2014 Fiscal Year Annual Research Report
住環境が睡眠・血圧・活動量に与える影響に関する大規模実測調査
Project/Area Number |
26249083
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊香賀 俊治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30302631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 旦二 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (00190190)
白石 靖幸 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (50302633)
堀 進悟 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80129650)
鈴木 昌 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70265916)
安藤 真太朗 北九州市立大学, 国際環境工学部, 講師 (60610607)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 建築環境工学 / 健康 / コベネフィット / 居住環境 / 追跡調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、居住環境(住宅や地域)の改善によるCo-Benefit(健康維持増進や省CO2効果)に着目した実フィールドでの大規模実測調査を進めている。下記に、平成26年度の研究実施概要を記す。
1)断面調査に基づく居住環境の健康影響の把握 居住環境改善が各疾病の有病割合の低下に繋がることを裏付けるため、健康状態の客観データ(血圧、活動量,睡眠)の収集を継続的に実施した。そして、それらの客観データに住宅仕様(住戸形態、断熱性能等)やライフスタイル(冷暖房使用時間等)を照合することで、健康決定要因とその影響度の導出を行った。平成26年度においては、特に室温と血圧の関係性から居住環境改善による循環器疾患起因の死亡者数の減少効果を検証した。また、数値流体解析に基づき、住宅仕様とライフスタイルによる室内温熱環境形成についても検証を行い、健康的、且つエネルギー消費量の低減を兼ね備える住環境の提案を進めた。 2)低体温症・熱中症リスクモデルの構築 生命倫理の観点から被験者実験の実施が困難であった、高齢者の寒冷環境における低体温症リスク、及び入浴時の熱中症リスクの検討を行うため、数値解析に基づき人体温熱生理モデルの改良を行った。そして、開発した人体温熱生理モデルを用いて、室温とライフスタイル(着衣量、入浴時間等)、体温の関係を明示した。さらに、症例データと体温の実測値から低体温症リスク及び熱中症リスクを導出することで、低体温症・熱中症リスクモデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では超高齢社会に適応した新たな居住環境の創出へ向けて、『①大規模なフィールド調査と追跡調査による居住環境と健康の客観データの獲得』、『②居住環境のもたらすCo-Benefit(健康維持増進や省CO2効果)の経済性評価』の2つのアプローチから達成を目指している。平成26年度における、各アプローチの達成度は以下の通りである。
・①大規模なフィールド調査と追跡調査による居住環境と健康の客観データの獲得: 当項目の達成に向けて、実フィールドにおける断面調査研究により、居住環境における健康決定要因の推論とその健康影響度の定量化のためのデータを収集した。そして、得られたデータと数値解析を連成することで、住宅仕様やライフスタイルによる血圧・活動量・睡眠への影響度、室温やライフスタイルによる夏季の熱中症リスクや冬季の低体温症リスクを定量的に示した。今後も検証を続ける価値はあるものの、当初の計画通りの成果を得ている。 ・②居住環境のもたらすCo-Benefit(健康維持増進や省CO2効果)の経済性評価: 当項目については、室温と血圧の関係性から居住環境改善による循環器疾患予防効果を検証した。これらの結果を医療費・介護費に貨幣価値換算し、省CO2効果を加味することで居住環境改善による経済性評価が行えるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、現在までに『①大規模なフィールド調査と追跡調査による居住環境と健康の客観データの獲得』において、追跡調査の足掛かりとなる断面調査を実施している。『②居住環境のもたらすCo-Benefit(健康維持増進や省CO2効果)の経済性評価』の達成に向けても、次年度以降、今年度の調査対象者への追跡調査を行い、居住環境が健康に影響するという因果関係を確固たるものとする。今後の推進方策としては下記等を検討しており、これらの推進によって居住環境の改善によるCo-Benefitの提示を果たす。
1)多地域・他期間データの収集: 提示するCo-Benefitが日本全国で適用可能となるためにも引き続き調査地域や対象期間を拡大し、有用なサンプルデータを逐次収集・確保していく。 2)追跡調査の実施: 今年度の大規模実測調査対象者を中心に、次年度以降も居住環境と健康の客観データを獲得する。疫学調査法であるコホート調査により、居住環境が及ぼす健康影響の因果構造を解明する。 3)住環境と居住者の血圧・活動量・睡眠に関する検証: 収集した血圧・活動量・睡眠データに基づいて、循環器疾患を始めとする疾病の予防効果を探り、医療費・介護費に貨幣価値換算することで経済性評価を行う。
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