2014 Fiscal Year Annual Research Report
制御技術が拓く新型電動モビリティの未来社会:EVから電気飛行機へ
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26249061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤本 博志 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (20313033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西沢 啓 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究員 (00358665)
堀 洋一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50165578)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電気自動車 / 電気飛行機 / モーションコントロール / ワイヤレス給電 / インホイールモータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新しい電動モビリティとその制御技術により未来社会の交通の基盤となる革新的技術開発を進めることを目的としている。まず,研究代表者がこれまでに数多くの論文を発表している,モータの高制御性を利用した電気自動車(EV)の運動制御技術をより発展させる。さらにこれらの技術を元に,電気飛行機(EA)の実現に向けた基盤技術を開発している。その駆動輪にモータを搭載し,離着陸距離を最小化させ,ひいては陸空両用の新型電動モビリティ(電動skycar)の実現に向けた基礎研究を進めている。 また未来社会において高速道路や滑走路にワイヤレス給電アンテナが埋設されることを想定し,EVやEAの駆動輪に直接給電をすることを可能とするワイヤレスインホイールモータ(WIWM)の研究開発を行っている。 より具体的に初年度となる2014年度は,インホイールモータを有するEVの新しい自動運転技術とEAの制御技術の開発を開始した。また,本年度は制作する小型EAの電動モータ,及びそのコントローラ,インバータを準備した。また,電動モータの制御性を活かした電気飛行機のプロペラ推力制御の実証を行った。さらにEV及びEAの航続距離延長システム(RECS)の理論・シミュレーション及び簡易実験を行った。 さらに本年度はWINMの1次試作機を設計・製作を行った。路面に埋設されたアンテナからの給電は来年度以降に研究する予定であり,本年度は車体に搭載されたバッテリから,WINMへ給電する基盤技術を構築した。具体的には,WINMを実現するためのワイヤレス給電用コイルの設計・試作を行い,実際にテストベンチ試験においてその評価を行った。すなわち,ワイヤレスインホイールモータの開発に世界で初めて成功した。また,サスペンションの動きにより給電側と受電側の相対位置関係が変化し,かつモータ出力が変動する条件において,受電側電圧を一定に保つための制御技術を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
近未来において,乗員5名以下程度の超小型EAでも,電池のみを電力源として成立可能であるため,維持・運用が容易になることから,エアタクシーや陸空両用自家用機のように,航空輸送の大衆化をもたらす可能性がある。特に維持・運用の点においては,電動モータを用いることで内燃機関の様に短期定期的なオーバーホールの必要がなくなり,大幅に小型飛行機の利便性が上がることが期待できる。ところが,このような小型EAには,1)小型機特有の不安定性と,2)航続距離の短さ,という本質的な問題が内在している。本年度得られた成果では,電気モータの高い応答性をいかして,制御技術によりこれらの問題点を克服することを可能とした。 飛行機の運動は主には姿勢を変更する3舵面によって制御される。しかしながら,十分な安定性や動作性を実現するためには,姿勢だけでなく3軸の速度の制御が欠かせない。従来の小型飛行機ではプロペラの推力を積極的に変更することは行われていない。しかしながら本研究では,応答性に優れた電動モータの特長を活かす事により,高速で正確なプロペラ推力制御を行うことを可能とした。プロペラの推力を積極的に制御できるようになれば,追い風や横風に対する安全性を増すことができる。そこで推力を直接高速に制御する手法の研究開発に成功した。これにより電気飛行機の安全性が飛躍的に向上したと言え,その実現性にむけて大きく貢献することができた。 さらにWINMは計画をしていた1次試作機の設計製作のみにとどまらず,実際に定格出力3.3kWでの動作試験をテストベンチにて,世界で初めて成功し,アンテナ間効率96%,総合効率89%という良好な成果を挙げた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目になる2015年度は,大きく分けて3つのテーマに取り組む。まず第一に電気自動車ならではの自動運転技術をより発展させるため,GPSやカメラ・地図情報から,他車の交通状況や道路勾配が把握できたときに,制約時間内に最少エネルギーで移動するための,各輪駆動力及び車体速度関数を最適化する航続距離延長制御システムを開発し,外部試験場及び台上試験装置にて実験検証を行う。 第二に電気飛行機の安全性を向上させる制御技術をさらに発展させる。電気モータで駆動される電気飛行機には,(1)トルク応答が内燃機関に比べて2桁速く,(2)複数プロペラへの分散配置が可能であり,(3)電流とプロペラ回転数からプロペラ反トルクが正確に検出でき,(4)回生制動や逆回転により負の推力生成が可能であるという多くのメリットがある。本研究では,これらの特徴をいかし,制御技術により「墜ちない飛行機」「揺れない飛行機」の実現を目指している。今後は進行方向の推力のみならず垂直方向の揚力直接制御に挑戦し,風洞試験によりその有効性を示す。また,本研究で開発している電気飛行機FPEA1の設計製作をさらに進め,モータと垂直尾翼の操舵により姿勢を安定化させる制御系を実証する。 第三にワイヤレスインホイールモータの大容量化の研究を行い,地上からの直接給電に向けた基礎研究に着手する。2014年度に開発した3.3kWの一次試作機を電気自動車に搭載して,車載バッテリからの給電による走行試験評価を行うと同時に,WINMをより現実的なものにするために,10kW以上の出力を目指した二次試作機の基礎研究および設計試作を開始する。さらに車載バッテリと道路に埋められた給電アンテナの両方からインホイールモータに直接給電することを可能にするための回路・変換器・制御技術を確立する。
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Research Products
(32 results)