2015 Fiscal Year Annual Research Report
定量的がん研究のためのマルチパラメータ電子スピン共鳴イメージング法に関する研究
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26249057
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平田 拓 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60250958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 博宣 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (10570228)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酸素分圧 / pH / 可視化 / 腫瘍 / 電子常磁性共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、定量的酸素分圧イメージングの実現に必要な酸素感受性プローブの特性の解明と混合された同位体酸素感受性ニトロキシルラジカル(dicarboxy-PROXYL)のスペクトル分離コードの開発に取り組んだ。山登り法と呼ばれる最適化手法を用いてスペクトルフィッティングを行うプログラムを開発した。750 MHz 電子スピン共鳴イメージング装置により、ニトロキシルラジカルの濃度、酸素分圧と電子スピンの緩和時間の関係を明らかにした。スピン・スピン緩和時間T2*は80から160 ns程度であった。また、濃度依存性と酸素分圧依存性を測定した。14Nおよび15Nで標識されたdicarboxy-PROXYLについて、マウス後肢に作成した腫瘍での薬物動態を明らかにした。尾静脈から投与されたdicarboxy-PROXYLのin vivo半減期は25分、尾静脈投与後、信号強度が最大値の90%以上を保つ時間は10分であることを明らかにした。また、dicarboxy-PROXYLの細胞毒性を明らかにした。使用したSquamous Cell Carcinoma(SCC VII)細胞では、10 mmol/L以下のニトロキシルラジカル濃度において細胞毒性は見られなかった。 pHイメージングについては、pH感受性スピンプローブを溶解した複数の水溶液サンプルの可視化実験とpH推定プログラムの開発を行った。pH推定プログラムでは、山登り方を用いて一次元のpH分布を推定した。磁場勾配下で得られた各プロジェクション(スペクトル)について、一次元pH分布を推定し、得られた結果から最尤推定法を用いて二次元画像を再構成した。pH感受性が最も大きくなるpKa付近のpHでは、精度良くpHを求めることができたが(pHの誤差 < 0.1)、pHの値がpKaから離れて行くと精度が低下する現象が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サブプロジェクトジェクト1で計画した、酸素分圧及びpHの定量的可視化は平成27年度末までに一部達成された。酸素分圧の可視化プログラム及びpHの可視化プログラムを開発した。酸素分圧の可視化は、精度を議論する段階に到達していない。電子スピンの緩和時間を可視化するプログラムは開発済みであり、二種類の同位体スピンプローブのスペクトルを分離するプログラムも開発している。低信号対雑音比のデータから、精度良く同位体スピンプローブの電子スピン共鳴スペクトルを分離する点に課題があり、酸素分圧の定量性を改善する必要がある。 pHの可視化については、pH電極による測定値と比較して、pHが6.3から7.0の範囲で0.13以下の誤差で計測できている。誤差0.1以下でpHを可視化することを目標としており、今後、計算法の改良が必要である。 サブプロジェクト2で計画している腫瘍成長のダイナミクスの可視化では、生体内での酸素感受性スピンプローブの薬物動態を明らかにし、生体内での寿命を求めた。引続き、腫瘍モデル実験が安定的に行えるように、必要な装置の改良や実験データの蓄積を進める。全体として複数の技術的課題に取り組んでいるが、当初計画よりも遅れており、平成28年度には遅れている計画を前進させるために一層努力する。
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Strategy for Future Research Activity |
酸素分圧の可視化については、低雑音時に精度良く二つの同位体の電子スピン共鳴スペクトルを分離することに注力し、酸素分圧の定量的イメージング法を十分に動物実験へ適用できるようにする。pHの定量的イメージングについては、濃度が分布しているサンプルに関して対応できるように計算方法を改良し、pHの定量性を高める。動物実験を安定に実現するため、MRI測定に適したマウスベッドの開発や実験装置の改良を進める。 遅れている計測手法の改善を進め、サブプロジェクト2で計画している腫瘍成長に伴うダイナミクスの可視化に本格的に取り組む。平成28年度末までに、腫瘍成長における酸素分圧の変化を明らかにする予定である。酸素分圧、pHとも定量性の評価を行い、信頼性のある定量的メージングを実現する。動物実験については、分担研究者の協力を得て腫瘍モデルマウスの製作を行う。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] 酸素感受性同位体ニトロキシルラジカルの特性評価実験2016
Author(s)
久保田晴江, 安井博宣, 松元慎吾, 三宅祐輔, 稲波修, I. A. Kirilyuk, V. V. Khramtsov, 平田拓
Organizer
第54回電子スピンサイエンス学会年会
Place of Presentation
朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター)
Year and Date
2016-11-02 – 2016-11-04