視化モデル構築に向けた分子動力学シミュレーションを行い,今年度の進捗状況は概ね良好である. ①二波長エバネッセント波自発ラマン散乱イメージング法を用いて,固体・液体界面極近傍に存在する分子およびイオンの挙動を,濃度分布を介して把握することが可能となった.特に,電気二重層がイオン挙動に及ぼす影響が,非侵襲イメージングにより,初めて定量的に把握することが可能となった. ②電解質溶液を選定して,温度・ラマン散乱光強度および濃度・ラマン散乱光強度に関する相関関係を定量的に把握することが可能となり,分子やイオンの振動スペクトルを粗視化モデルに反映する試みが可能となった. ③Evanescent Wave for a Chip(EvaChip)をエバネッセント波自発ラマンイメージング法に展開する際の,様々な問題点を抽出し,散乱光低減が可能となった.更に高出力のレーザ光システムを用いることにより,エバネッセント波自発ラマンイメージングによる非侵襲濃度分布計測が可能となる. ④粗視化モデル構築に向けて,水分子,重水分子,そして石英ガラスからなる場の分子動力学シミュレーションを行い,固体表面の分子拡散係数への影響を物理的に把握するとが可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで連続体である熱流動の支配方程式に,人工的で物理的意味のない境界条件として与えていた壁面ゼータ電位や親水性・疎水性(滑り有無)等に関して,物理現象を的確に表現する熱流体ダイナミクス方程式として導入し,界面熱流動に関する理論の再構築を行う.そのために今後は, ①前年度の結果より,石英ガラス表面に化学修飾を施し疎水性に変化させると,炭素のラマンスペクトルがラマンシフト全域に渡って影響を及ぼすことが明らかとなり,水分子および重水分子の拡散係数を実験的に評価することが困難であった.今後は,フッ素コーティングあるいは熱的処理により疎水性を実現させ,水分子および重水分子の混合過程から拡散係数の評価を試み,更に電解質溶液を用いて,イオンの拡散係数の評価も試みる.具体的には,レイノルズ数を変化させた際の分子あるいはイオンの濃度分布の勾配から,拡散係数の算出を行う. ②上述の実験条件に近い境界条件を分子動力学シミュレーションにて再現し,石英ガラス表面上約10ナノの領域における水分子および重水分子の拡散係数の算出を行う.更に,上述の実験において親水性・疎水性の,水分子および重水分子からのラマン散乱光強度に及ぼす影響を定量的に評価を行い,親水性・疎水性表面を分子動力学シミュレーションにて再現し,拡散係数変化を捉え,粗視化モデルに導入する際のモデル化を検討する. ③水分子および重水分子,および親水性,疎水性表面について検討した粗視化モデルについて,粗視化分子シミュレーションを行い,拡散係数を原子レベルでの分子シミュレーション結果と比較し,モデルの妥当性について検討する.
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Research Products
(16 results)