2016 Fiscal Year Annual Research Report
定量的がん研究のためのマルチパラメータ電子スピン共鳴イメージング法に関する研究
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26249057
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平田 拓 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60250958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 博宣 北海道大学, アイソトープ総合センター, 准教授 (10570228)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酸素 / pH / 電子スピン共鳴 / イメージング / 腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素感受性スピンプローブが有する不対電子の緩和時間T2*から、電子スピン共鳴吸収スペクトルの線幅を求めた。吸収スペクトル線幅のプローブ濃度依存性と酸素分圧依存性を明らかにし、濃度と酸素分圧の一次関数として、吸収スペクトル線幅を表す基礎データを取得した。今後、酸素分圧およびスピンプローブ濃度の定量的評価の際に、得られた一次関数の係数を使用する。 後肢に腫瘍を作製したマウスに、窒素14と窒素15で標識した同位体酸素感受性ニトロキシルラジカルを投与し、窒素14で標識されたプローブと、窒素15で標識されたプローブを独立にSPI法により画像再構成し、緩和時間T2*と吸収スペクトル線幅を可視化した。それらのデータと、先に求めた濃度異依存性および酸素分圧依存性の係数から、酸素分圧およびプローブ濃度を求める実験を実施した。 pHを定量的に評価する電子スピン共鳴イメージングでは、スパース性を用いる推定手法とスペクトル空間法を用いる二つの手法を試みた。スペクトル空間法によるpH画像再構成は、空間解像度は低いが、超微細構造定数からpHを可視化できる見込みがあることが分かった。従来用いられて来た、磁場勾配に対応して磁場掃引幅を変化させる方法でスペクトルを取得するアプローチではなく、磁場掃引幅を一定としてスペクトルを取得するアプローチを採用できることが示された。 MRIとのマルチモーダルイメージングを実施するために、プロトン核磁気共鳴用のRFコイル(64 MHz)と電子スピン共鳴用のRFコイル(750 MHz)を製作した。 酸素分圧のイメージングについては、腫瘍モデルマウスによる実験まで到達した。しかし、安定に酸素分圧を可視化するためには、より実験条件および測定条件を詰める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
腫瘍モデルマウスによる酸素分圧イメージング実験を行ったが、現在までイメージングが成功する割合は高くない。腫瘍成長による酸素分圧の時間時変化を追うダイナミクスの可視化は、計画に比べて少し遅れている状況である。腫瘍モデルマウスのイメージングにおいて、画像再構成が上手く行えない場合があり、その原因を解明している所である。これまでに、スペクトルのスプライン補完の部分でエラーが発生していることを特定した。 pHのイメージングについては、当初より取り組んでいたスパースモデリングを用いる手法では、予定していた計算結果が得られず、想定よりもスパースな解が示され、pHの定量的イメージングへの貢献は果たせなかった。結果的には、スペクトル空間イメージング法を採用することにより、pHの情報を含む超微細構造定数の可視化を実現する目処を付けた。 MRIとのマルチモーダルイメージングにおいても、RFコイルの製作は行ったが、マウスでのテストは今後の課題である。総合的には、当初計画より少し遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
酸素分圧イメージングについては、現在進めている腫瘍モデルマウスの実験を継続し、腫瘍成長および放射線照射による酸素分圧のダイナミクスを明らかにする。課題としては、動物から得られたデータから安定に画像再構成を成功させることである。電子スピン共鳴スペクトルを処理するプログラムの更なる改良を行うことにより、安定に酸素分圧のイメージングを実現する。 pHイメージングについては、空間解像度を改善するよう計測パラメータの最適化を行う。また、腫瘍モデルマウスのpHイメージングも実施する。空間解像度の改善には、印加する磁場勾配を増大させることが考えられる。また、画像再構成の際に、適切なスペクトルのモデルを組み入れることにより、スペクトルの分解能も改善できると考えている。 MRIとのマルチモーダルイメージングについては、位置合わせのための調整を行う治具を製作すれば、MRIと電子スピン共鳴イメージング装置を用いて実施が可能と考えている。
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Research Products
(8 results)